Dawn of the Felines
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山田家に居候し始めてから3日、美央は財布に残された残金に頭を抱えていた。
『嘘…!?これだけ…』
事の発端は居候生活が3日以上続くとなれば日用品も必要になるわけで、それらを買い足そうと思い残金を確認したところ現在に至る。
思えば母の反対を押し切って家を出た挙句、一郎に接触すれば兄ともすぐに会えると思っていた美央にとって、所持金のことなど全く頭に無かった。
『(どうしよ…こんなこと、さすがに一郎さんには言えないし…)』
美央も萬屋の仕事や山田家の家事を手伝っているとはいえ、あくまでそれは兄の捜索と居候の代償である。
そのため一郎に物をねだることに抵抗があった。
かと言って今更母を頼ったところで中王区に連れ戻されるのは明白で、突きつけられる現実に美央は頭を抱える。
「美央さん?」
不意に呼び掛けられた声に上を見上げると、制服姿のままの三郎が怪訝そうに美央を見ていた。
「どうしたんですか?それ」
『えっ…あ、あぁ、これ?ちょっとね…』
三郎が無造作に散らばった美央のなけなしの所持金を指差すと、慌てて財布にそれらをしまう。
「もしかして、それだけで中王区からここまで来たんですか?」
『う、うん…』
三郎から呆れたようなため息が聞こえ、美央にとっても耳が痛い。
無鉄砲なことは分かっている。
それでも兄に会いたかったのだから仕方ない。
「それだけじゃ日用品も買えなくて困ってる…ってとこですかね。」
『え、なんで…』
分かったの?と美央が問う前に三郎が口を開く。
「美央さんがウチに来てからもう3日経ちますよね?
そろそろ必要なものが増えてくるはずですが、こんな男所帯じゃ女性の日用品なんてあるはずがない。
だから残金を確認した結果、雀の涙程度しか残ってなくて現在に至る…ですよね?」
『は、はい…そうです。』
一郎や二郎と同じ、左右で異なる色の双眸に見透かされ、三郎が年下であることも忘れて敬語になる。
「美央さん、僕とゲームをしませんか?」
『え、ゲーム?』
「美央さんが勝てば簡単にお金を稼ぐ方法を教えます。」
『本当!?あ、でも負けたら…』
思いもよらない三郎の誘いに呆気にとられるが、金欠の美央にとっては甘い誘いでしかない。
三郎からこの条件を聞くまでは
「中王区に帰って下さい。」
『え…?』
美央は耳を疑った。
中王区に帰れ。
間違いなく三郎はそう言ったから。
『な、なんで…』
「安心して下さい。お兄さんの捜索は続けますから、中王区で待っていて下さい。」
『ちょっと待って!私、ここに居ていいって一郎さんが…』
「僕は反対してましたよね?
それに、こんな男所帯に女の子が1人で居候なんて無防備すぎると思いませんか?」
一見正論に聞こえる三郎の言葉だが、美央はその真意を分かっていた。
これは相手を思いやるふりをして、なおかつ自分を正当化させる言い回しだ、と。
ならば敢えて受けてやろうと美央が微笑む。
『いいよ、どんなゲーム?』
「ボードゲームで分かるものあります?それで決めましょう。」
『うーん…私リバーシくらいしか知らないよ?』
「ではリバーシにしますか。」
そう言って三郎がボードを用意すると美央が白の駒を選び、必然的に三郎が黒の駒を選ぶと目には見えない冷戦が始まった。
「そんな、バカな…」
白い駒で埋め尽くされたボードに愕然とする三郎。
美央はそれを嘲るでもなくただ淡々と口を開いた。
『…私が一郎さんに近づくのが目的だと思ってる?』
「え…」
『この3日で分かったの、三郎君がムキになる理由は大体一郎さんが絡むこと。
だから一郎さんと居る時間が長い私が気に入らないから追い出そうとした。違う?』
「…。」
「私は本当にお兄ちゃんを探すためにここに来たの、信じて。
嘘だと思うなら、そのマイクで私にリリックを聴かせて真実を話させればいい。」
美央が指差すのはヒプノシスマイク。
確かにこのマイクを通したリリックを聞けば嘘はつけない。
おまけに精神への干渉は強く、常人に耐えられるものではない。
そこまで言い切るからには美央が潔白である証拠だろう。
『どうしたの?私を疑ってるんじゃなかったの?』
「…です」
え?と聞き返す美央に三郎が深々と頭を下げる。
「美央さんの言う通りです。
一兄と居る時間が長い美央さんが羨ましくて…それで僕…」
『だと思ってた。私これでも女子校通ってたから何となく分かるんだよね、そういう目に見えないギスギスした空気。』
「ごめんなさい…」
美央に敗北しすっかり意気消沈した三郎がしおらしく頭を下げると、優しく微笑む。
『いーよ、三郎君はお兄さんを取られて寂しかっただけでしょ。
私にそんな気はないから約束通り、私はここにいていいよね?』
「はい…あの…、美央さん!」
『?』
不意に三郎から呼び止められ、まだ何かあるのかと首を傾げる。
「また、リバーシしてくれますか…?」
『え?』
「今日、美央さんとリバーシしててすごく楽しかったからそれで…こんなこと虫がいいのは分かってるんですけど…」
ついさっきまで斜に構えて嫌味ったらしく中王区に帰れと言っていたのに、今ではばつが悪そうに申し出る三郎。
美央はそんな年相応の少年らしさを見せる三郎に苦笑する。
『私で良ければ。』
「あ、ありがとうございます!」
その晩のこと
「美央ちゃん!次俺ともリバーシしない…?」
「僕ですら全敗なのに二郎が美央さんに勝てる訳ないだろ。」
「え!?美央ってそんなリバーシ強いのか?」
『まあ…お兄ちゃんとよく遊んでたので。』
『嘘…!?これだけ…』
事の発端は居候生活が3日以上続くとなれば日用品も必要になるわけで、それらを買い足そうと思い残金を確認したところ現在に至る。
思えば母の反対を押し切って家を出た挙句、一郎に接触すれば兄ともすぐに会えると思っていた美央にとって、所持金のことなど全く頭に無かった。
『(どうしよ…こんなこと、さすがに一郎さんには言えないし…)』
美央も萬屋の仕事や山田家の家事を手伝っているとはいえ、あくまでそれは兄の捜索と居候の代償である。
そのため一郎に物をねだることに抵抗があった。
かと言って今更母を頼ったところで中王区に連れ戻されるのは明白で、突きつけられる現実に美央は頭を抱える。
「美央さん?」
不意に呼び掛けられた声に上を見上げると、制服姿のままの三郎が怪訝そうに美央を見ていた。
「どうしたんですか?それ」
『えっ…あ、あぁ、これ?ちょっとね…』
三郎が無造作に散らばった美央のなけなしの所持金を指差すと、慌てて財布にそれらをしまう。
「もしかして、それだけで中王区からここまで来たんですか?」
『う、うん…』
三郎から呆れたようなため息が聞こえ、美央にとっても耳が痛い。
無鉄砲なことは分かっている。
それでも兄に会いたかったのだから仕方ない。
「それだけじゃ日用品も買えなくて困ってる…ってとこですかね。」
『え、なんで…』
分かったの?と美央が問う前に三郎が口を開く。
「美央さんがウチに来てからもう3日経ちますよね?
そろそろ必要なものが増えてくるはずですが、こんな男所帯じゃ女性の日用品なんてあるはずがない。
だから残金を確認した結果、雀の涙程度しか残ってなくて現在に至る…ですよね?」
『は、はい…そうです。』
一郎や二郎と同じ、左右で異なる色の双眸に見透かされ、三郎が年下であることも忘れて敬語になる。
「美央さん、僕とゲームをしませんか?」
『え、ゲーム?』
「美央さんが勝てば簡単にお金を稼ぐ方法を教えます。」
『本当!?あ、でも負けたら…』
思いもよらない三郎の誘いに呆気にとられるが、金欠の美央にとっては甘い誘いでしかない。
三郎からこの条件を聞くまでは
「中王区に帰って下さい。」
『え…?』
美央は耳を疑った。
中王区に帰れ。
間違いなく三郎はそう言ったから。
『な、なんで…』
「安心して下さい。お兄さんの捜索は続けますから、中王区で待っていて下さい。」
『ちょっと待って!私、ここに居ていいって一郎さんが…』
「僕は反対してましたよね?
それに、こんな男所帯に女の子が1人で居候なんて無防備すぎると思いませんか?」
一見正論に聞こえる三郎の言葉だが、美央はその真意を分かっていた。
これは相手を思いやるふりをして、なおかつ自分を正当化させる言い回しだ、と。
ならば敢えて受けてやろうと美央が微笑む。
『いいよ、どんなゲーム?』
「ボードゲームで分かるものあります?それで決めましょう。」
『うーん…私リバーシくらいしか知らないよ?』
「ではリバーシにしますか。」
そう言って三郎がボードを用意すると美央が白の駒を選び、必然的に三郎が黒の駒を選ぶと目には見えない冷戦が始まった。
「そんな、バカな…」
白い駒で埋め尽くされたボードに愕然とする三郎。
美央はそれを嘲るでもなくただ淡々と口を開いた。
『…私が一郎さんに近づくのが目的だと思ってる?』
「え…」
『この3日で分かったの、三郎君がムキになる理由は大体一郎さんが絡むこと。
だから一郎さんと居る時間が長い私が気に入らないから追い出そうとした。違う?』
「…。」
「私は本当にお兄ちゃんを探すためにここに来たの、信じて。
嘘だと思うなら、そのマイクで私にリリックを聴かせて真実を話させればいい。」
美央が指差すのはヒプノシスマイク。
確かにこのマイクを通したリリックを聞けば嘘はつけない。
おまけに精神への干渉は強く、常人に耐えられるものではない。
そこまで言い切るからには美央が潔白である証拠だろう。
『どうしたの?私を疑ってるんじゃなかったの?』
「…です」
え?と聞き返す美央に三郎が深々と頭を下げる。
「美央さんの言う通りです。
一兄と居る時間が長い美央さんが羨ましくて…それで僕…」
『だと思ってた。私これでも女子校通ってたから何となく分かるんだよね、そういう目に見えないギスギスした空気。』
「ごめんなさい…」
美央に敗北しすっかり意気消沈した三郎がしおらしく頭を下げると、優しく微笑む。
『いーよ、三郎君はお兄さんを取られて寂しかっただけでしょ。
私にそんな気はないから約束通り、私はここにいていいよね?』
「はい…あの…、美央さん!」
『?』
不意に三郎から呼び止められ、まだ何かあるのかと首を傾げる。
「また、リバーシしてくれますか…?」
『え?』
「今日、美央さんとリバーシしててすごく楽しかったからそれで…こんなこと虫がいいのは分かってるんですけど…」
ついさっきまで斜に構えて嫌味ったらしく中王区に帰れと言っていたのに、今ではばつが悪そうに申し出る三郎。
美央はそんな年相応の少年らしさを見せる三郎に苦笑する。
『私で良ければ。』
「あ、ありがとうございます!」
その晩のこと
「美央ちゃん!次俺ともリバーシしない…?」
「僕ですら全敗なのに二郎が美央さんに勝てる訳ないだろ。」
「え!?美央ってそんなリバーシ強いのか?」
『まあ…お兄ちゃんとよく遊んでたので。』