第2章 ~砂上の平穏~
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10月25日 PM10:57 横須賀救急医療センター…
ピッ…ピッ…ピッ…
「…」
宗谷『…』
さゆにゃんと絢音んの3人で近くのホテルに泊まることにした私は、宗谷くんが眠ってる病室に1人残っていた。
宗谷『…』
ただ眠っているように穏やかな表情。きっと私が心配して病院に泊まり込んでることなんて想像もしてない。起きたら『なんだ。帰ってなかったのか』なんて言うんだろうなぁ…
「…」
…思えば彼の寝顔を久しぶりに見た気がする。最近はお互い忙しくて夜も寝る時間はバラバラだった。
ピッ…ピッ…ピッ…
静かな病室の中に、ベッドサイドモニターの音だけが聞こえる。
「…ふふ…////」
普段は睨むような目つきで周りの人を怖がらせるくせに、寝ている時は子供みたいに可愛い彼の顔……愛しい彼の頬をそっと撫でる。
「…」
…そっか……私、彼の寝顔もロクに見れてなかったんだ…
『…疲れてるようだな。仕事が充実してるのは良いことだが、自分の身体くらい大切にしろ。身体が資本の仕事だろ?』
『昨日そこでうたた寝してる時、凄く楽しそうに微笑んでたぞ? なんぞ良いことでもあったか?w』
『だから言ったろう…体調管理を怠るなと。ホットミルクとおかゆを作ってある。欲しくなったらいつでも言え』
…宗谷くんは普段から私のことをちゃんと見ててくれてた。何も言わず、程よい距離感で……なのに私は、自分の事しか見ていなかった。
宗谷『…』
「…」
……自分から告白して一緒になったくせに、私は“私にとって都合の良い距離感”を作ってた。彼が私を変わらず愛してくれるのを良いことに…
『そんな下らんことを考えてたのか。俺は好きで怜奈を支えてるだけだ。怜奈が笑っててくれればそれだけで満足だ。それ以上なんぞ求めてない』
な〜んて、当たり前のように言う彼の顔が浮かぶ。
「…」
…時々解らなくなる時がある。
“どうして宗谷くんは私のことをそこまで大切に愛してくれるの?”
別に自慢出来るほど美人ってワケじゃない。
性格が特別良いわけでもない。
可愛げがあるとも思えない。
世間一般で言う“出来た彼女”とはお世辞にも言えないだろう。
そんな私に、どうして彼はここまで尽くしてくれるのか…
「……!」
不意に、高校生時代の記憶がフラッシュバックする。
これはまだ私と宗谷くんが高校生の頃の話。
私達は目標としていた大学に合格する為、受験に向けた最後の追い込みで予備校に通っていた。
そして予備校で行われた全国模試の返却日。それまで努力の成果が出る重要な日…
「…」
模試が返ってきた夕方、私は教室の隅で一人、絶望に打ちひしがれていた…
「(…終わった…)」
全国模試の結果は、私の予想を遥かに下回るものだった。
「…」
悔しくて苦しくて、立ち上がることもできない…
親友たちと会う時間も削って、昼も夜も勉強に打ち込んだ。ひたすら予備校に通い詰めた努力が、全て無意味だったんだ…そう思った途端、とてつもない失望感に苛まれた。
「(…もう泣きたい…)」
淡々と教室を出ていくライバル達に置き去りにされ、私はただ絶望と孤独の海に沈んでいく…
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