縁結びの神様、恋をする
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「昨日ようやくね、きくとしがくっ付きました」
「あ、そう」
スマホをいじってた手を止めてどうでも良さそうな目を向けてくるハスキーボイスの可愛い女の子。騒がしい楽屋の角にあるソファは人気だが、彼女が独り占めしている。隣に無理やり座り、彼女の目を見て口を開く。
「……私を褒めてください」
「率直だな」
めんどくさそうに私の方に体を向けた京子。なんだかんだで話を聞いてくれる。実に優しい。
「だってあの2人デビュー当初から仲良いんだよ、それなのに変に意識して気まずくなってるし、どんだけウブだよ」
好きだけどどうして良いか分からず挙動不審になる史帆と、好きだからこそ関係を壊したく無くて必死に隠そうとする久美。2人とも不器用なんだよ。
「何か、前も似たような事言ってなかった?」
「あやめいでしょ!あそこも大変だった!」
きくとしとは少し違うけど、あの2人の関係も特殊だったからしんどかった。めいめいの事が本当に大好きで大切だからこの先傷付けてしまうのが怖くて踏み出せないあや。恋愛対象として見て欲しくてアピールし続けるめいめい。繊細な2人だから、気持ちを吐き出させるのに本当苦労した。まあ結局はめいめいが、あやの隣でならどんなに傷ついたって良い!って叫びながら抱き締めて何とかくっついたんだよな。あの時のめいめいはかっこよかったね。
「てかさ、日向のカップルって全部名前がくっつけたんじゃない?」
「菜緒と美穂、丹生ちゃんと美玖、愛萌と茉莉、未来虹とぱるとかかな?みーぱんとなっちょは相談はしてきたけど結局勝手にくっついた感あるしなあ」
騒がしい楽屋の中心を見ると、美穂がすーじーを捕まえて2人でふざけてる。菜緒の目が非常に怖いが美穂は後でどう言い訳するつもりなのだろうか。その近くでは美玖がゲームして騒いでる丹生ちゃんを愛おしそうにカメラに収めてる。
「名前、何か、可哀想だね」
「何で!?」
唐突に予想外な事を言い出す京子の顔は至って真面目だ。
「だって他人の恋愛を手助けして、何の感謝もされず、自分は恋人が居ないとか、何か可哀想」
「……もう少しで涙出るよ」
「あ、ごめん」
謝るな、余計虚しくなる。分かってるんだ。やってる事、何回か恋愛を繰り返して最終的に独身で落ち着いたOLだって。これ以上は苦しいからとりあえず話題を変えよう。
「はあ、京子は好きな人いないの?」
「いるよ」
「うぇ!?マジ?知らなかった!」
またもや飛んできた予想外の言葉に驚いた。京子の恋愛とか結構気になる。
「ちなみに誰?」
「……ダンスが上手い」
「ダンスが上手い?めいめいとかみーぱん、あと久美もだけど、まさか、もう、あ、何かごめん」
日向でダンスが上手いメンバーとして名前が上がる人達は既に恋人がいる。これは聞いちゃいけない内容だったか、申し訳ない気持ちで京子が見れない。
「……ちなみにかなり運動神経が良い」
めいめいだ!やっぱりそうかあ〜、確かに京子めいめい大好きだもんなあ〜、やばいめっちゃ申し訳ない。ていうか気まずい。ここから離れたいけど聞いたの私だしなあ〜。
「後、頭良い」
「……ん?」
あれ?めいめいって頭良いか?学力テストでは、京子よりは良かったと思うけど。え?京子って自分より上の人みんな頭良いと思うタイプ?
「それなのにめっちゃ鈍感」
鈍感、めいめいって結構感とか鋭いしなあ。それだと該当しないのか?
「優しいから、困ってる子がいたら必ず声かけるんだよね」
ここにきて優しいってヒントは、難しい。メンバーはみんな優しいからなあ。
「人が良すぎて、他人の恋愛サポートしちゃうのはどうかと思うけど」
「……は?」
「カップル成立する度に苦労しただの、面倒だったの言う割に、その2人の仲良さそうな姿見ると、本当に嬉しそうに微笑む感じとか」
「き、京子、ちょっと待って、それって」
何かに気付いた瞬間、慌てて立ちあがろうとしたが、京子の手に掴まれ、距離はさっきよりも近くなった。整った顔が視界いっぱいに広がる。
「名前が好き」
「あ、えと、京子、それは、その」
「顔も、声も、スタイルも、パフォーマンスの時のキメ顔も、皆んなの事が大好き過ぎるとこも、たまにふざけて怒られてる姿も、ぶりっ子対決の時のあざとい感じも、全部好き。後、」
「待って!京子マジで待って!!」
やばい顔が熱い。何?私どうした?てか先ず京子がどうした?
「な、何?どうしたの京子?何か、変だよ?あ、はは、変なこと聞いちゃったからあれかな?ちょっとふざけて見たとか?イッ!?」
先程よりも強く掴まれた手の痛みに思わず声がこぼれた。
「名前、散々他人の恋愛に首突っ込んでた癖に、自分に向いてる恋心からは逃げようとするわけ?」
「あ、いや」
「ふざけんな」
「ごめんなさい!」
怖いっす。京子さん怖いっす。でも、京子が私の事好きとか信じられない。ずっと私の話聞いててもクールな感じで相槌打ってたし、特にそんな様子は無かったから。
「……ずっと好きだった。名前の事」
「京子」
今まで、自分が誰かに恋愛感情を抱いたりした事は無かった。それに違和感を感じた事も無かった。
「名前は、今までメンバーの恋の手助けしてさ、皆んな結ばれてきた。もう完全に縁結びの神様じゃん」
「そんな、事ない」
「ねえ、縁結びの神様」
「だから、違」
そらしていた目を京子に向けて驚いた。京子と出会ってからもう6年は経つ。ある程度の事は知ってるつもりだ。でも目の前の京子の顔は一度も見た事ない。愛情、嫉妬、苦痛、欲望、色んな感情が溢れ出ていた。
「私の恋も、叶えてよ」
そう言うと、力強く抱きしめて来た京子は私の肩に顔を埋めた。私の中の何かが大きく変わった。
「京子」
「ヤダ、聞きたくない」
私の体をさらに強く抱きしめる京子。嫌だ嫌だと肩に頭を擦り付けてくる。
「京子は可愛いよね」
「何、急に」
「ハスキーな声が好き。あと、クールな雰囲気とか、サッとイケメンな行動取るとことか、でも結構甘えたがりなとこ、それから」
「やめて」
顔を上げて私の口を手で塞ぐ。目は伏せたままだが、顔が赤くなってる。
「何で、いきなりそんな」
「さっき、京子も言って来たじゃん」
「私は、本気で名前が好きだから」
どんどん小さくなっていく声。切ない顔。諦め切った様子の京子は捨てられた犬みたいで可愛い。今そんなこと言ったらぶん殴られそうだ。だから、ちゃんとした気持ちを伝えないといけない。私は彼女が求めてる言葉を伝える為、口を開く。
「私も京子が好き」
京子のただでさえ大きい目がこぼれ落ちてしまいそうなほど見開かれた。
「え、嘘」
「嘘じゃない。京子の良いとこを考えてみたら、全部愛おしくて、好きなとこばかりだった」
私は京子の側に居ることが多かった。相談を受ける事が多い私の相談をよく聞いてくれた。思い出してみれば、その時から京子に対して他のメンバーとは違う信頼感があった。きっとこれが後に恋愛感情になったのだろう。
「じゃあ、もっと教えて、私の好きなとこ」
「ん〜、努力家だけど、ちょっとお馬鹿なとことか、褒められるとわかりやすく照れるとこ、後ゲラだからツボに入るとしばらく笑ってる時の様子も好き」
みるみる顔が赤くなるがそれでももっと褒めろと目が言っている。
「あ、あと写真集で分かったけど京子スタイルめっちゃエロ、オゲっ!?」
「変態」
超強力な張り手を顔面に食らった。顔を赤くしながら睨むのはかなりそそられる。京子の手を退けて顔を近づける。
「ちょ!」
「ねえ、京子、もっとその顔見せて」
どうしよう、止まれない。好きな人を前にするとこんなにグイグイ行ってしまうのだろうか。
「名前って、Sなの?」
「さあ?京子にだけかも」
「ヤバ」
「あ、その顔も良いね」
「……やっぱり名前は縁結びの神様なんかじゃない」
「はは、だからそう言ったじゃん」
「でも、好き」
「うん、私も」
「……好きって、言ってよ」
「愛してる」
「……ねえ」
あ、ちょっと、嬉しそう。
「ふふふ、好きだよ。大好き」
「うん」
こんな可愛い女の子の思いに気付けなかった自分は本当に馬鹿だな。愛しくてたまらない。まだこれからも、色んな顔を見たい。
「これからはずっと隣に居て」
「もちろん」
今日一の笑顔で抱きしめて来た京子。私も精一杯の愛情を込めて抱きしめ返した。
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