ポムフィオーレと私
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リンゴ。
毒林檎。
そんな大層なものではなく、シンプルな赤リンゴを頬張るお話。
「遅くなってごめん!話ってなに??」
ある日の昼下がり、可憐な美少年からの呼び出しに私は少しドキドキしながら、女王の治める寮に足を踏み入れた。私の声に薄紫の髪が揺れる。
「!あなたさん!実は実家から林檎が届いたんです。君のために剥こうと思って…一緒にいかがですか?」
「わぁ!嬉しい。」
私が表情を綻ばすと、彼もにっこりと笑う。
「今日はどんな形にしますか?」
「うーん、じゃあおまかせで。」
「えぇ?それは1番困るなあ……。」
そう言いながら、1秒、2秒、考え込んだ後、リンゴの皮に刃が入った。細い指先が器用に包丁を操り、ただの果物をひとつの芸術品へと彩り始める。私は目線を離せず、静かにその先を見つめた。
「……できた。」
「なに…それ?」
出来たのは、皮が細かく切り刻まれ、リンゴの身の表面には彫刻が施されている。よく見ると描かれているのは……
「顔?」
「はい、あなたさんです!」
「…………」
自慢げにリンゴを突き出す男子学生を私はじっと見つめた。それから、ぷっと吹き出す。
「ふっ…あはは!エペルくんったら、私の顔がそう見えてるの?」
「変…ですか?」
「ううん…ふふっ…すっごくリアルだな〜って。鏡に映った私みたい。もう、こんなに私そっくりだと食べられないよ!」
笑いながら冗談めかして彼を小突くと、エペルくんは急に真面目な顔になった。そしてリンゴを口元に持っていく。
「じゃあ、僕が食べますね。」
「えっ?あっ…」
シャリ
リンゴにカレの歯型がつく。リンゴ特有の咀嚼音が響く。
「うーん、本物の方が美味しいかも。」
「本物って?」
小首を傾げる彼に、私の首も曲がる。
「あなた、本人の方が美味しいってことですよ。」
私の頬に林檎で濡れた唇が甘く触れた。驚いてる暇もなく、その感触は瞬く間に私の肌の上に広がり、リンゴ色に私の頬を染め上げる。
「あっあっ……」
カーッと赤くなってしまった頬を抑えながら、口をパクパクしてると彼が割ったリンゴが舌の上に乗る。
「ほら、食べないと無くなりますよ?」
「……。」
言われるがままに林檎を噛むと、甘い田舎の味が口腔に広がった。恥を忘れるように林檎を貪りながら横目でカレを見る。目と目が会うと微笑まれて、咄嗟に視線を逸らしてしまった。
―――はぁ、顔はこんなに可愛いのに……
いつのまにか王子様みたいになってしまった同級生の姿に、私は頭を抱えた。
Fin.
毒林檎。
そんな大層なものではなく、シンプルな赤リンゴを頬張るお話。
「遅くなってごめん!話ってなに??」
ある日の昼下がり、可憐な美少年からの呼び出しに私は少しドキドキしながら、女王の治める寮に足を踏み入れた。私の声に薄紫の髪が揺れる。
「!あなたさん!実は実家から林檎が届いたんです。君のために剥こうと思って…一緒にいかがですか?」
「わぁ!嬉しい。」
私が表情を綻ばすと、彼もにっこりと笑う。
「今日はどんな形にしますか?」
「うーん、じゃあおまかせで。」
「えぇ?それは1番困るなあ……。」
そう言いながら、1秒、2秒、考え込んだ後、リンゴの皮に刃が入った。細い指先が器用に包丁を操り、ただの果物をひとつの芸術品へと彩り始める。私は目線を離せず、静かにその先を見つめた。
「……できた。」
「なに…それ?」
出来たのは、皮が細かく切り刻まれ、リンゴの身の表面には彫刻が施されている。よく見ると描かれているのは……
「顔?」
「はい、あなたさんです!」
「…………」
自慢げにリンゴを突き出す男子学生を私はじっと見つめた。それから、ぷっと吹き出す。
「ふっ…あはは!エペルくんったら、私の顔がそう見えてるの?」
「変…ですか?」
「ううん…ふふっ…すっごくリアルだな〜って。鏡に映った私みたい。もう、こんなに私そっくりだと食べられないよ!」
笑いながら冗談めかして彼を小突くと、エペルくんは急に真面目な顔になった。そしてリンゴを口元に持っていく。
「じゃあ、僕が食べますね。」
「えっ?あっ…」
シャリ
リンゴにカレの歯型がつく。リンゴ特有の咀嚼音が響く。
「うーん、本物の方が美味しいかも。」
「本物って?」
小首を傾げる彼に、私の首も曲がる。
「あなた、本人の方が美味しいってことですよ。」
私の頬に林檎で濡れた唇が甘く触れた。驚いてる暇もなく、その感触は瞬く間に私の肌の上に広がり、リンゴ色に私の頬を染め上げる。
「あっあっ……」
カーッと赤くなってしまった頬を抑えながら、口をパクパクしてると彼が割ったリンゴが舌の上に乗る。
「ほら、食べないと無くなりますよ?」
「……。」
言われるがままに林檎を噛むと、甘い田舎の味が口腔に広がった。恥を忘れるように林檎を貪りながら横目でカレを見る。目と目が会うと微笑まれて、咄嗟に視線を逸らしてしまった。
―――はぁ、顔はこんなに可愛いのに……
いつのまにか王子様みたいになってしまった同級生の姿に、私は頭を抱えた。
Fin.
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