ドリームナイト〜聖夜のデリヘル編〜
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12月25日 夜
「ちゃんとガキ共は食ってたか?」
「たらふく食べてたよ。サシャとコニーなんかチキン食べながら泣いてさ、ミカサは甘い物が好きなんだね〜。黙々とミルクケーキを食べてた。」
「そうか」
リヴァイは洗い終わった皿を厨房で拭きながら食堂を見渡す。今は一年で一番の派手な夕食が一旦お開きになり、はしゃいだ新兵らは皆自室に戻ったところだ。日も落ちぬ頃から日頃お世話になっている兵士長の誕生日と、聖夜を祝おうなんて誰かが言い出して、どんちゃん騒ぎがさっきまで行われていた。
アルミンやジャンや数名の新兵は片付けると言ってきたがその申し出は断った。今日ぐらいは無礼講、それに大人が残るのでディーブな宴はまだまだ続く。
「も~あなたって人はこんな時まで片付けなんかして!明日の朝みんなでやればいいじゃないか!」
「気になる。こんなにぶちまけやがって…」
床にはついさっき食堂の扉を開けたときに自分の頭上を派手に舞った紙吹雪とクラッカーの帯がまだ散らばっている。リヴァイの根っからの性分がそのままにさせておくはずがない。
「リヴァイって羽目外す時とかあんの?」
「あ?なんだよ急に」
「あなたが羽を伸ばす時はいつなのさ!」
クソメガネが唾をとばしながら手伝うこともせずカウンターからワイン片手にちょっかいをかけてくる。こいつが手伝わないのは今に始まった事ではないし、手を出されると逆に散らかるので長年考えた結果、最良の距離感がこれだ。
「汚っねぇな、唾がかかるだろうが。そんなもん話す義理はねぇ、ちゃんと羽は伸ばしている」
「へぇ〜。一体全体どんな子なのかなぁ~?リヴァイが足しげくかよう娼館の子猫ちゃんは~?ハンジさん気になるなぁ~。」
酒臭いゲス顔を近づけて詮索してくるハンジのワインを取り上げて、代わりに草でも食って黙ってろと残った葉物を口に詰め込んだ。
飲みの場になると必ずこの話になる訳で、人類最強の特権を使ったらよりどりみどりの女を抱き放題じゃないかと皆口を揃えて言う。なんとも下衆な話だ。言っとくがこちらにも好みというものは存在する。
「うるせぇな、ほっとけ」
「あーわかった!今から行くんだ!?そうでしょ?!だから今日のあなたなんか落ち着きないし片付けが心なしか早い!」
「…ち」
「やったー!図星だー!」
バタバタバタッ
ドカンッ
「何?」
「来たか」
「いてて、ハッピーメリークリスマース♡」
突如転がり込んできた赤いコスチュームを着た小柄な娘。彼女の動きに合わせて揺れる艶のあるバターブロンドの髪がさっき空中を派手に舞ったゴールドテープによく似ていた。
娘は勢いが良すぎて止まれなかったらしく、持っていた大きな白い袋と胸のせいで体のバランスが取れなくなり思いっきり前につんのめってどんくさく転んだ。この動きだけで分かる、彼女は壁内人類の何割かに存在する立体機動をどんなに訓練しても飛べない適性なしのろまな人間なのだと。
「あ、あなた大丈夫?」
「はい!素敵なお姉様お気遣いありがとうございます!」
偶然扉近くに居たナナバが駆け寄り膝をついて王子様のように彼女に手を貸すと、その娘は顔を林檎のように真っ赤にさせてナナバの手を両手でぎゅっと握った。
「すごい格好だね…」
「ですよね!自分でもそう思います!でもご安心ください!これは普段着ではなく仕事着なのでけして痴女ではございません!」
「そう、大変だねこんな日まで…全くうちの男共はこんな寒い日にわざわざ呼び出してロクでもない連中だよ。」
ナナバは胸元を強調し足や肩を惜しげもなく露出した彼女の服装から瞬時に職業を察する。きっと彼女は最近王都で流行っているという派遣型の娼婦、「デリバリーヘルス」とやらだ。誰がこんな寒い日に布の小さなサンタのコスプレをさせて兵団に呼んだのか…ナナバが軽蔑したように冷ややかな視線を送ると、娘の胸に視線が釘付けだった男達は自分は呼んでいないとかぶりを振った。
「おぉ!あなたすごいねそのおっぱい!一体全体何入ってんの?!私こう見えて大きいものには目がなくてさ!ちょっ~とだけ触ってもいいかな?」
「ハンジ、失礼でしょ、、」
カウンターにもたれかかっていたハンジは面白いものが転がり込んできたと眼鏡を光らせ両手を卑猥に動かしながら近づいていく。ハンジの好奇心は巨人にというよりかは平均以上の「大きな」ものに対して発動してしまうのかもしれない。
「どうぞどうぞ〜♡この中には壁内人類の夢と希望が詰まってまぁ〜す♡」
「ブハッ!きみノリいいねぇ!誰が彼女の客だ〜?この巨乳好きのエロ兵士め〜!」
「俺だ」
「ぶっ!」
ちょうど皿洗いも終わり、ケトルで湯を沸かしていたリヴァイが平然と厨房から顔をだした。
「あーん!リヴァイ様〜!会いたかったです〜!最近全然ルリのところに来てくださらないんだから~!」
自らをルリと名乗った娘は、リヴァイの姿を見るとぱぁっと花が咲いたように笑顔になり勢いのままリヴァイにぴょんっとしがみついた。
「何言ってやがる。俺が行く度てめぇは見計らったように客を取ってやがる。だから今日ぐらいはと思って呼んだんだ」
「そういうことだったんですね〜!マスターったらリヴァイ様が来たって全然教えてくれないんだから!」
マスターと言うのはルリの店の女店主で中々肝の座った老婆。彼女は客を身分で差別しないし、値引きもしない。だから人類最強という肩書があるリヴァイでもどれだけゴリ押ししてもルリが空いてなければ会えない。ここ最近は何度行っても彼女は接客中で、とうとう痺れを切らして娼婦を指定の場所まで派遣するデリヘルとやらを利用してしまったのだ。
「よく来たな。こんな貧乏兵団まで」
「貧乏兵団なんてそんな!リヴァイ様のお住まいに呼ばれるなんて感激です〜!もしかしたらルリはリヴァイ様に飽きられたかと心配してたんです!」
「俺がお前に飽きる訳ねぇだろ」
リヴァイは何を言っているんだとふっと眉根が下がる。ちょっとおつむの弱くて奇想天外な彼女に飽きる事なんて天地がひっくり返ってもない。そのぐらい彼女はリヴァイにとって面白くずっと見ていても飽きない女なのだ。
ルリも本当にリヴァイに会いたかったようで抱きついたままぎゅうぎゅう胸を押し付けるものだから、リヴァイの顔が谷間にすっぽり挟まってものの見事に後頭部の刈り上げしか見えなくなった。
「ね、ねぇねぇお取り込み中悪いんだけど、まさかこの子がリヴァイが最近お熱の子?…えと、なんて言えばいいの。リヴァイも好みは割と一般的なんだね…いや、別に人の好みに口出すわけじゃないんだけど。」
ハンジは同性でも目を見張るルリの見事な乳房をしげしげと見る。ここまで見事なものだからそりゃあ人類最強も骨抜きにされるわなと納得する反面、あまりにも分かりやす過ぎて正直もう一捻り欲しかったというのが本音だ。
「あ?たまたまだ。たまたま気に入った女にたまたまでけぇ脂肪の塊が二つくっついてただけだ」
「へぇ、玉々ねぇ…。あなたが一体どんな女性に興味を持つのか気になってたけど…やっぱり知らないままがよかったよ。あなたはミステリアスが似合うし、その方が部下達の求心力もあったと思う。もう遅いけどさ。」
「てめぇらのエゴを俺に押し付けるな。そういう事だから俺の部屋には朝まで近づくなよ」
「皆様ご機嫌よ〜!」
リヴァイは器用に温めたケトルと顔の前にカエルのようにしがみつき他の兵士に手を振るルリを抱え自室に消えていく。
「まさかあのリヴァイがおっぱいフェチだったとは…ホテルで会えばよかったのに。」
「潔癖だから無理だったんでしょ。明日から見方変わっちゃうわね〜。」
自分の好みを貫いただけで女性陣から変態の烙印を押されボロカスに言われているとはつゆ知らず、リヴァイはスタスタといつものように幹部棟の自室まで歩いていく。顔の前にくっついたままだったルリを静かに下ろし扉の鍵を開けた。途中何人か兵士とすれ違った気がしたが、自室に器用に湯と女を運ぶ兵士長を見て皆道をあけ何も言わなかった。
リヴァイは自室に入るとまず暖炉に向かった。彼女が来る為先に火を入れておいたのだが、まさかこんな格好で来るとは思わなかったためもう少し部屋が暖まるように乾いた木を多めに焚べた。
「とんでもねぇ格好だな。体冷えてるじゃねぇか」
「えへへ、今王都で流行ってる性夜のサンタコスってご存知ないです?」
褒めて褒めてと三角帽子を揺らしながらクルクルと阿呆面で回るルリに「悪かねぇがそういう格好はベッドの上だけにしろ」と言ったら「紳士なリヴァイ様尊い〜!」と相変わらずルリは阿呆面で身悶えていた。
「とりあえず、紅茶淹いれてやるからまずは体を温めろ」
「え!紅茶?!そんな高価な飲み物よろしいんですか?」
「あたりめぇだ」
「リヴァイ様がルリの為に紅茶をいれてくださる〜!飲むのはじめて~!」と嬉しそうにする彼女を見てリヴァイも悪い気はしない。
ハズレ女を引いたと思いきや、話すうちに今では彼女の芯の強さや純朴さをリヴァイは単純に体を重ねる事以上に気に入ってしまっているのだ。
「ここがリヴァイ様のお部屋〜!素敵〜!きれい〜!なんだかほんのり芳しい豊かな香りまでします〜!」
「たいしたことねぇだろ。それは今茶葉の缶開けたから匂ってんだ。相変わらずお前は…まぁいい」
いつもなら状況判断が甘いだのうんぬんかんぬん一言説教垂れるのだが、自分が生まれた日というのを少なからず意識してしまっているのか特別なプレゼントの様に転がり込んできたルリにこれ以上とやかく言うのを辞めた。
顔には出てないが彼女が自分の所に来たことが素直に嬉しい。客として来る貴族からの貢ぎ物には敵わないだろうが、時間の許す限り彼女をもてなしてやろうとまで思うぐらいに。
リヴァイは棚から出した茶葉で順調に紅茶の準備を進めていたが、ルリはというと初めてリヴァイの部屋に呼ばれ興奮ぎみに部屋の中をちょこまかうろつきまわる。
「わぁ〜難しそうな本ばっかり〜!こっちはお掃除用品ですか~?」
「おい、危ねぇからあんまり動き周るんじゃ…」
「あ!もしやこれが立体機動装置!?すご~い!これで巨人と戦ってるんですね!リヴァイ様かっこいい〜!」
「馬鹿!触るな!」
「ふぎゃっ」
危ないから触るなよと忠告しようとした矢先、案の定ルリは勝手にトリガーを引いてしまい次の瞬間アンカーが見事に天井に突き刺さった。
「ふぇ〜ん、びっくりした〜!」
「大丈夫か?!」
「おっぱいの間を何かがものすごい勢いで通っていきました…」
「だからか言わんこっちゃねぇ。立派な乳があって良かったな、あと少し近くで打ってたらカスカスの脳みそに穴が空いてたぞ」
大きな胸が邪魔をして射出口と程よい距離が保てたらしく、アンカーは間一髪ルリの谷間を貫通しただけで大事には至らなかった。
「どうしよう服が破れちゃった!借り物だから怒られちゃう〜!」
「お前な、、服より自分を心配しろ」
リヴァイは彼女が無駄口を叩けるくらい元気なことを確認し天井に刺さってしまったアンカーを巻き取って回収すると、立体機動をこれ以上触られないように執務机の下に片付けた。そしてそのままルリを膝の上に乗せて対面でソファーに座ると、彼女の顎下に手を添えて怪我をしていないか入念に体をチェックし始めた。
「服は俺が後で縫ってやる。チッ、ここ傷が出来てんじゃねぇか」
「ん、なんかチリってしたから…」
破れた箇所の辺を注意深く見るとオフショルダーで谷間を強調した真っ赤なコスチュームが斜めに切り裂かれ、その上のさらけ出されていた胸元の薄い皮膚から布地の赤とは違う赤が滲んでいた。
「止血しねぇと」
「いた…」
「少し我慢しろ」
リヴァイは素早く小さな傷口に親指の腹を押し当て止血する。この位のかすり傷なら自身も数え切れないくらいしてきているが、指を押し当てた場所は自分の傷とはまるで違い命がその場所で燃えているように熱く感じた。
「あっ、リヴァイ様の指、汚れちゃった…」
「別に汚れてねぇよ」
止血し終わったリヴァイの親指にはルリの乾いた血が少量ついてしまっていた。ルリはそれを見て申し訳無さそうにしたが、リヴァイは我関せず躊躇なくぺろりとその指を舐めた。リヴァイの潔癖症を知る者が今のリヴァイの行動を見たら驚くだろう。じんわりと舌の上に拡がる鉄の味。触覚、味覚、嗅覚、彼女のみなぎる生をより多くの感覚で感じたくて潔癖だったことを忘れて無意識のうちにリヴァイをそうさせた。そして随分と前からこの生命力に満ち溢れたきらきらした存在に触れたいと自分は願っていた事を五感がざわざわと感知しだす。リヴァイから溢れた男特有の欲が一瞬で部屋の中を支配した。
「ん…ふぅ…リヴァイ様ほんとに会いたかったです…」
「俺もだ…」
ルリの顎を捉え唇を重ねる。重ねては離れてを繰り返しながら徐々に深くなり少し半開きだった唇から舌を捩じ込むと、まだかすかに鉄の味がした。それが余計に興奮を駆り立てる。
次第にリヴァイの舌は唇から首筋、鎖骨へ移る…甘ったるい暖炉の色と紅茶の湯気が乳白色の柔らかそうな肌とリヴァイの境目を曖昧にしだした。
ルリもいつもと違うキスの味に興奮しているのか、目に涙を溜めながら甘美に震えている。
「りばい様…おっぱい触ってください…ちゅうっていっぱい吸って…」
「あぁ」
ルリのかわいいおねだりにすぐに背中のリボンを解いてズリっと腰まで彼女の服を下げる。ぷるんと出てきた胸全体を確かめるように揉むと、血の止まった傷には触れぬよう注意しながら喰んだりしゃぶったり、時には唾液を絡めた指で乳首を弾いたり押し潰したり、彼女が好きな方法で戯れる。
「はぁ…それきもちぃです…」
「これ好きだよな」
「はい…でもりばい様にされるのなら何でもすきです…」
「はっ、いつの間にかリップサービスまで上手くなりやがって」
暫く会わない間に男の殺し文句まで覚えてしまったのかとちょっとだけ嫉妬の火がちらついたが、それには気づかぬフリをした。せっかく会えたのにそんな感情で支配されてしまっては時間が惜しい。リヴァイは気持を一旦落ち着かせる為にルリの胸元に顔を寄せた。
「お前の乳に埋もれるのも久しぶりだな」
「そう、ですね…んっ…」
急に刺激が緩慢になり物欲しそうにしているルリに「あったけぇな」とリヴァイはまるで子供のように谷間に顔を埋めるが、それでも控え目な乳輪や乳首に触れる指遣いは欲情した男のままで止まらない。さっきまで散々その気にさせたと思いきや、次は子供のように甘えてきて、そのちぐはぐさが女心と母性をぐちゃぐちゃに掻き混ぜて、締め付けるような切なさをもたらすたちの悪いやり方だとリヴァイ自身そんなに分かっていない。
「あっ!そうだ、リヴァイ様ちょっと待ってくださいまし…」
「十分待っただろ」
ルリが何かを思い出したようで喋りかけたが、リヴァイはそれを遮った。
最近の二人は本当によくすれ違っていた。
リヴァイはいつまた会えるか分からない焦燥感とじれったさを日に日に募らせて、別の男がルリを抱いているのかと思うと気分が落ち込んだ。会えずに帰ってきた日はエルヴィンやら幹部組に不機嫌にあたって、悶々とした気分を晴らすために部屋を徹底的に掃除した。いつの間に彼女にこれほど固執してしまったのだろう?壁外ではなく壁の中で身を滅ぼすような恐ろしさを最近自分でも感じている。
「んっ、でも…」
「後にしろよ」
「やっぱりだめ!少しだけ待ってください!先に渡したい物があるんです!」
「あ゛?」
そんな事を考えていると、ルリが愛おしそうに抱きしめていたリヴァイの頭をべりっと勢いよく胸から引き剥がし、膝から降りた。
もう一度熱く燃え上がるための準備段階だったが、今度はルリの方が一方的に離れてしまい、リヴァイは面白くないとしかめっ面をした。そんなことはつゆ知らずリヴァイを放っておいてルリは折角解いた背中のリボンを軽く結び直すと、ドアの近くに置いた白くて大きな袋をよつん這いになりレースのペチコート丸見えでガサゴソと探し出した。
てっきりただのコスチュームの一部として袋の中身は空だと思っていたが、何か入れてきたらしい。
「ルリ、それは今じゃなきゃ駄目か?」
「はい!ダメなんです!えっと…あれ?ちゃんと忘れずに入れてきたんだけど…」
「…」
彼女の空気の読めなさは前からだが、今のようにかわされて男との駆け引きのような事も出来るようになったのかと思うとなんだか複雑な気分だ。しかも中々お目当ての物が見つからないらしく焦らされるように貴重な時間だけが過ぎていく…思わずルリには聞こえないぐらいの小さな舌打ちがでた。
だがなんだかんだで相手から本気で「待て」と命令されれば待ってしまうのがアッカーマンの悲しい性。ヤル事が無いので悶々とする気持を押し殺し仕方なく彼女のむっちりとした太ももに張り付いた純白のガーターベルトのレースの柄を紅茶を飲みながら眺めて待っていると、「あった!」と声がしてルリが嬉しそうに駆け寄ってきて白い箱をリヴァイの前に差し出した。
「じゃじゃ~ん!リヴァイ様お誕生日おめでとうございまーす!」
「あ?お前、知ってたんだな」
「当然です!リヴァイ様の事なら何だって知ってるんだから!」
えっへんと胸を張り、得意げなルリを眺めながら箱を受け取る。表情には出ていないが、まさかの展開にリヴァイは驚いていた。彼女がただの聖夜ではなく自分が生を受けた日と認識していたことに急に照れ臭さくなる。きっと彼女の事だから何故リヴァイがこの日にわざわざ呼んだのかまでは考えていないと思うが。
「開けていいか?」
「もちろんです!」
冷静を装い、結ばれたサテンのリボンを解いて箱を開ける。中身はかろうじて読める歪なリヴァイの名前を刺繍した真っ白……ではなく、ポツポツと不思議な赤茶色のシミのがある年期のはいったクラバットだった。
「あ、あのその汚れは気にしないでください。そういう模様って事で。。」
「手見せてみろ…ったく、慣れねぇ事しやがるから」
来たときから、彼女の指に不自然に巻かれた絆創膏を不思議に思っていた。「汚くてごめんなさい、、これでも一番上手く出来たやつなんです…」としょげている彼女を見て、彼女がやりたかった事を理解してくしゃくしゃと髪を撫でてやった。
「異性が刺繍をした物を持つと壁外から無事に帰って来るってジンクスをお姉さん達から教えてもらったんです!身につけなくてもいいのでリヴァイ様の元にそれを置いてください!」
頬を蒸気させてまるで愛の告白みたいに話しているルリを見ていると困ったことに捧げた心臓に違う類の火が灯ってしまう。
「そ、それと…」
「?」
「お願いですからずっと私を指名してください!」
そこは「身請けしてください!」ではなく「指名してください!」なのかとちょっと笑ってしまった。リヴァイがソファーに座りながら無言で両手を広げると、ルリはまたぴょんっとカエルのようにリヴァイにしがみついた。
「お前を指名したくてもいつも居ねぇ」
「うわーん!そんなー!私はリヴァイ様だけがいいのにー!」
それを聞いたルリは「ルリの抱かれたい男はオンリーワンでリヴァイ様だけなんだからー!」と噴水のように泣き出してしまった。娼館の店主が言ったとおり彼女は本当に売れっ子になってしまったらしく、いろんな男から引っ張りだこらしい。
「俺だけがいいのか」
「はい!ずっとリヴァイ様だけがいい!このおっぱいはリヴァイ様専用なんだからー!」
「じゃあ俺のとこくるか?」
「え?」
「相変わらずお前は話のテンポがわりいな。お前がよければ身請けしてもいいと言っている」
気づけば勝手に口が喋ってしまっていた。直感で、次店に行っても彼女とはもう永遠に会えないと思ったのだ。
「…え、え?」
「なんだ、えらく勢いが無くなっちまったな。そうしたいと思ってたのは俺だけか」
「えぇー!」
「おい」
一呼吸置いて、ルリはこれでもかと碧眼を見開いてリヴァイの膝に乗ったまま海老反りのように上体だけ床に崩れ落ちていった。
「うそ…」
「嘘じゃねぇよ」
「じゃあ、ほ、ほんと?ほんとにいいんですか?」
「あぁ。俺も今腹を括った」
勢いよくブロンドの海に沈んでしまった彼女の腕を引っ張っぱってもう一度膝の上に座らせると「実は貴族の方から身請けの話が出ててもう今日でリヴァイ様に会えなくなりそうだったんです」といろいろな事情があったらしく堰を切ったように話しだしたが、それを塞ぐようにそのまま唇を重ねた。
「わかってると思うが俺は兵士だ。いつ死ぬかわかんねぇ。それでもいいか」
「いやー!リヴァイ様そんなこと言わないで〜!じゃあ絶対戻ってくるようにもっと刺繍刺さなきゃ!」
「やめとけ、俺よりお前の指が先に逝っちまう」
その時、扉の向こうからパンパンと軽く爆ぜる音が連続して響いた。それと聞き覚えのある奇声が聞こえたと思ったら、バタバタバタと忙しく廊下を走り去っていく複数名の気配。さっきからずっと扉の外に張り付いていたことは知っていたが、一応は祝ってくれたらしい。
「なんでしょう?夜明けの鶏?」
「なわけあるか、放っとけ」
きっと「巨」がつくものが大好きな奇行種の発案でその他諸々が加担した仕業だろう。
「やった〜!リヴァイ様とずっと一緒に居られる〜!」
いつもなら乳に埋もれるのはリヴァイの方だが、今はルリが分厚いリヴァイの胸板に顔を埋めている。
「リヴァイ様だいすき…リヴァイ様の雄っぱい大きくてふかふか…」
「馬鹿野郎」
そう言いながらもリヴァイは満更でもなさそうに自分の胸に舞い降りた彼女の美しい金糸を愛おしそうに指に絡める。いつもは胸を借りる方だが、こんなにも愛らしい彼女なら自分の胸を貸すのも悪くない。そんな温かな気持ちが触れ合う場所から自然と満ちていくのだった。