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月明シーソーゲーム


ーーーそれは私にとって、衝撃的な出会いだった。

何時もと代わり映えのない休日。色々とやる事があったから家を出て地元の繁華街へ足を運んだ晴れやかな4月のある日。
その日は何だか何時も聴くプレイリストの気分じゃなくて。イヤホンを片耳外し、日陰になっている街の端っこで立ち止まり、リストを変えようと音楽プレイヤーを取り出して弄っていたらどこからか聞こえてきた音楽。透明な様でいて奥深くに強い意思がある、けれども気を抜くと何処かへ消えていってしまいそうな、曲に沿う切ない歌声に下を向いていた顔が自然と上がった。辺りを見渡して聞こえる音楽の発信源を探せばゲームセンターに取り付けられている大型モニターで。゛月野プロダクション゛と事務所と曲のタイトルが流れるPVを見て呆然とした。だって、そのPVに出ていたのは。

「……卯月くん?」

満開の桜並木を歩き、歌を歌っているそれに出ていたのは紛れもなく同じクラスの彼で。突然の情報に頭が追い付かない。……え?と思いつつ、同じクラスのアイドルが好きな友人に連絡をすれば『知らなかったの?』何て返事を貰って。ああ、現実なんだ。何て思っていた高2の春。

それから1年の時が経って。


「ーーみっなさーん!お待たせしましたー!!」
「グラビ、プロセラの合同ミニライブ!…せーっの!!」
「「はっじまーるよー!!」」

キャー!!!と、ステージ上できらびやかな衣装を纏った12人を客席からペンライトを振って応援する。
あの1年前の衝撃な出来事から時が経って現在高3の春。卯月くんの曲から始まり、気になって色々と調べてみれば゛月を彩る゛がテーマらしく、1月に1人、担当月があり総勢12人を半分の6人ずつに割ってグループがあるらしいと言う事が分かった。月1人に興味が湧き、自分の誕生日月の担当さんは誰だろうとこれまた調べてみると、卯月くんの所属するグループ゛SIX GRAVITY゛のライバルグループ、゛Procellarum゛に所属する人である事が分かった。調べれば調べるだけ増える情報量。それに胸踊らせてあれよあれと気がつけばこうして月野プロダクションの方々にハマっていて。

「皆さん。今日は短い時間ですが、どうぞ楽しんで行って下さい」

そう一言添えて笑ったのは黒の王様と称されている睦月始さん。

「今宵は楽しい楽しいパーティだね」

そう言ってウインクをするのは白き魔王様と称されている霜月隼さん。
二人の言葉を合図にトップバッターを飾る、元気にピョコピョコ跳ねているステージに映える金髪の師走駆くん。誰もが何も言わずにペンライトを推し色から黄色へと変えてステージで踊る駆くんに合わせて振る。この一時が幸せで、ずっと続けばいいのに。何てライブが終わると何時も思う。けれどその前に。

「……かけるーん!!」

キャー!歌い終わって次の人へとバトンタッチして袖へ捌ける駆くんへ声援を送る。
今日のライブは始まったばかり。楽しまなきゃ損損!とペンライトの色を変えた。


Exhibition
(そして)
(物語は次の日へ)

20191104
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