イノセント・フラッグ
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「へぇー!それじゃあ今日は、お姉さんに頼まれたんだ」
「ああ」
スーパーが分からない、と言った彼にどこのスーパー?と聞けば私が向かおうとしていたスーパーで。何なら一緒に行こうか!と提案し、あれこれ質問して答えてもらいながらスーパーへと足を運んだ。
「今日は姉さん、仕事が忙しいみたいだから」
代わりに。そう返事はしてくれても目を合わせてくれない彼に、ああ、今の時期はそう言う時期か。と肩を竦めて笑う。
スーパーへ着き、各々お目当ては違うみたいなのでそれじゃあね、と言って別れる。卵のエリアに行けば、沢山の主婦さん達で溢れていたけれど何とかその人の波を掻い潜り、お一人様2つまでお買得の卵の2つ確保し、ホクホクと満足げにレジへと向かった。
「……あれ?」
会計をして外へ出れば電柱に寄りかかっていた彼が私に気づいて近寄ってきたのに首を傾げる。
「どうしたの?」
「……」
相変わらず交わらない視線に少し悲しくなりながら彼が口を開くのを待つ。地面を見れば二人の影が長く伸びていて、ここに来て半年が経ったんだと改めて実感した。
「……悪い」
そんな矢先。突然目の前の彼が口を開いたかと思えば謝罪の言葉で。私は思わず何が?と首を傾げるばかり。
「案内。わざわざしてもらって」
「ああ、別に?私も卵買う予定もあったし!」
お互い様だから!そう言って笑いかければ、驚いた様に目を丸くした彼とやっと目が合った。一瞬ドキッとしたけれど、そこはバレない様に気付かないフリをして。この時期の彼と目があった。たったそれだけの事だけれど、私を見てくれた事が嬉しくて更に頬を緩める私に今度は彼が首を傾げた。
「目、やっと合ったね」
「!」
「…君に何があったのかは知らないけれど、今一瞬でも、君が私を見てくれた事が嬉しいんだよ?」
本当は君に何があって、どういう心情なのか、全て私は知っているけれど、今日初めて出会った私が言える事なんて何一つない。だからこそ、すっ惚けた様にニッ!と笑えば少しだけ視線をさ迷わせ、そして申し訳なさそうに地面へと視線を落としてしまった彼に慌ててごめん!と謝る。
「無神経だったかな!?ごめんね!」
「…そうじゃねぇ…」
わたわたと目の前で焦っていれば、手を首に持っていって横を向いた彼は小さい声でそう呟いた。そこから言葉を待つも、また沈黙が続いて。サァア…ッと吹き抜ける風に遊ばれない様に髪を押さえていればお前は…と弱々しく吐き出された。
「何も聞かないんだな」
「…聞いて欲しいの?」
「…」
苦虫を潰した様な表情をする彼は、どうしたら良いのかわからない。と顔に書いていて。そんな彼に、私は首を横に振った。
「…聞かないよ」
「…何でだ」
「うーん……だって君、」
苦しいって表情してるから。そう言って困った様に笑えば、悲しそうに目を丸くした彼がこちらを向いて。そんな彼の頭を、私は優しく撫でる。
「そう言う顔をするって事は、君の中で、他人に言うべきじゃないって思ってるって事だよ。だから私は聞かない。……でもね。もし、その感情に支配されて、苦しくて苦しくて辛くなったら、」
その時は私が、話を聞くから。ふわりとだらしなく笑いかければ肩の力が抜けたのか、フッと笑った彼の表情が柔らかくなった。それに心の中でよしよし!と頷く。
「…さ!もう時間も時間だし、お家に帰ろうか」
「…ああ」
それじゃあ私、こっちだから。そう言って背中を向ける。数十メートル歩きだした頃に背中に声をかけられた。
「また会えるのか!?」
その言葉に振り返れば先程と同じく、苦しそうな表情をしていて。だから私は、先程の彼よりも大きい声でとびっきりの笑顔で。
「君が諦めなければ!必ず!会いに行くよ!」
08
(だから絶対、大丈夫!)
(そう伝えれば彼は、眩しそうに目を細めた)
(有言実行)
(絶対、雄英に受からなきゃ…!)
20190915