イノセント・フラッグ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はぁ……はぁ……!」
オールマイトと出会い、相澤先生に助けて貰ってから1ヶ月程経った。強くならなくちゃ、と決意改めて家に帰ったあの日、リビングにあるテーブルの上に手紙が置いてあって。何だろう?と思いながら手にすれば、送り主はあの面倒臭がりな神様擬きで。内容を要約すると両親が亡くなっているのは事実で、個性譲渡の話は色々と面倒臭くなってそういう話に行き着いた、との事で。面倒くさくなっちゃった、ごめんね!の一文を読んで思わず手紙をグシャグシャにした私は悪くない。あの神擬きめ…!何て口が悪くなったのも私は悪くない。
「集中力が散漫してるぞ」
突然現れた相澤先生がピリッとした声音でそう言った。……いけない、いけない。意識を戻さなくちゃ。
さてさて。今私がどこにいるかと言うと、雄英高校内にある演習場にいる。強くならなきゃと思うも突然変異で個性を発現した様なモノなので、まず私は個性を制御出来る様にならなくちゃいけない。そこで、相澤先生に個性を制御出来る様になりたいのですが如何せん暴走気味なので見ていてくれませんか?とダメ元でお願いしてみたら、相澤先生自身も暴走気味の個性持ちを放置したくないのか渋々、といった感じで頷いてくれて、そこから朝はいずっくんに同伴して海浜公園、放課後は雄英高校で個性の特訓、という毎日が続いている。
「はぁ……きっつ……」
「始めて1ヶ月だが、それにしちゃ良く出来てる」
ありがとう、ございます…。荒い呼吸を整えようと息を吸って吐いてを繰り返す。色々と試してみたが、今の所私の個性は゛結晶から力を借りる゛感じだ。私の体力というか、許容範囲がもう少し増えれば使い方の幅が広がりそうだけど。
「もう少し発動の時間を短縮できると合理的だ。それから、一度に複数の結晶を使えると更に良いだろう」
「ふぅ……やってみます」
暴走したら、宜しくお願いします!落ち着いた呼吸に、今一度深く息を吐く。1つ出来る毎に新しく改善点を提示してくれる相澤先生に流石先生だ…と感動を覚える。こんなに親身になってくれる優しい方なのに、今年の一年生を除籍処分にしてるんだよなぁ…。
「…絶対、期待に応えよう…」
「どうした、早くやれ」
「!は、はい!」
あれ、この考えはいずっくんのそれと同じじゃないかな…?何て考えが過った所で、相澤先生の視線が鋭くなったのに慌てて背筋を伸ばす。ふう…ともう一度集中する為に深く息を吐き、サイドポシェットに手を突っ込めばカチャリ、と音が鳴った。この1ヶ月の間に集められるだけ集めた結晶は数えるのをやめる程増えた。その中から2つ、お目当ての結晶を見つけ出し、掴む。
「…スピリット゛マーテリア゛、゛ウェントス゛!」
取り出した2つの結晶をピンッと上へ弾いて名を呼ぶ。2つ同時に目の前まで落下してきた所に、思いっきりパンッ!と結晶を挟む様に両手を合わせた。
「クロスオーバー!!」
そう叫びながら合わせた両手をゆっくり離す。その際、手と手の間から何かが生まれようとしているのか、光輝くそれを摘まむような動作をして、最後は思いっきり引っこ抜いた。
「……で、出来た!」
「それは?」
手に現れたのは淡い緑色の扇子で。2つ同時の発動、そして現れた扇子にやった!やったー!とはしゃいでいれば相澤先生が首を傾げたのが見えた。
「まあ、見てて下さい!……いきますよー!!」
ハッ!!緑色に光だした扇子を声と共に思いっきり横に振る。すると、振り切った扇子の先、私の目の前で風が吹き荒れ、刃となり、一直線に飛んでいった。
「ふう……どうですか!」
「ああ、申し分ないな」
けたたましい音を響かせた風の刃が消えた後に相澤先生の方を向いてニンマリと笑えば、相澤先生は目を伏せてふっと小さく笑った。
「私の個性、結晶の組み合わせ次第で色々出来ると思ったんです!特に゛マーテリア゛は素材って意味ですけど、この1ヶ月試してみて、刀とか色々具現化出来たのでもしかしたらって!」
「そうか」
「ただ、幼い頃に読んでた漫画のオマージュなんですけどね…」
あはは。と笑う。前世の、私が小学生時代に放送していた半妖の犬ッコロと中学生巫女さん達が旅をして宝玉の欠片を集めるお話。あの漫画の中に登場する敵さんだけど、のらりくらりと風の様な人生を送りたいと言っていた着物を着て、扇子が攻撃アイテムだったあの女の人。あの人の攻撃方法に当時物凄くときめいていた記憶があり、この1ヶ月色んな結晶を試してもし出来たらやりたいと密かに思っていたのを今ここで具現化出来た。それが嬉しくてテンションが上がったが、少し冷静になると果たしてこれは大丈夫なのか、と不安になった。
そんな私に近づいてきた相澤先生がポンポンと頭を優しく撫でた。
「オマージュでも何でも良い。そういうものがある奴は強くなる。それがお前を形作る原点となり、夢への道となるからな」
だからそれを大切にしろ。そう言ってもう一度優しく頭を撫でる相澤先生に…そっか!とだらしなく笑う。
「ここが私の始まりで、原点」
……大切にしよう。ぎゅっと拳を握る。外堀から埋められて、強個性を持たされて。何てこった!何て思っていても、この世界で生きるのなら強くなりたいと思ってしまった訳で。自分で志願して相澤先生に指南してもらって、もう後には引けない。ただ見てるだけの傍観者ではいられない。これから起こる事を考えれば足が竦んで震えは止まらないけれど、後戻りはもう、出来ないから。
「……だったらいっちょ、やってやりますか!」
始まりは突然だったけれど、これが私の進む道。
06
(最初に言っておくけど)
(これは私が誰かの為に一歩踏み出し)
(誰かの為に最高のヒーローになる物語だ)
20190713