イノセント・フラッグ
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「全く。その年で個性の暴走だ何て聞いて呆れるね」
起きてすぐ、真っ白な天井が見えてここどこ?何て思っていれば投げ掛けられた言葉。それに反応して顔を向けば、盛大な溜息と一緒にペッツ食べるかい?と差し出されたのにあ……どうも…。と手を伸ばした。
「……で、あんた何してたんだい?」
「いや……何してたも何も、学校行こうと走ってたら突然、その……」
「個性が暴走したと」
「あ、ははは……」
目の前にいた人物、リカバリーガールの言葉に困った様に笑う。チラリと壁にかかる時計を見れば、お昼をとうに越していて白目を向きそうになった。しないけど。結構迷惑かけたんだなぁ…と罪悪感に胸を支配されていればガラッと扉が開いたのに肩を揺らす。
「…起きたか」
「あ…」
「イレイザーに感謝しな。あんたの暴走止めてくれたんだから」
「この度は本当にありがとうございました……!」
「いや……」
深々と頭を下げれば目線を外し、首に手を当てて照れるイレイザー、基相澤先生に思わずキュンッとする。内緒だけど、実は相澤先生のビジュアルが好きだったりする。内緒だけど。
「澄音結希」
「はい!……え?」
名前…。教えたっけ?と突然呼ばれた自分の名前に首を傾げれば、首に手を当ててない片方の手にずっと持っていた茶色い封筒を掲げて悪いが調べさせて貰った。と淡々と言う。
「調……え……?何で……?」
「その年で゛個性の暴走゛それが引っ掛かってな」
「う、ぇえええ……?」
「何て声出してんだい。……で?どうだったんだい?」
ペシッと軽く私の額を叩いたリカバリーガールに痛っ…と小さく呟いて額を擦る。そんな私に目もくれず、相澤先生が持ってきた封筒の開封を促した。
「…お前、今の今まで゛無個性゛だったんだな」
「ううっ……そうですよ。さっきのが本当突然で、私自身も何が何だか…」
肩を竦めて相澤先生の質問に答える。内心ではえ、この世界の私の個人情報あるの?知りたい…。何て考えているけど、相澤先生が言った゛無個性゛が全てを物語っているんだろうなと自己解釈。
「学校も8割方゛無個性゛が集まった学校だなここは」
「そう、ですね」
いやいやいや、初めて知ったよその情報。だからか?だから今まで何も疑問も持たずに生活してたのか私?と言うか、そんな学校あるのか?あるか。゛無個性゛が゛稀に゛産まれるだけであって、゛0゛ではないんだから。
「……」
「え、あ、あの……」
「結希と言ったかい?」
「あ、はい」
腕を組んで考え事をし始めた相澤先生に何だろう…嫌な予感しかしないが、リカバリーガールが私の名前を呼んだのでそれに反応する。
「あんた、さっき発現した自分の個性をどれくらい理解しているんだい?」
「どれくらい、と言われますと……」
全てですね!何て笑顔で答えられればよかったなぁ。この゛チート゛過ぎる、突然発現してしまい暴走状態の個性を何と言うべきか。
うーん…。と顎に手を当てて悩んでいれば本日何度目かのリカバリーガールの溜息。何故溜息…?とリカバリーガールを見れば個性把握検診受けるかね?と注射の針を見せながら言われたのに注射が嫌すぎて間髪いれずに答える。
「゛スピリット゛です!」
「「スピリット?」」
ここに来てリカバリーガールと相澤先生の声がハモった。と言うか相澤先生、考え事してて話聞いてないのかと思ってた。二人顔を見合わせて、初めて聞くね。それはどんな個性だ?と口々に言う。
「あ…えっとその…何と言いますか…んん…神様を使役?うーん…何か違う…」
ええーっと…。拙い語彙力で頑張って伝えようとしてるのが二人には伝わっているらしい。先程まで溜息を吐いていたリカバリーガールも、怪訝な顔をしていた相澤先生もちゃんと耳を傾けてくれてる。それが何だか嬉しくて恥ずかしくて、頑張って伝えなくちゃと変にやる気が出た。
「゛付喪神゛っているじゃないですか」
「長い年月を得た道具等に魂が宿るってやつか?」
「あ、そうですそれです」
うんうんと頷いていればリカバリーガールのそれがどうしたね?と続きを聞く言葉に再度頷いて口を開く。
「私の魔……個性ですが、それに近いです」
「付喪神がか?」
「はい。私の場合、付喪神から゛力を借りる゛って言う方がしっくり来るんですけど…」
そこまで言えば何が言いたいのか理解したのか、目を丸くする二人に心の中でチートですね!ごめんなさい!と謝る。心の中でだけど。
「それはまた、大層な事だね」
「ははは……」
「澄音」
褒めてないよ。分かってますよ!眉を下げたリカバリーガールに自分もそう思ってますと意思表示していれば相澤先生に名前を呼ばれた。はい?と返事をして向き直れば、お前…と真剣な声色に背筋を伸ばす。
「今日、発現したばかりだよな?自分の個性をよく知ってるな」
「あ……ええーっと……」
どうしよう。こればかりはどうする事も出来ない……?実は自分が作った魔法で、神様(?)に授けてもらいました!何て言ったら確実にヤバい奴認定されかねない…。
どうしよう、どうしよう。とダラダラと流れる汗をそのままに頭をフル回転させていれば、唐突にフッと相澤先生が笑った。
「合理的じゃないな、すまない」
「へ…?」
ポンポンっと頭を撫でられた事に驚いてフリーズする。少したってから何をされたのかやっと理解が出来た時には全身が燃える様に熱かった。
「~!?!?」
「おやまあ…」
「実はお前の個人情報を出す時についでと思って両親の情報も出させて貰った」
パタパタと手で自分の顔を扇ぐ私を見て、リカバリーガールは呆れた様な言葉を発し、相澤先生は何も気付いてないのか話を続ける。
「わ、私の両親の情報がどうしたんですか」
「お前の両親、特に母親か。今澄音が言った通りの個性を所持していた」
「゛所持していた?゛」
少し上擦った声で相澤先生の言葉を促す。両親。そう言えば、記憶を取り戻す前も取り戻してからも、両親の記憶があんまりない。ないけれど、仕送りが毎月あるからてっきり海外赴任とかしてるのかと思っていたんだけど相澤先生の口調からして何か違うなこれ。
「澄音、お前が生まれてすぐ、お前の両親は死んでいる」
……え、私の出生って結構悲惨なの?
04
(突飛的な話のお陰で冷静になれたから言うけれど)
(相澤先生のビジュアルが好きであって)
(本命は別なんだよなぁ…)
(何て意識を飛ばす私を許してくれ)
20190702