イノセント・フラッグ
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「嘘でしょ……」
朝からこの言葉を今日1日で何度言ったか覚えてない。起きてすぐ、昨日のアレは夢だったんだ!と自分を納得させようとした所で鳴り出した携帯を開けば、そこには『オールマイト』と表示されていて。恐る恐る携帯を開き、受け取ったメールの内容を見れば『明日朝6時に市営多古場海浜公園に来てくれるかい?』というもので、そこでまず頭を抱え、そして次に思い出した事を冷静に頭の中で纏めてみて更に頭を抱えた。
「……私、考えてみれば中学生……?」
色々と思い出しながら、鏡を見て最初に思った事。それは誰かの成り代わりとかではないという事。そこに関しては安心して思わず溜息が出た。次にこの見た目と前世の記憶。前世の私は二十歳過ぎの新卒の社会人。自分で言うのもアレだけど、見た目は年相応で茶色寄りの髪色をしてた筈。それが今は日光を浴びて光輝く白銀。これはもう異世界あるあるで通すとして、問題は前世の最後の記憶。確か、毎週の楽しみである月曜発売のジ◯ンプさんを買いにあの青い看板のアニメ専門店へ向かっていた。その矢先に……
「あ、ダメだ。思い出したくない」
耳に残る劈く悲鳴と体に降りかかった衝撃を思い出してしまい、咄嗟に自分の体を抱き締める。震える体にごめん…。と呟いて先程よりも強く抱き締めた。
「……何で今まで思い出さなかったんだろう」
この世界に迷いこんで、というよりも転生?の方が正しいのかな?とりあえず生まれ落ちて、彼是15年は経っているのに全然気付かなかった。だって、在り来たりな日常だったから。友達も普通の子で、学校の授業も普通。通学路の住宅街だって普通。何て事ない、二十歳だった私が生きていた『魔法なんてない世界』そのもので。だからこそ、寧ろ何で?という疑問の方が多くて。
「……誰かが、そう仕向けた?……いやいやいや、そんな事ないかー」
はははー、と自分の言葉に突っ込みをいれて笑う。あ、これ何か空しい。そう思った時、再度鳴り出した携帯にあ!と我に返った。
「ヤバイ!学校!」
急いで身支度を整えて家を出る。住宅街を駆け足で通り抜ければ近所の見知ったおばさんが急がないと遅刻だね!と笑ったのに遅刻やだ!行ってきます!と声をかけて走るスピードを更に速めた。
「えっ……!?」
自分の中の、ほんの少しの変化を加えてみただけ。長距離走ラストスパートを最後の力を振り絞ってゴールまで駆け上がる、そんな些細な変化を加えてみただけ。それなのに。
「ちょ……!待って!待って私!何……!?」
突然風が吹き荒れ、意思を持ったかの様に私を浮かす。制服のスカートがヒラヒラと揺れるのを慌てて抑えながら周りを見れば、3階建ての屋根を易々と越えていて。
「嘘でしょ……!?ちょっ……止まって!!!」
何をどう言っても収まるどころか更に悪化する。風が吹き荒れるだけでなく、周りにはシャボン玉の様な無数の泡が出現し、更にはシャボン玉の周りに何かがピカピカと光ってる。ちょっと待ってよ……これ、確実にヤバイやつじゃ……!
「だ、誰か……!!!」
上昇する体に恐怖しながら誰かに助けを求めるべく地上を見る。生憎と誰も私に気付いておらず、このままいくと大気圏を突破してしまうかもしれない、何て不安が襲う。
どうしよう…!そう思った時、見つけた人物に目を見開き、そして咄嗟に大声で助けを求める。だって、あの人しか今の私を助ける事ができる人はいないし、きっとあの人なら助けてくれるって信じてるから。
「っ……!助けて!!相……イレイザーヘッド!!!!」
私の声が届いたのか、バッ!と振り返り驚いた顔をする相澤先生とバチッと目があった。その瞬間。
「う、ひゃぁああああ!!!!」
吹き荒れる風も、無数のシャボン玉もピカピカと光輝く何かも一瞬にして消え、私を支えるものが何一つなくなった体は猛スピードで落下する。あ、これしんだかも。2回目も呆気ない…。何て考えていれば身体中に何かが巻き付く様な感覚。
「お前……何やってんだ」
「あ……ありがとう、ございます……」
私も何が何だか…。先生特注のロープのお陰で地面にごっつんこは免れた。ドッドッ…と早い鼓動と突然の事に視界が歪むし頭が痛い。
「これが……個性……ウッ……」
「!おい!」
倒れる私を焦りながら支える先生を歪む視界で捉えて、そこで私は意識を手放した。
02
(お願いだから)
(ただのモブでいさせてよ……!)
(神様の意地悪!!!!)
20190626