サニーデイ・ソング
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「風隠」
「はい?」
昼休み。何時もの如く飲み物を買いに行こうかと廊下を歩いていれば呼ばれた私の名前。振り向いて呼んだ人を見れば驚いた。つい先日屋上で会った人物がいた。
「…豪炎寺くん?」
「ああ」
サッカー部との関わりなんて、鬼道くん位しかいないのに。屋上で会ったと言っても顔を見た程度で会話なんてしてないのに。どうして私?と理由が見当たらず首を傾げれば、少し話さないか?と中庭を指差された。
「あ、どうも」
渡されたスポドリにお礼を言って受けとる。キャップを回して2、3口飲めば、ほんのり甘くて安心した。チラリ、と横をみれば、誘い出したものの会話が見つからないのか、豪炎寺くんはよく分からない表情をしていた。
「…えーっと、豪炎寺くんって、木戸川だっけ?」
「ああ」
そっかー、木戸川って陸上も強いよね。そうだな。何とか絞り出した会話にノってくれた。そこからまた2、3個会話をしていると突然脈絡もなく豪炎寺くんが口を開いた。
「え……?」
「だから部活、辞めたのか?」
「あ、ああ、部活ね……うん。辞めたよ」
そう言って笑えば、未練はないのか?と豪炎寺くんは眉を顰めた。
「ありあり!大有りだよ。……でもね、一番の未練が、もう陸上部にはないんだもん」
そしたら、何かねー。スポドリを持った両手と両足を伸ばして笑う。未練何てありすぎて、陸上部が部活をやっているのを見ると羨ましさと妬ましさと、何だかよく分からない感情がぐるぐると渦巻き、最終的には見れなくなってしまった。それでも走る事は今でも好きで、ずっとやっている日課のジョギングはやめていない。けれど飛べなくなってしまったのは変わらない事実で、砂場を見ると無性に泣きたくなるんだ。私はあそこで、飛んでいたのに。唯一の場所だったのに、と。でも一番は、風丸が傍にいないからだ。君がいたから辛いメニューもこなしたし、君と一緒だったから高みを目指せた。悪ふざけも君とだったから笑えてた。
「翼の折れた鳥はもう飛ぶ事が出来ないんだよ」
だから私は、地に落ちたその先で、新しい何かを探したいの。ポンッとベンチから飛んで立ち上がる。くるりと振り返ってそう笑いかければ、豪炎寺くんは目を伏せてそうか。と笑った。
「だが、風丸には言っておけよ」
「え、なんで?」
そろそろ休み時間が終わると言うことで中庭から離れ、教室へ向かって廊下を歩いていれば、そう伝えられた言葉にまた首を傾げた。
「昨日、鬼道と喧嘩をしたからな」
「え、鬼道くんと!?」
何でまた…。呆れた声を出せば、豪炎寺くんはフッと笑った。
夕立サイダー
(だからちゃんと、)
(風丸と話せ)
(その言葉に返事が出来なかった)
20180719