サニーデイ・ソング
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ポーンッとボールが飛んでいった。円堂達にすまない!と一言かけてボールが飛んでいった方へ走る。確かこっちに…。と記憶を辿りながら向かえば、足元に転がってきたボールを不思議に思いながら両手で掴む姿が見えた。
「すみません!……て、」
「ん?……あ、」
なんだお前か。と口から漏れるのと同時に風丸。と呼ばれた。そのあと何時もの様におはよう。と笑ったのにおはよう。と返す。
「朝練?大変だね」
はい。と渡されたボールを受けとりながらもう慣れたよ。と笑い返す。先日、屋上に現れたこいつは鬼道と一緒で。突然の二人の登場になぜ二人が?と思考は停止した。ただじっと眺めていれば、居たたまれなくなったのか鬼道の制服の袖をちょんちょんと掴んでお互い何か喋ったと思ったら、お邪魔しましたー!と眩しいくらいの笑顔を俺達に向けて屋上を出ていった。その姿を追いかける程の勇気はなくて、俺はただ見ているだけだった。
「風丸?」
どうしたの?顔を覗いてきたこいつに驚いて肩を揺らす。な、何でもない!と少しだけ大きい声が出た俺に、変な風丸。と言ってまた笑った。
「な、なあ、」
「風隠」
今なら、聞けるだろうか。勇気を振り絞って発した声は、こいつを呼ぶ第三者の声にかき消されて。ん?と俺をよけて顔を覗かせたこいつはあ、鬼道くん。と声をかけた。
「おはよう、鬼道くん」
「おはよう。今日は早いな」
「私今日、日直なんだよ」
「そういえばそうだったな」
同じクラスの特権。有無を言わせない二人だけの会話においてけぼりを食らった。楽しそうに話している二人に、小さくじゃあな。とかけた言葉は聞こえていただろうか。振り返るのが怖くて、振り向けないままその場を後にした。
それから放課後まで、俺の頭の中は鬼道とあいつの事ばかりを考えていて。授業中、当てられても上の空だった俺にマックスが珍しいね。と声をかけたのにただ苦笑いを返したのだった。
「風丸さん!」
「宮坂」
放課後の部活の時間。一通りのメニューが終わり、休憩がてら頭を冷やす為に訪れた水道には先客がいて。こちらに気づいた宮坂は手をブンブンと振って笑顔で俺の名前を呼んだ。
「今休憩ですか?」
「ああ、そっちもか?」
「はい!」
ニコニコと笑う宮坂に大袈裟だな。と眉を下げる。ここに宮坂がいるなら、とあいつは?と聞けば、先程までの笑顔は何処へ行ったのか、表情をなくした宮坂は言いづらそうにあの、その……。と続けられた言葉に殴られたような感覚を覚えた。
「…円堂!」
宮坂と別れ、急いでグラウンドへ戻る。走りながら円堂を呼べば、ゴール付近で鬼道と豪炎寺と話していた円堂が振り向いてどうした?と聞いてきた。
「悪い!俺、行かなくちゃ!」
「行くって何処にだ?」
「とりあえず、悪い!」
成り立たない会話をしながら、急げ急げと急かす気持ちに焦る。そんな俺に、鬼道が口を開いた。
「今更行って、何になる」
「…どういう意味だ」
「そのままの意味だが」
分かっているんだろう?そう言われて、全てを見透かされた気がした。思わず、掴みかかる勢いで何だと!と言い返せばお前ら止めろ!と止めに入る円堂の声と周りに集まってきたチームの皆の不安そうな顔に動きを止める。
「…何時からだ」
深く息を吸って吐く。そうする事により、少しだけ冷静になれた。そうして静かに聞けば、鬼道も深くゆっくりと息を吐いた。
「退部したのは最近だろう。だが、ここ一ヶ月ろくに飛べていないらしい」
風隠、居場所がわからないって無理矢理笑ってたぞ。続けられた言葉にそう、か。と答えた声は、震えていて。何故だか無性に泣きたくなった。
晩夏のゾンレーヘン
(俺はあいつの)
(何を見ていたんだ?)
20180718