彼誰マジックアワー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「と、いうことで!」
お泊まり会しよか!前触れもなく手を叩いたリカさんは満円の笑みでそう言った。
「え、え?」
「だから、お泊まり会!」
なぁ?ええやろ?グイグイ来るリカさんに引き気味の私。えーっと…とか、あー…とか言っていればトンっと背中に誰かの手。
「あ…塔子」
「詩音…」
やろう!お泊まり会!目を伏せている塔子に助けを求めるも、グッと親指を立てる塔子にそう来なくちゃな~!とリカさんが更に目を輝かせたのに小さな溜息が漏れた。
「も~……仕方ないなぁ」
そうやって折れれば、二人はガッツポーズをして盛大に大喜びするのにつられて笑ってしまった。
「今お茶淹れてくるからー」
「「はーい!」」
あれから三人でスーパーに寄って食材を買い、我が家に帰宅。ここだよ、とお家を案内すればわくわくが隠せない二人は玄関を開くなりお邪魔しまーす!と走り出したのに子供か。とほんの少しだけ呆れ笑い。夕飯を作って順番にお風呂に入って、さあ寝よう!となった時にまだ寝たくない!と駄々をこねたリカさんと塔子に又もや折れた私は部屋でお喋りする為に台所へ向かい、ポットにお湯をいれてマグカップやお茶請けなどをトレーに乗せて再び部屋へ向かった。
「…そういえば私、リカさんとは余り喋った気がしないんだけど」
持ってきたマグカップにお茶を注ぎ、一口飲んで落ち着けば、ふと思い出した事を口にする。そうすれば二人はキョトンと私を見て、そしてお互い顔を見合わせて笑った。
「せやねん!塔子や綱海達とは仲ええやろ?折角の女子プレイヤーさかい、仲良ーなりとーてな!」
グッと親指を立てて豪快に笑うリカさんと、リカ、ずっと機会を伺ってたもんなー何て優しく笑う塔子に何だか擽ったい。
それを誤魔化す様にもう一度、お茶に口をつければ、そ・れ・に!と更に前のめりになるリカさんに少しビビる。
「お泊まり会、強いては女子会といったらやる事はただ一つや!」
「や、やる事…?」
嬉々として立ち上がって主張を述べるリカさんに聞き返したのが不味かった。待ってました!と目を輝かせたリカさんはグイッと私の両肩を掴んで至近距離でとても綺麗に笑って言った。
「恋ばなしよか!」
「こ、恋ばな!?」
「せや!お互い゛恋する乙女゛さかい、話聞きとーてな!」
……何だろう。今、聞き捨てならない言葉が聞こえたする。
「恋するって……誰が?」
「あんたしかおらへんやろ?」
「……へ?」
私?何て惚けた声が出た。そんな私にリカさんはせやせや!と頷き、塔子はえ、まさかの自覚なし?と言ってきたのに何て返そうかとお茶に口をつけた。
「いーや!自覚あらへん何て事あらへんやろ?」
「……」
言い淀む私に塔子はどうした?と聞きたそうな顔をして、リカさんはフッと少し悲しそうに笑った。
「…アタシな、叶わない恋しとるって自覚あんねん。見てて分かんねん。ダーリンが誰の事を見とるか」
「リカさん…」
「リカ…」
私の声と塔子の声が重なった。その声に反応してニコッと笑ったリカさんはせやけどな!と握り拳を作り、強く言い放った。
「それで諦めるアタシやないで!それがどうしたってな!…ちゃんと、ダーリンに言われるまでアタシは、ダーリン一筋やねん」
だから詩音。諦めんといて?一緒に頑張らへん?優しく笑いかけるリカさんに思わず顔を下げる。手に持っていたマグカップの中のお茶の水面に映る自分が情けない表情をしていて、何だか泣きたくなった。
「…私ね、諦めてるわけじゃないよ。ただその…もうこれ以上、邪魔をしたくないだけ」
「邪魔?」
首を傾げて聞き返した塔子にそう。と頷く。そう、邪魔をしたくないんだ。言葉にしたらストンと心に落ちた。その気持ちを上手く言えないんだけど…、と前置きを入れて綴る。
「私はただ、もう一度笑ってほしかっただけ。あの場所では、見たかった笑顔を見せてくれなかったから。けど、その笑顔を取り戻せたのが今なの。…私が沢山、無神経な事してたみたいだし。だからこれ以上、邪魔をしたくないだけなの」
そう言って眉を下げて笑う。すると塔子がそれは違うと声を上げた。
「あれはエイリア石の所為で…!」
「だとしても、あれは皆の心の奥底の本心だから無下にはできないよ」
「でも!」
「塔子、」
ありがとう。そう言ってふわりと笑う。そうすれば押し黙る塔子の背中をリカさんがポンポンっと優しく叩いた。
「詩音は頑固やなぁ。…でももし、もしやで?隠し通すのが辛く苦しくなったら、何時でもアタシ達を呼んでな?」
あんたがアタシ達に手を差し伸べるみたいにアタシ達も差し伸べたる!約束やで?そう言って笑ったリカさんに釣られて、うん。ありがとうリカさん。と一緒に笑う。そんな私達を見て、塔子が盛大に息を吐いた。
「二人とも強いな」
「せやで。女の子やもん」
「リカさん、それ関係ある…?」
グッと力こぶを作って見せたリカさんに突っ込みを入れれば、今度は三人で顔を見合わせて笑い合う。
「……そういえば二人とも、何で知ってるの?」
「何言うとんねん」
「色恋沙汰に疎いアタシでも分かるよ」
うわ、マジかー。そう言って項垂れれば二人は豪快に笑ったのに仕方ない、といった風に笑い返す。そうして、長い様で短い夜の一時を笑顔で過ごし、夜が明けるまで三人で沢山語りあった。
月夜に恋せよ乙女
(「ていうか!いい加減呼び捨てせい!」)
(「今更だな!?」)
(「あはは!……塔子、リカ、ありがとう!」)
20190620