黎明ファンファーレ
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目が醒めた風丸達が円堂くんを起こす。起き上がった円堂くんと何か話したと思ったら、少しだけ潤んだ瞳で風丸達の肩を抱いたのを皮切りに、雷門イレブンが円堂くん達に駆け寄るのをグラウンドの端で力の入らない足を撫でながら眺めていた。
「……よかった」
和気藹々と話している面々を遠くから見て、心から思う。結局の所、私はやっぱり迷惑をかけただけだった。風丸達の言葉を聞いて、ボールを蹴られ、そして何もしないまま呆気なく崩れただけだった。
「……」
果たして私は誰かの役に立ったのだろうか何て、何一つ分からなかったけれど、今こうして皆が笑っている姿が見れて本当によかったと心から思う。
一度伏せた目を開き、踏ん張って立ち上がる。一日に何度も酷使してしまった為、足に上手く力が入らず転けそうになるけど、何だか私がここにいるのは違う気がしたから。誰も見てない今の内に、この場を離れよう。何て思っていたのに。
「ちょっと風隠。何一人で何処か行こうとしてるの」
「え、」
「ほら風隠。歩けないんだろ?」
俺に掴まれよ。そう言って私の腕を肩に回した半田くんと、本当風隠ってバカだよね。何て辛辣な言葉を投げる松野くんに目が点だ。
そうして驚いてる間に連れてこられたあの賑やかな場所。どうしらいいのか、どう声をかけたら良いのかわからなくて後ろで見ていれば、私に気づいた塔子が詩音!と名前を呼んで駆け寄ってきた。
「塔……うぇっ」
駆け足の勢いのまま抱き締められ、一瞬首がしまった。苦しいと訴えようともう一度名前を呼ぼうとすれば、小さな声で、守れなくてごめん…。と呟かれたのに少しくすぐったくなって、ううん、ありがとう。と笑った。
「エイリアと戦ってる時もそうだよ。何であんたは、自分を大事にしないんだよ…」
「…塔子、」
少し泣いているのか、声が震えてる塔子に何て言えば良いのか分からなくて、取り敢えず背中をポンポンと優しく叩く。その内周りに集まってきた面々に眉を下げて笑えば、背中越しに名前を呼ばれた。
「風丸…」
「風隠。その、ありがとな。…本当はちゃんと、全部聞こえてた」
だからもう、大丈夫だ。前説もなくそう言ってふにゃりと笑った風丸を見て、私の中で堪えていたものが崩れたのが分かった。長年の付き合いだ。たったその一言で、風丸が何を言いたいのかちゃんと理解できる。ずっと見たかった笑顔とその言葉で私の涙腺は崩壊し涙が溢れ出す。ポロポロと大粒の涙を流す私と目の前でオロオロしだした風丸を見て、リカさんがあー!風丸何泣かせとんねん!何て大袈裟に騒ぎだしたのに慌てて涙を拭うが、止まるどころか溢れだす涙に自分自身も困ってしまう。
「わ、悪い!泣かせるつもりじゃ…」
「ううん、違うの…そうじゃなくて…」
私、何一つ役に立てなかったから…。そう言葉を発せば、一瞬キョトンとし、そしてすぐに呆れた様に溜息を吐いた風丸と未だに私を抱き締めてる塔子がはぁ?と呟いたのはほぼ同時で。
「え、何その反応…」
「いや、まさか過ぎて」
「え…?」
「詩音はそのままでいてよな!」
「ええー……」
そんな私達三人のやり取りを聞いて笑いだした皆の声がグラウンドに響き渡る。ふと空を見上げれば、曇天だった雲間から陽の光が降り注ぐのを眺めて、これで本当に、全て終わったんだとまた涙が溢れた。
黎明ファンファーレ
(それじゃあ皆!ほら風隠も!)
(サッカーやろうぜ!)
(そう言って笑った円堂くんに手を引かれ)
(やっと私も輪の一員に)
20190616