黎明ファンファーレ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「んん……」
くぁあーと欠伸を一つ。腕を上に伸ばしてまだ眠いと訴える目を擦る。覚醒しない頭で周りを見渡せば、見える景色は富士山ではなく青いバスの中で、外には和やかな景色が広がっていて。
「んん……?」
何処だここ…。動ける程まで戻った体を立ち上がらせてバスの外へ出る。キョロキョロと見渡していれば横から起きたか。と声が聞こえた。
「あ……響木さん」
「彼奴らなら彼処だ」
ん。と指差された場所を辿って見れば、楽しそうにサッカーをしている雷門イレブンの姿が見えた。その姿を見て、終わったんだなと頬が緩む。
「……楽しそうだねぇ」
「そうね。……て、風隠さん!」
夏未さんや音無さんがイレブンに混ざってサッカーをしているのを遠くから眺めていた木野さんに近づいて声をかける。返事をしてから誰に返事したんだ?と首を傾げた木野さんがこちらを向いて驚いているのにやほー。と手を振って傍に立つ。
「もう大丈夫なの?」
「うん、もう大丈夫!……色々と、ご迷惑をおかけしました」
「無事なら良かったよ」
そう言って笑う木野さんにつられて笑う。ぽつりぽつりとお互い簡単な会話をしてから、私が気を失ってからの事を重くならない様に気を付けながら、木野さんが話してくれた。
あの後、復讐心に囚われていたお父さんの目が覚めた。けれどそれと同時に自分を否定された玲名がお父さん目掛けてボールを蹴ったらしい。お父さんも逃げなかったらしいので、覚悟の上だったのだろう。しかし、それを止めたのはヒロトくんで。何故だと怒りを露にする玲名にヒロトくんは気持ちはわかる。と、でも自分の父さんだからと。そして、亡くなっているヒロトさんの事を。全て話してヒロトくんの本音を聞いて、お父さんは罪を償う事を決めたそうだ。
「…そっか、そんな事が」
「あ、それからね」
瞳子姉さんとヒロトくん達はこれからの事を一緒に話して、父さんの帰りを待つと聞いて心を撫で下ろす。それと同時にグランが、と木野さんは話を続けた。
「風隠さんの事、巻き込んでごめんって。お医者さんからサッカー止められてるんだってね」
「あー……」
あはははー。と頬を掻きながら笑って誤魔化していれば木野さんも困った様に笑った。
「……今回の事、多分、一番巻き込まれてたのは雷門の皆だよ。私は、最後の最後までヒロトくんや、姉さんに守られてたから」
「風隠さん…」
今はもうない胸元に手を添える。そこにあったペンダントは粉々に砕け散った。ヒロトくんから貰った、エイリア石。それから、最後まで知らなかったジェネシス計画。お役御免と言われたあの時、全てを悟った。全てを理解した。
「あの日姉さんと会った時、姉さんはきっと、私を雷門イレブンとして戦わせようとして、止まった。そしてヒロトくんは私に助けてと言ったのに、最後まで戦わせない様にとエイリア石を渡し、ジェネシス計画を全て話す事をしなかった。二人共、私が限界を越えてまであの場所に立つ事を知ってたから」
助けにいった筈が助けられてたなんてね。そう言って困った様に笑えば、木野さんは…優しいんだね。と溢した。
「そうだよ。二人だけじゃない、お日さま園の皆は優しいんだ。だからこそ、父さんを助けたかった。それが例え、正しくないと知っていても」
だから最後、ちゃんと元に戻って、笑顔になれて良かった!そう言って笑えば、そっか。と一緒になって笑う木野さんにありがとう。と伝える。
「皆のお陰だよ。本当にありがとう」
「私は何もしてないわ」
「そんな事、」
「あー!!!!」
詩音!突然名前を呼ばれた事に肩を揺らす。呼ばれた方を見れば、塔子が腰に手を当てて起きたなら言えー!と叫んでいて。その言葉を筆頭に私に気づいた雷門イレブンがプレイを止めてこちらを見ていて。
「風隠ー!」
サッカーしようぜ!こちらを向く皆に手を振っていれば円堂くんの誘いが聞こえて。えーっと、と悩んでいれば背中をポンッと優しく押された。
日輪カンパニュラ
(ねえ、風丸)
(全て終わったよ)
(だから、早く皆と楽しくサッカーやってる姿)
(見させてよ)
20181203