黎明ファンファーレ
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「違う!」
彼奴らは弱くない!淡々と語るお父さんに円堂くんは否定の言葉と侮辱された仲間への想いを綴る。しかしお父さんには何も響く事なくプツリとモニターが切れた。
「うぉおお!!」
それが合図だったかの様に試合が再び再開した。けれど頭に血が昇ってやけくそな攻撃になっている円堂くんのプレーではヒロトくんを止める事は出来ず、小さな子供の様に遊ばれていて。そんな円堂くんの姿を雷門イレブンの皆は苦しそうに、そしてジェネシスの皆はただニヒルに笑って眺めていた。
「円堂くん、キーパーに戻りなよ」
君がキーパーじゃないと倒し甲斐がないよ。そう言ったヒロトくんの言葉に立向居くんが反応しているのが何となく遠くからでも分かった。その言葉に円堂くんはより逆上し、突撃するがヒロトくんは颯爽と交わし、玲名と由宇の三人でスーパーノヴァを撃った。動揺の隠せない立向居くんを守る様に綱にい達DF陣が阻止を試み立ち塞がる。けれど威力のあるボールは止まらず、DF陣を抜け立向居くんの元へ迫る。
「ムゲン・ザ・ハンド!……うわぁ!!」
必殺技で応戦するも又も砕かれた立向居くんの必殺技。今度こそ追加点が入ってしまうと焦る雷門を救ったのは豪炎寺くんと吹雪くんだった。
「雷門守った!FWの豪炎寺と吹雪までも体を張った!!」
木霊した角間くんの実況は雷門イレブンには絶望を与えるには最適で。呆然とする立向居くんや円堂くんに、ヒロトくんや玲名はニヒルに笑って言葉で止めを刺した。
「全員でカバーしなければなはないキーパー。君達の弱点であり、敗因となる」
「……」
「彼奴らは弱くない!ボールを寄越せ!!」
攻撃が単調な敵程扱いやすいとは良く言ったもので。相変わらずヒロトくんに突撃をし、交わされる円堂くんを見ているのは堪えるものがあった。
「…ダメ」
「…え?」
思わず溢れた言葉に反応したのは誰だったのだろうか。確認する間もなく二人の間に駆け出す。走りながら思う事は、私ってばかだなぁって事。誰かの助けになりたくて、でもやれる事は限られていて。この場を掻き乱すだけ掻き乱しておいて、誰一人助ける処か、何一つやれていない。試合が始まってから私、何でここにいるんだろうって悩んでばかりだなぁ。
「…だからお願い、私にもやれる事、やらせて。」
力を貸して。ポツリと呟けばその言葉に反応する様に光を増した胸元のペンダント。その光を見て、肩の力が抜けた気がした。
「…行くよ」
エイリア石。胸に光るペンダントをほんの一瞬触り、小さく深呼吸をする。練習では五分五分だった私の必殺技。少しだけ緊張するけど、大丈夫。きっと出来る。吹雪くんだって勇気を見せたんだ。私だって。
十分な助走距離と円堂くんとヒロトくんの距離を確認し、トンッと軽く飛んだ。まるで、走り幅跳びをするかの様に。
「風隠!!」
高く飛び上がれば聞こえた鬼道くんの私を呼ぶ声。きっと、皆驚いてるんだろうなぁ。私も驚いてるからね。…あーあ、こんな状況じゃなければ、鬼道くんや皆と、飛べた事を喜べるのに。何て少し自分を嘲笑ってみる。あった筈の未来何て、タラレバの話なんて。そんなの今は要らない。必要なのは、この場を収める事、只それだけの為に。
「゛アトモスフィア゛」
落ちる速度を利用して一度回転をする。そうすれば身に纏う風が更に強くなり速度が上がった。そのまま二人の間に着地をする。それだけでも二人は少し飛ばされたのに、トドメを刺すかの様に利き手で風を切る素振りをすれば、今まで身に纏っていた風が爆発を起こした様な威力で吹き荒れ、二人は更に吹き飛ばされた。
「…出、来た…!」
片足でボールを抑えて静かに呼吸を整える。その直後にホイッスルが鳴り、前半戦終了を知らせた。
「何するんだ風隠!」
ハーフタイムに入るや否や、珍しく整わない呼吸のまま掴みかかる勢いで向かってきた円堂くんに気圧される。少し体を反らせながら、何て言おうかと考えていれば小さく聞こえた俺が証明しなきゃいけないんだ…。の声に拳に力が入った。
「円、」
「私も最初はそう思ってた」
円堂くん。そう呟こうとした言葉を遮ったのは姉さんで。私一人の力で、父の目を覚まさせようって。と背後から聞こえた姉さんの優しい声音に振り返る。監督…。と小さく呟いた円堂くんと私を見るなり姉さんはにこりと笑ってでも、出来なかった。と言葉を続けた。
「誰かの心を、考えを変えさせる何て大変な事。一人の力でなんて、とてもできない」
そう続けられた言葉に、全て見透かされてる気がして思わず姉さんから顔を反らす。そんな私の反応を見てか、姉さんはただ、と更に続けた言葉に顔を思わず上げた。
「一人では無理でも、皆の力を合わせれば、どんな事でも出来る」
それを教えてくれたのは貴方達よ。そう言って困った様に笑った姉さんの顔を見て、泣きそうになった。そうだよ。私がやってるのはただの独り善がり。私一人じゃ、何も変えられそうにないんだよ。だから、
「姉、」
「スピカ」
静かにエイリアネームを呼ばれて背筋が延びた。その一言だけで言わんとしている事が伝わってくる。
「……っ」
「詩音!」
唇を噛み、鍔を返す。私を呼ぶ姉さんの声に振り返る事をせず、スピカと呼んだヒロトくんの元へ。
「…君が例え、どちらの味方でないとしても。君は、俺の前から居なくなる事は許さない」
「……分かってる」
俺との約束、守ってよ。と瞳で語るヒロトくんに返事をしてチラリと雷門ベンチを見る。心が一つになったのか、清々しい表情をする面々がいて。ああ、後半できっと、皆がこの現状を変えてくれるんだと理解してしまった。
迷宮エスペランサ
(喜んだのも一瞬)
(口の中に広がる鉄の味に)
(お前は何処まで行っても無力だと)
(言われている気がした)
20181128