サニーデイ・ソング
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照りつける太陽と晴れ渡る空を眩しく思いながら見上げて目を細めた。大会日和とはよく言ったものだ。先程から暑すぎて日陰で私は今にも溶けそうだ。
「詩音さん、間もなく召集かかりますよ」
「宮坂くんー…」
「大丈夫ですか?」
んー…。と覇気のない返事を返す。心配そうな顔で私を見る宮坂くんは、この頃元気ないですけど本当に大丈夫ですか?なんて聞いてきてくれるいい子である。思わず頭を撫でてあげれば照れ臭そうに笑った。
「大丈夫大丈夫。最近暑いからね、参ってるんだよ」
だから気にしないで。召集場所いってくるね。ジャージを脱いで荷物の近くに置く。手にスパイクと水筒を持って立ち上がれば、頑張ってください!と力強く応援されて思わず笑ってしまった。
ーーあの日、風丸が助っ人としてサッカー部にいってしまったあの日から1ヶ月が経った。結論から言って、私の勘は当たっていた。助っ人期間が終わったと云うのに風丸は陸上に戻ってこなかったのだ。顧問に聞けば退部届けは出していないらしく、戻ってくる可能性はあるらしいが、多分戻ってくるつもりはないだろうと私は思っている。だって、あの練習試合を見てしまったから。
「…あんなに、楽しそうにしている風丸を、最近見た事なかったよ」
やっぱりプレッシャーだったんだろうな…。とぼやく。足が速く、大会に出れば入賞続き。それは良い事だけど、常に緊張の糸を張り詰めている訳で。陸上は個人競技。誰の助けも借りれない、己のみを信じなくてはいけない。その諸々が風丸には足枷になっていたのだろうか。最近、風丸がオーバーワーク気味だったのを私は知っていた。そして、それを見て見ぬふりしていたのも私だ。
「バチが当たったのかなぁ…」
近くにいて、止める事をしなかった。重圧に押し潰されそうになっているのも分かっていたけど、それと同じくらい、風丸の頑張りも知っていたから。その頑張りを、私が踏みつけて良いものじゃないと綺麗事並べてたんだ。傍にいれる事に甘んじていたんだ。だから、あの時気づいてしまったんだ。練習試合後、皆で肩を叩き合い、サッカーを続けられると笑いあっている風丸を見て、君のいる場所はこっちじゃないと。
「次の方!」
「!はい!」
回想に浸っていれば、いつの間にか私の番で。慌てて立ち上がり、審判の元へ走る。ゼッケン番号と名前を確認してもらい、助走距離を計る。30mとちょっとの距離。それが私の最大の武器となる距離。利き脚をスタートラインに合わせ、深呼吸一つ。風向きを確認し、手を挙げる。
「ーー行きます!」
トントントンと4歩左右に軽くとんで全力疾走。大丈夫、いつも通り。私は出来る。顔は真っ直ぐ、でも視界にジャンプラインを捉えるのを忘れずに。よし、今!
「っ!」
飛んだ、飛んだ筈。いつも通り出来てた筈。寧ろ今日のタイミングは凄く良かった、なのに。
「な、んで…」
翔べないリュシオル
(何の為)
(私は空を舞っていた?)
20180707