黎明ファンファーレ
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「ーー光を恐れるな!!」
「……?」
何処からか聞こえた誰かの声に、俯いていた顔をあげた。
僕の世界はあの日から止まった。そして、突然現れたアツヤの色に染まった。それがいいと僕は思ったし、これで完璧だって確信してた。なのに、雷門の皆とサッカーやって、僕も、僕自身でフィールドを駆け回りたいと思ったんだ。でも、それをやるにはアツヤを、弟を僕の中からサヨナラしなくてはいけなくて。そう考え始めたら、完璧の意味が分からなくなった。アツヤが居るから僕は完璧なんだ。なら、今の僕の気持ちは?僕は僕自身でってなったら、僕は完璧じゃなくなるの?僕は、どうしたらいいんだろうか。
「……」
光を遮った僕の世界。時が止まったのと同時に僕には何もないと実感させられる。
「……誰も、僕なんか…」
「本当にそう思ってる?」
アツヤと僕の世界に突然響いた声に俯いていた顔をあげる。辺りを見渡しても誰も居なくて。幻聴か。と吐き捨てた言葉にさあ、どうだろうね。と返事が返ってきた。
「君は…?」
「秘密」
「何しに来たの」
「君と話をする為だよ」
「僕と?」
「そう、君と。吹雪士郎くんと」
フルネームを呼んだ声の主はふわりと笑った、気がした。首を傾げながらも声の主に不快感はなくて。寧ろどこかで聞いた気がする声だな。何て考えていればねえ、と声の主は口を開いた。
「ねえ、雪吹くん。サッカーは好き?」
「うん、好きだよ」
「楽しいよね、仲間とやるのは」
「…そうだね」
「一緒に同じものを目指して走れるのって、凄い事だよね」
その一言に、返事を返せなくて俯いた。一緒に。打倒エイリア学園を目標に僕だって雷門の一員として頑張った。でも、今じゃこんな有り様だ。走るどころか足手まといでしかない。
「…僕はね、完璧じゃないといけないんだ」
「完璧?」
「完璧じゃないと、僕は…」
「ねえ、雪吹くん」
君の言う、完璧って、何?発せられた言葉に思わず顔をあげた。完璧って、それは…。と言葉を続けて押し黙る。その先の言葉が上手い事浮かばない。そんな僕を見て、そうなるのが分かっていたのか声の主はクスクス笑った。
「それが正しいよ。完璧の基準なんて誰も分からない。知らない。でも、完璧を求めるからこそ、雪吹くんは強くなれた」
ならさ、雷門の皆は完璧なのかな?続けられた言葉と同時に目の前に一筋の光が現れた。それが意味するもの何てとっくに理解していて。
「……手?」
光の先から現れた一人の手には、見覚えがあって。でも掴み返す勇気が出ず、出した手を引っ込めた。その動作を見て、声の主はやっぱり笑った。
「君にとって、その先にあるものはとても大切なものだと思うよ。だから、それを怖がらなくていいの。寧ろ喜んで?笑って?ちゃんと、君の気持ちに答えてくれるから。一緒に走ってくれるから。…でももし、怖くなって立ち止まって泣きそうになったら」
そしたらその時は、また私が背中を押してあげる!トンっと背中を押され、差し出されていた手を握った。そのままグイッと思いっきり光の先へ引き込まれ、眩しさから解放された時に見た景色は輝いていて。
「……そっか」
君は、この事を教える為に、わざわざここまで来てくれたんだね。僕のあるべき姿、やること、完璧の意味。全て、今やっとわかったよ。何て言う僕の気持ちを知ってか知らずか、背中越しに大丈夫!と声が聞こえた気がした。
「ありがとう…」
さあ。皆が待ってる、フィールドへ戻ろう。
暁天レヒトラオート
(さよならアツヤ、)
(君とまた会うのは少し先になりそうだ)
(心の中で呟いて踏み出そうとしたら)
(皆で楽しくサッカーやれよ兄貴!)
(風に紛れて聞こえた声に少し泣きそうになった)
20181119