黎明ファンファーレ
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「今日は」
コンコンッと病室の扉を叩けば中から聞こえてきたどうぞ。の声に小さく深呼吸をした。静かに扉を開いてニコリと笑えば中の人物は目を丸くし、直ぐに制服を見て今日は。と笑い返してくれた。
「初めまして、だね」
雷門中の風隠詩音と言います。軽く頭を下げて自己紹介すれば、彼も初めまして。と同じく自己紹介をしてくれた。
「サッカー部のマネージャー、ではないよね?」
「うん、違うよ。私今は帰宅部なの」
「今は?」
色々あってね。そう言って笑えばそれ以上聞いてこない彼にありがとう。と聞こえない程の小さく声で呟く。
「君は、ここに何しに?」
「うん。ちょっと、アフロディくんに聞きたい事があって」
「何かな?」
どうぞ。と促されたベッド近くの椅子に座り、言える範囲で良いんだけど…。と前置きを置いて会話を切り出す。
「雪吹くん、ベンチにいるのは何でか分かる?」
「…どうして?」
「あー…何て言うのかな。知り合いがね、彼の事凄く誉めてて。それなのに、この間の試合はベンチだったから」
初めましてした時は元気そうだったし、見た目の怪我とか無さそうだったから…。眉間に皺を寄せたアフロディくんに悪い気持ちにさせない様に一つ一つ言葉を選んで伝えれば、顎に手を当て考え事をしだしたアフロディくんにやっぱり聞かない方がよかったかなぁ。何て少し後悔。
「風隠くんは、それを知ってどうするんだい?」
「どうする、とは…」
「君にはどうする事も出来ない事かもしれないよ」
それでも、知りたい?真剣な眼差しで言われて、思わず退きそうになった体を踏ん張って立ち止まらせる。そして少し困った様に頬を掻きながら言葉を紡ぐ。
「…確かに、私には抱えきれない問題かもしれない。それこそ、簡単に踏み込んじゃいけないのかもしれない。でもね。それでも、知り合った人が悲しい顔してるのは嫌なんだ。この手が届く、その距離にいるのなら、私は手を伸ばしたい」
例えそれが、深い闇の先だったとしても。両手を横にピンッと伸ばして真っ直ぐ言えば、肩を竦めて溜息を吐かれた。
「君は、どうしてそこまでしようとするんだい?」
「もうダメだって思った時に大丈夫!て言って貰うとさ、無責任な!て思うけど、その後にもう少しだけ頑張ろうって思えるでしょ?」
噛み合わない会話をしてる訳ではないが、唐突にそう言えば首を傾げながらもそうだね。と同意をしてくれたのに私ね、と話を続ける。
「大丈夫、頑張れって言葉が、本当は嫌いだったの。頑張ってるのに頑張れって何?大丈夫って、貴方は私の何を知ってるの?て」
「…まるで天の邪鬼だね」
「あはは。そうだね、天の邪鬼だったのかも。…でもね、その嫌いな言葉を、一番使ってたのは自分だった。大丈夫、大丈夫。自分は強い、出来る子。やる時はやる子だから、大丈夫。今まで頑張ってきたでしょ。だから、私は、絶対大丈夫だよ…って何度も自分に言い聞かせる為に使ってた」
アフロディくんの少し向こうにある病室の窓から空を見上げれば、夕焼け空に星が瞬いてきたのに目を細めて笑う。
「軽い言葉じゃないって分かってる。使うのに勇気がいる事も。それでも、言ってくれた友達がいたんだ。お前が大丈夫って応援してくれるから、頑張れるって。…凄いよね。自分に使ってた言葉が、何時しか誰かの背中を押してたんだよ?」
そしたら、今まで悩んでた事に結論が出たんだ。視線をアフロディくんに向けてへらりと笑えば、アフロディくんは言いたい事が分かったのか優しく笑い返してくれた。
「一人で頑張って押し潰されそうなら、手を差し伸べたい。一緒に悩みたい。泣けないなら、泣ける場所になりたい。そして何より、みんなに笑っていて欲しい。だって折角、私と繋がってくれたから。何も出来ない辛さを知ってるから」
だから私は、無理だとしても手を伸ばしたい。真剣な眼差しで言えば、…君は凄いね。とアフロディくんは目を伏せながら言葉を溢した。
「僕が知る限りの事を、君に教えるよ」
君の想い、届くと良いね。そう言って笑ったアフロディくんは、雪吹くんの知る限りの事を話してくれた。
光明プリマステラ
(話を聞いて基地に戻れば)
(ヒロトくんがウルビダ、玲名と険悪な雰囲気で)
(ただの喧嘩なら良かったのにと少し泣きたくなった)
20181008