サニーデイ・ソング
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ふわぁ…。と欠伸をし、まだ眠いと訴える目を軽く擦る。登校時間にはまだ余裕だからとのんびり歩く。耳に繋がったイヤホンから流れる音楽を聴きながら、2度目の欠伸をしようと口元を両手で覆った所で後ろからポンポンと肩を叩かれた。
「?…あ」
「よ、」
振り返って肩を叩いた人物を見れば、風丸で。片手を軽くあげて、おはよ。と笑った。
「おはよ、風丸。珍しいね、登校中に会うの」
「確かにな」
横に並んだ風丸を合図に、イヤホンを耳から外して音楽を止める。我が雷門中は俗に云うマンモス校で、一学年だけでクラスが沢山ある。その為か出会った事のない同学年がいる、なんて事はざらじゃない。そしてそれは登下校でも同じ事が言えて、朝から風丸に会えた事に心の中で喜んでいるのは内緒だ。
「俺、1週間程部活休むよ」
校門を潜って下駄箱に着いた時、唐突に風丸がそう言った。驚いて持っていた上履きを落としたのは言うまでもない。突然だね。と散らばった上履きを揃え、履き替えながら聞けば助っ人頼まれてさ。と風丸は眉を下げた。
「助っ人?」
「ああ、サッカー部の」
「あ、確か風丸、幼なじみいるんだっけ?」
履き替えるのを待っていてくれる風丸の元へ向かい、隣に並ぶ。円堂って言うんだけどさ、一言で言ってサッカーバカなんだよ。何て目を輝かせて楽しそうに言うものだから、慌てて溢れそうになった言葉を飲み込む。
「帝国学園って、私でも知ってるよ。サッカー強いよね」
「ああ。で、そこと一週間後に練習試合なんだけど、人数足りないらしくてな」
「幼なじみのピンチかー」
「おい、茶化すなよ」
コツンと優しく頭を叩かれる。全然痛くないのに、痛い!なんて大袈裟に言えば悪い悪い。と風丸が笑った。
「この間試合も終わって、当分ないだろ?だから一週間程だけど、悪いな」
「ううん、了解した。…ただ、宮坂くんを宥めるの大変そう…」
そう言って遠い目をすればああ、確かに…。と一緒になって遠い目をする風丸に思わず笑みが溢れた。
「一週間なんてあっという間だろ。宮坂だって分かってくれるさ」
「そう、だね」
じゃ、宜しく頼むな!と朝会った時と同じ様に片手を軽くあげて自分のクラスに入っていった風丸を見届けて、自分もクラスに入ろうと足を進める。廊下に木漏れる日差しに何だか泣きたくなった。
さよならヒッツェシュライアー
(きっと、)
(君はもう陸上には戻ってこない)
(そんな気がするんだ)
20180705