黎明ファンファーレ
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「あ……」
夕陽に照らされた河川敷。光を反射する水面に眩しいなぁってちょっと頬を緩めた時に聞こえた私の名前に振り返れば。眉間に皺を寄せて笑った彼には覚えがあった。
「ヒロト、くん……?」
数年前の記憶は朧気で。しかも記憶の中では小さい男の子だった彼の名前を恐る恐る発せば、肩を竦めてうん、そうだよ。と頷いた。
「う、わぁあ…!久し振りだね!」
「そうだね」
「私が彼処を出てから会ってないから…」
「5年は経つよ」
「そんなにかぁ!」
パタパタと近寄って上がったテンションのまま言葉を続ければそれに答えて笑うヒロトくんに嬉しくなる。男子、三日会わざれば刮目して見よ。だっけか。数年ぶりに会ったヒロトくんは身長が伸びていて私は少し見上げる。
「そう言えばこの間、姉さんに会ったよ」
二人で来たの?話に花が咲きそうだと二人で近くの原っぱに座りながらそう聞けば違うけど、姉さんに会ったんだ。と返事を返された。
「?そうなんだ。でも、ヒロトくんに会えて良かったよ!」
「俺もだよ」
「本当?」
「ああ、詩音に会えて良かった。……ねえ、詩音」
「ん?」
声のトーンが変わったの不思議に思いながらヒロトくんの方を向けば、彼はとても真剣な顔で静かに口を開いた。
「俺と、俺達と……いや、何でもないよ」
「……本当に?」
ああ。これ以上詮索するなと言う様にニコリと笑ったのに、少し寂しさを感じる。それでもこれは、私が関わって良い問題ないのか、関わって欲しくない問題なのか分からず、ただ、……そっか。と返すしかなかった。
「この後どうする?何なら泊まっていく?」
気を取り直してそう聞けば、一瞬目を丸くしたヒロトくんは直ぐに目を伏せて肩を竦めながら、いや、止めとくよ。と笑った。
「帰り道、気を付けて」
「ヒロトくんもね」
「俺は大丈夫だよ」
「本当かなぁ?」
「心配性だな」
当たり前です。ズイッと顔を近づけて真剣な表情で言えば、変わらないなぁ。と可笑しそうに笑ったヒロトくんにつられて笑う。
「…それじゃあね。詩音、またね」
手を振り背中を向けたヒロトくんにまたね!と声をかけて私も帰路につこうと反対方向を向く。一歩踏み出そうとして、思う事があり、振り返って遠くなる背中に大声で叫ぶ。
「君が今!何をやろうとしてるかは知らないけれど!暗闇に押し潰されそうなら!私は絶対助けに行くからね!」
その為に陸上やってたんだから!何て付け加えてみれば、歩みを止めなかったヒロトくんは足を止め、振り返った。
「君は本当に、変わらないなぁ」
そう言って笑ったヒロトくんは、今日見た中で一番良い表情で綺麗に笑った。
夕星フーダルティフィス
(あの場所ではもう飛べないけれど)
(きっとまだ)
(私の翼は折れてない)
(そんな気がする)
20180818