黎明ファンファーレ
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「あれ、豪炎寺くん?」
フードを被り直そうとしていたのか、フードに手を掛けたその後ろ姿に覚えがあって思わず声をかければやっぱりそうで、振り返った豪炎寺くんは…風隠か。と静かに口を開いたのに少し違和感を覚えた。
「…何か、あった?」
何もなければそれでいいのだけど…。と言葉を続ければ、一瞬目を丸くし、そしてフッと笑う。
「何も。何もないさ」
「そう?」
「ああ」
ならいいのだけど…。釈然としないが、豪炎寺くんが話す気がないのならこれ以上詮索も出来ず。少しむくれていれば頭をポンポンと撫でられた。
「どうしたの?」
「…風隠、」
豪炎寺くんが喋りだしたその瞬間、一陣の風が周囲の音と私達の音をかき消した。風が吹き止むのと同時に豪炎寺くんも口を閉じる。そして、眉を下げて先程とは違った笑みを私に向けたのに思わず豪炎寺くんの手を強く握る。
「…大丈夫。上手くいくよ。だって皆は、豪炎寺くんは、強いもの!」
色々とね。と少しふざけて笑ってみれば、辛そうだった笑顔がいつもの笑顔に戻り、それはどういう意味だ?と返ってきた言葉に先程より元気に色々と!と笑い返す。そしてもう一度、大丈ー夫!と豪炎寺くんに笑いかける。
「分かれた道は、何時かちゃんと交わるものだから!」
君の信念を、私は応援してるよ!先程まで掴んでいた手を離し、今度は言葉と同時に背中を私の渾身の力で思いっきり叩く。そうすれば一瞬痛そうに顔を歪めたが、すぐにそうだな。と笑ったのにもう大丈夫だとこちらも笑顔になる。
「お前に大丈夫と言って貰うと、本当に大丈夫な気がするな」
「本当?」
「ああ」
鬼道ともそう話した事がある。と続けられた言葉に少し照れる。確か、宮坂くんにも同じ事を言われた事がある。
大丈夫。根拠もないこの言葉に私は何度も助けられてきた。自分を信じて、今までの全てを信じて。だからきっと大丈夫。そう信じていれば何でも出来そうな気がしたから。そういう私の気持ちが、皆にも伝わっているのだろうか。
「…それならうんと、私が何度も肯定してあげる!」
「それは有り難いな」
フフッと笑う豪炎寺くんに小さい声でありがとう。と呟いた。聞こえるかわからない程の音量だったのに、豪炎寺くんは何もしてないさ。とやっぱり笑った。
「…二人のお陰で少しだけ、私にも出来そうな事見つかりそうだよ」
「それは楽しみだな」
そう言って笑った豪炎寺くんは再びフードを深く被り直し、それじゃあな。と歩き出した。
「何時かまた!君のサッカーを見せてね!」
遠くなる背中にそう伝えれば、答える様に手を振る姿が見えなくなるまで見送った。
叢雲インターリュード
(俺の出した答えは正解だったのだろうか)
(そう言った豪炎寺くんは辛そうで)
(また皆と笑えます様に。と)
(果てない未来へ希望を祈る)
20180809