黎明ファンファーレ
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『ーー今日からここが、貴方の家よ』
そう言って私の手を引いたのは誰だっけ。
ドンッ!とベッドから落ちて意識が浮上した。数年前の記憶はもう朧気で。何だか懐かしいなぁ、と床に打ち付けた所を擦りながら思い出に浸りそうになった所でピタリと動きを止める。あれ、私お家にいる…?
「学校にいなかったっけ…」
電子時計に目を向ければ記憶の中の日付から一日経っていて。あれれ?と頭を抱えて昨日の記憶を辿る。
確か、放課後教室でサッカー部が優勝したと言う情報を得て、鬼道くんと豪炎寺くん、そして木野さんと音無さんにおめでとう。と各々にメールを送れば各々から感謝の言葉と鬼道くんからは追加でこれから帰るから風丸と話せ。という一言をもらい、帰る準備をして昇降口を出たら突然地響きが聞こえた。何事!?と辺りを見渡していれば今度はすぐ後ろから爆発音が聞こえて。振り返った先には先程までいた学校が無惨な光景になっており、頭上に落ちてきた瓦礫にあ、これ死ぬな。と冷静に死期を悟った。
「…あれ、そこから記憶が…」
何か、懐かしい声を聞いた筈なんだけど…。うーん、と腕を組んで考えるが思い出せないので、取り敢えず学校の状態が気になり、いつもの日課のジョギングをする道すがらに確認しに行こうとジャージに袖を通した。
「う、わぁ……」
家を出て数十分走れば見えてくる目的地の我が雷門中。正門まで走り、中を見れば記憶に新しい無惨な光景が広がっていた。朝早い時間もあって人一人いない学校にお邪魔しまーす…。と一言小さく呟いて中に入る。何処か無事な所はないかと歩き回れば突然現れた人影にぶつかり、わっ、と声をあげて尻餅をついてしまった。
「いててて…」
「ごめんなさいね、急いでたもので」
…あら?お尻を擦っていれば手を差し伸べられたのでその手を掴もうと伸ばした所で頭上からそう声が漏れたのに不思議に思って顔をあげれば。
「あ……瞳子姉さん!」
「やっぱり、詩音ね」
「そうだよ!」
手を握り返し、立ち上がらせてもらいながら久しぶりだね!と伝えればそうね。と笑う姉さんにこっちも嬉しくなって笑う。そうだ、今朝見た夢に出てきた人物は姉さんだ。私が見たのは予知夢だったのかもしれないと数年ぶりに会う姉さんにテンションが上がる。
「聞いたわよ。走幅跳び、凄いみたいね」
「あー……うん」
どうしてここに?と聞けば、ちょっとした用事でね。と言われ、何処に行きたいのかを聞いて久しぶりの姉さんと他愛ない話に始終ニコニコしていれば突然降ってきたその一言に少しだけ言葉が遅れてしまった。チラリと姉さんを見れば気づいていないのか、昔から貴方は、と続けられた言葉に小さくホッと息を吐いた。
「サッカーより純粋に走る事が好きだったものね」
「走る事は、お母さん達との大切な思い出だもん」
でも、サッカーも好きだよ!全然上手くならなかったけど。頭を掻いて笑えばそんな事ないわよ。と姉さんがまた笑ったのに、なら、一番になれる?強くなれる?風丸の、傍いれる?と口から出そうになるのを慌てて飲み込んだ。
「詩音、」
そうやって落ち着こうとしていれば突然名前を呼ばれ、顔をあげれば先程まで笑っていた姉さんの表情が険しくなった。どうしたの?と少し不安になって聞けば、…何でもないわ。と姉さんは目を伏せて静かに答えたのに首を傾げる。
「詩音、ここまででいいわ」
「え、そう?」
「ええ」
貴方に会えて良かったわ。そう言って笑った姉さんに私も。と笑い返す。また会える?と聞けば勿論と答えてくれた姉さんに元気よく手を振った。
刹那グリーンフラッシュ
(別れ際)
(何かを呟いた姉さんは)
(今にも泣きそうな表情をしていた)
20180803