サニーデイ・ソング
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雲一つない晴天を飛行機雲が二つに割った。照らされるグラウンドが光に反射して眩しい今日この日。1セット目のメニューが終わり、2セット目に向かう間のインターバルの休憩時間。10分程の休憩に水道で頭から水を被り、流れる汗を一緒に流す。その動作に気持ちー…。と思わず言葉が溢れた。
「…行きます!」
キュッと蛇口を閉め、滴る水を近くに置いておいたタオルで拭きながら声のした方へ体を向ける。これから自分の番だと主張する様にピンと伸ばされた手。軸足を確認して軽く小さく上に飛んで、トントントンと左右に4歩距離を測ってから真っ直ぐ走り出した人物は30m程全力疾走したかと思えば、地面に埋め込まれたラインぴったりに飛び、体を反らせ、少しでも前へと体を縮め、そして砂場へ着地した。
「っ!」
けれど体の踏ん張りが利かなかったのか、手を後ろについてしまい苦い顔をしたのを俺は見逃さなかった。
その後測定された飛距離を聞いてやっとインターバルに入ったのか水道へ向かって歩いてくる。
「惜しかったな」
「風丸。…うん、いけたと思ったんだけどねー」
眉を下げて笑いながら蛇口を捻り、両手で水を掬って顔を洗うように濡らしていく辺り男女の違いだなと横目で見ながら思う。
「お前、この後のメニューは?」
「クールダウン兼ねて外周10分走。で、そのまま短距離組に混じれって言われたー」
だからそっちのメニュー教えて。そう言いながら手探りでタオルを探すこいつに使っていたタオルを渡す。
「なら、俺も一緒に走る」
「風丸も?なんで?宮坂くんは?」
「何で其処で宮坂が出るんだよ…俺もクールダウンしろって言われたんだ」
「…変わらないね風丸」
「どういう意味だよ」
「そのままの意味だよ」
ありがとう。と言ってタオルを受け取り、顔を拭きながら他愛ない話をしていれば突然、というかさ、と少し声色が変わった。
「ん?」
「このタオル、風丸の、だよね」
「ああ」
「……」
「?」
…何でもない。そう言葉を続け、ボトルを手に取り日陰に移動する背中に何だよ!と投げてみても別にー。とはぐらかされた。
「外周だけど、本当に来るの?」
「なんだよ、悪いか」
「いや…そうじゃなくて、」
私と二人だよ?話を逸らされ振られた会話は元に戻って。そう言ったこいつは俺に背を向けて軽くストレッチをしている所為か表情がわからない。
「今更だな」
「まあ、そうなんだけどさ」
「俺がいいからいいんだよ」
「なにそれ」
クスクスと肩を震わせて笑っているのを背中越しに見て俺も静かに笑えば、顧問のいつまで休憩してるんだー!という大声に現実に戻された。
「あらら、休憩終わっちゃった」
「…そんじゃ、行くか」
「そうだね」
立ち上がって二、三回足首を回す。それから顧問に外周いってきます!と大声で伝えれば行ってこいと返事をもらった。
ふと空を見上げれば、先程まで伸びていた飛行機雲はなく、綺麗に晴れ渡る空に目を細めた。
清夏のコントレイル
(よーいどん!)
(おま、それは狡いだろ!)
(あはははは!)
20180703
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