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何処かの地方に沢山の資金を用いて作られた人工島、パシオ。其処には野生のポケモンはおらず、トレーナーが自分の手持ちから選んだ一番の相棒ポケモン一体と一緒にコンビを組み、トレーナーの頂点を目指す島。トレーナーであれば誰にでも招待状が届けられ、誰もが頂点を目指す。ポケモン至高なこの世界には突飛で面白い、トレーナー至高の島で、かく言う私もトレーナーの端くれな為、招待状を貰い、相棒と一緒にこの島へ足を踏み入れた。
「うわぁ……トレーナーが沢山いる…」
右を見ても左を見てもトレーナーばかりで感嘆の言葉が口から溢れた。ここにいる全トレーナーが高みを目指しているからか、皆殺気立っているのに思わず一歩引いてしまう。
私がここへ来た理由、それは゛トレーナー゛だからって言うのもあるけれど、それよりも何よりも。
「ここに行くからお前も来いって言われたんだよなぁ…」
それで来ちゃう私も私だけどさぁー…。誰に言うでもなく吐き出した言葉にはぁ…。と溜息も溢してとぼとぼと目的地を決めずに歩きだす。船着き場にいても何も始まらないしと歩きだしてみてはいいものの、何処に行ってもトレーナー、トレーナーで。この沢山のトレーナーの中から彼を探し出すって、結構無謀じゃない…?何て思ったら余計に足が重くなった。
「……やっぱり来るのやめればよかった…」
別に頂点を目指してるわけではないし。どちらかと言えば観光目的で来ている様なもんだし。しつこいトレーナーがいればバトルはやむを得ない。けれどそこまでた。態々パーティを組んでまで高みは目指してない。だから本当、いつ来てもよかったんだ。
「……はぁ…」
「そこの君、」
何度目かの溜息が出た所で誰かに声をかけられた。何ですか?と振り返れば白と黒の仮面をつけた5人程のトレーナーがニヤニヤと私を見ていて。何となくヤバい、と私の第六感が叫ぶ。逃げなきゃ、と来た道を戻ろうと鍔を返せば生い茂る木々にサァーッと血の気が引く。
「……」
「アハハッ!飛んで火に入る夏の虫ポケモン、とはこの事かね!自分から人気のない所に入っていくなんて!」
キャハハハッ!とバカ笑いを引っ提げて私を指差す仮面の女性トレーナーに思わず眉間に皺が寄る。弱そう!だとか痛い目みたくなければポケモンを置いていきな!だとか明らかに悪者です感が出ているトレーナー達のニヤニヤと笑いながら吐かれた言葉に、元々溜まっていたフラストレーションもあってかイラッと来た。
「…それ、バトルの申し出で、いいの?」
「はあ?」
何言ってんのコイツ?少しだけ落ちた声音で声をかけ直せば、先程まで愉快に笑っていた女性トレーナーの表情が無くなった。
「聞いてるの。バトル、するの?しないの?」
こてん。と首を傾げて再度聞けば5人は顔を見合わせ、そしてニヤリと笑う。
「…お望み通り、バトルしてあげる!その代わり、負けたらポケモンを置いていきなさい!」
アハハッ!と高笑いをする女性トレーナーにわかった。と言葉をかけ、腰のベルトについているモンスターボールを取ろうと手を動かした所で誰かに腕を引っ張られた。
「!?」
突然の事で抵抗も無駄に引っ張られた方へと体が傾く。倒れる…!と思って目を瞑れば、ぽすん、と誰かの胸へと背中からダイブしたみたいだ。
「……コイツに何の用だ」
「シルバーくん!」
誰だろう…、と思っていれば、聞こえた声は今正に私が探していた人で。顔を動かして彼の顔を見ればムスッとした顔をしているのに首を傾げる。
「どうしてここに?」
「…お前の事だからと探していた」
ポケギアはどうした?ギロリと向けられる視線にあははと笑う。そんな私に無言の圧をかけたシルバーくんに小さく、家です…。と呟けば盛大な溜息が聞こえた。
「…お前、博士泣くぞ」
「だ、だってシルバーくん、何時も傍にいてくれるから…!!」
ポケギア使わないんだもん…!わたわたと焦りながら言い訳を伝えれば一瞬目を丸くしたシルバーくんにそ、それより!と会話を変える為に話を振る。
「シルバーくん、あの…この腕は…?」
「……」
ポンポンと優しく私のお腹に回っているシルバーくんの腕を叩きながら聞けば、そっと回っていた腕にぎゅっと力が加えられてシルバーくんと更に密集する。肩越しにシルバーくんが顔を覗かせていたから、必然的に首元にシルバーくんの吐息がかかるし髪の毛がくすぐったい。
「ううっ…苦しい、くすぐったいっ!」
「…」
小刻みに肩を震わせれば、更にグリグリと擦れる髪の毛にひゃ、あ…!と変な声が出た。
「や、め……!」
左手で口を押さえ、右手でお腹に回るシルバーくんの腕を掴む。けれど、上手く力の入っていない私の手はシルバーくんの腕に触れるだけで。これ以上は無理…!と生理的な涙が溢れ落ちそうな時に目の前から聞こえた痺れを切らした声。
「ちょっとアンタ達!アタシ達を無視するんじゃない!」
「「あ」」
「ムッキー!ムカついた!二人纏めて相手してやるわ!」
かかってきなさい!地団駄を踏むトレーナーに二人して我に返る。頭の角度を変えて、だってさ、どうする?とシルバーくんに聞けばするり、とお腹に回っていた腕が離れた。突然の解放感と無くなった温もりに少しだけ、寂しくなったのは秘密だ。
「行くぞ」
「了解!」
腰に付いたモンスターボールを手に取り、二人同時に開閉ボタンを押す。
「行け!オーダイル!」
「ウェン、Ready GO!」
投げたボールは可愛い音を立てて開く。赤い光線がポケモンへと変わり、現れた相棒達はヤル気満々で殺気立っていて。トレーナー同士、ポケモン同士、睨み合ってスタートの合図を待つ。
サァア…と風が吹き抜け、木の葉が落ちたのが、その合図。皆が一斉に指示を出し、動き出す瞬間、ポツリと発せられた言葉にワンテンポ遅れた私は、抑えられないニヤケを連れて、バトルへ参加した。
20190915
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