天翔音姫
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「…たくっ、またこの三人で行動とはなぁ」
頭の後ろで両手を組んでそう呟いたトレーナー、ゴールドははーあ、と大きな溜息を吐いた。
「ちょっとゴールド!そんな事言ってないで足を動かしなさいよ!」
「んな事言ったってよー!」
目の前でぎゃあぎゃあ言い合いをしてる二人に気づかれないように静かに溜息を吐く。
事の発端は数日前に遡る。突然ポケギアに電話が掛かってきたと思ったらクリスで。何となく少し渋りながらも…どうした。と出れば、現在地を聞かれ、そして博士からの急用があって、丁度三人に会いたいと。だが3人とも研究所付近にはいない、という事で三人のいる場所の中間地点、コガネシティに来てくれという事で。厄介な…と思いつつも、クリスの圧もあり、仕方なしと言った様に頷き、そして今に至る。
「…にしてもよー、今回の゛頼み事゛少し変じゃねーか?」
そんなゴールドの声が聞こえて意識を飛ばしていた俺はハッと我に返った。そんな俺に気付いていない二人は確かに。と会話を続ける。
「この荷物を届けて欲しい……て言っておきながら、゛誰に゛かを教えてくれなかったものね」
「それだけじゃねー!荷物を届けたら、今度はそいつを゛守れ゛だぜ?怪しすぎねーか?」
「そうね…」
荷物の中身も、教えてくれなかったものね。そう言ったクリスは鞄から取り出した、厳重に保護されている荷物を持ち、シルバーもどう思う?と俺に話をふる。
「確かに人物像も、荷物の中身も教えないのは怪しすぎる。…だが、それ程その荷物を渡したい相手は重要人物なんじゃないのか?」
「…やっぱりそうよね…」
「けどよ、それでも特徴聞いたら゛会えば分かる゛だぜ?本当に分かるのかよ?」
その言葉に俺とクリスは歩みを止め、押し黙る。そんな俺達に気付いたゴールドがニカッと笑った。
「まっ、何とかなるかもしれねーよな!」
「また性懲りもなくそう言う事を言う…」
「悩んでたって始まんねーだろ?」
「それもそうだけど!」
そうしてまたぎゃあぎゃあと言い合う二人を眺めながら、何度目かの溜息を吐く。その直後、カタッと腰のベルトについたボールが1つ揺れた。何だ…?と思いながら揺れたボールを見れば、オーダイルがこちらを向いていて。
「……」
その視線の言わんとしてる事が何となく分かる。実の所、ウツギ博士の頼み事を聞いた時、何故か分からないが俺の頭を過った人物が1人居たからだ。過って直ぐに、そいつは違うと首を振った。彼奴の相棒であろう色違いのフライゴンを出したがらず、ポケモンを戦わせる事に何故か躊躇いのある、バトルのバの字も知らなそうな奴だ。瀕死の状態だったあのピカチュウを捕まえ、ピカチュウと楽しそうに笑って、そして死に弱い彼奴だ。守らなくてはいけない対象には違いはないだろうが、何となく、彼奴は違うと、巻き込んではいけないと俺の中の何かが警鐘を鳴らしてる。そんな事を考えている俺の相棒だ。きっと、俺と同じ人物を思い浮かべ、心配しているのだろう。
「…彼奴じゃない、絶対に」
そっとオーダイルのボールに触れて呟く。言葉にすれば、自分から発せられた声にも関わらず弱々しくて思わず笑った。
「……強くなろう、オーダイル」
そう思うのは何故か、分からないが。
カタリ。俺の言葉に呼応する様に、ボールが揺れた。
20190706