天翔音姫
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「ねーーーお願いだから機嫌直してよーーー!!」
頬を膨らませてプイッと顔を反らすブライトに両手を合わせて泣きそうになりながら謝るも無反応で。
「昨日迎えに行けなかったの謝るからー!!!好きなもの買ってあげるからー!!!」
そう言っても顔を向けてくれないブライトにそろそろ私の心が折れる。霞む視界にあ、そろそろヤバイ…。何て思ったのも束の間。
『ブライト、そろそろ許してあげよう?』
シエルだって仕方なかったんだからさ。ポンッと軽快な音を立てて現れたフライゴンは困った様に笑った。
『うー……分かってるよ。でもね!シエル一人に悲しい思いさせた僕が嫌でね…!』
『そうだね。確かにそこは俺も同じ意見だな。だからシエルも、余り一人で歩かないでね?俺達心配だから』
「ブライト……ウェン……!」
ありがとう!ぎゅっと2匹を抱き締めればブライトはえへへーと、そしてウェンは仕方ないなぁと笑う。
そう。お気付きかもしれないけれど、私の相棒はこの子、フライゴンのウェンだ。この子とはナックラーの時に出会ったんだけど、その話は長くなるので、いつか話す機会があればという事で。強いて言うならウェンは、色違いだ。この世界では『色違い』ってだけで好奇の目に触れる。ウェンはそんな事気にしないよ?何て言うけれど、私が嫌なんだ。色違いってだけで、フライゴンはフライゴンなのに。他の子達と何ら変わりないのに。……本当は、私だって自慢したいんだ。私の相棒は強いんだぞ!って。格好いいんだよ!って。それなのに、色物に扱われるウェンが見ていられなくて、表に出す事が出来なくなってしまった。ウェンには息苦しい生活をさせてるなぁって何時も後悔ばかりだ。
「本当ごめんね……ウェンもブライトも、本当はもっと、戦いたいよね……」
トレーナーが私でごめんね…。ポツリと呟いた弱音に、ブライトが腕の中でもぞもぞと動く。それに答える様に腕の力を緩め様と動こうとした瞬間、頭上から襟を掴まれポイッと投げられた。
「え、は……!?」
咄嗟の事に反応できず、されるがままに宙を舞えば、ぽすんっとウェンの背中に落ちる。
「ウ、ウェン……?」
『ちょっと散歩しようか』
ニコリと笑ったウェンが羽を羽ばたかせる。それを合図に、落とされない様にウェンにしがみついた。
『…シエル。俺ね、息苦しいなんて思ってないよ』
空高く飛び上がり、ゆっくりとしたペースで森を周回する。そよそよと頬を撫でる風が気持ちがいい。途中、ポッポやバタフリー達と出会っては少しお喋りしてまた風に身を任せるかの様にゆっくりと羽を羽ばたかせるウェンに楽しそう、何て思いながら笑っていればかけられた言葉。さっきの口に出してた…!?何て焦ってみれば、ウェンはクスリと笑った。
『何年一緒にいると思ってんの。シエル、すぐ顔に出るんだもんなぁ』
「え、嘘!?」
『本当だよー!だから僕達ね、シエルが大好きなんだよ!』
ウェンが空を飛んでから私の両腕の中で大人しくしていたブライトがニヒヒッと笑う。それに同意する様にウェンが俺達ね、と言葉を続けた。
『シエル、君の事が本当に大切なんだ。君以外のトレーナー何て考えられない程に。君には笑っていてほしい。傍にいてほしい。沢山の感情を共有させてほしい。君が傷付く顔は見たくないしさせたくない。もし君の事を誰かが傷付けたら、その時俺達は形振り構わず君を守る剣にも盾にもなれるんだ。……そう思うくらい俺達はね、シエル』
君が大好きで、大切なんだよ?ぽたり。頬を伝った涙がウェンの背中を濡らす。慌てて両手で涙を拭ってみるも、溢れる量が多すぎて拭いきれない。そんな私を見て、ふにゃっと笑ったブライトがぎゅっと私を抱き締めた。
『シエルは泣き虫だねー』
「これ、はっ…嬉、し泣き、だよ……!」
『ふふふ……そっかー!』
抱き付くブライトを更に抱き締める。溢れる涙を抑えないままウェンを見れば優しく微笑んでいて。
「……私、君達が大好きだよ。それこそ、ウェンとブライトがいない生活なんて考えられないくらい。ウェンが言ってくれた事、私も君達に言うよ」
感情を共有しよう?そう言って笑えば勿論!と元気な返事が返ってきた。その反応にもう一度笑って、でもね、と言葉を続ける。
「私の為に命を張らないで?自分の命を大切にして?君達の命は君達のモノだから、もっと自分の命を大切にしてほしい。そうじゃなきゃ、私はもっと泣いちゃうよ?」
ほんの少し、巫山戯た様に言えばウェンが目を伏せた。まるで、分かってる、もうしないから。って言うか様に。そんなウェンを見て困った様に笑ったのは私だ。
「……命あるものにはいつか必ず死が訪れる。その時まで私はね、皆と一緒に笑って、沢山楽しい思い出を作りたいな」
ダメかな?何て首を傾げて腕の中にいるブライトを見れば、キラキラと瞳を輝かせて笑っていた。
「(……ああ、私。今とっても幸せだ)」
嬉しそうに笑うブライトとウェンを見て心からそう思った。そして、そう思ったのと同時にあの時の記憶が蘇った。思わず首を左右に振って、その記憶を頭の中から消す。突然の行動にブライトがどうしたの?と首を傾げたのに、何でもないよ。と笑って誤魔化す。
そうして、幸せだと感じたこの気持ちを大切にしよう。そう思いながら晴れ渡る空を見上げた。
20190630