天翔音姫
夢小説設定
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「……あーもう!」
自分が嫌になる。あんな言い方がしたかった訳じゃない。寧ろ、彼とはもう少し仲良くなれればなー、何て思ってるのに。
「何でこう、なっちゃうんだろう…」
はぁっと深い溜息が溢れた。シルバーくんについてきて辿り着いたこの街は紅葉や街並みが綺麗で観光にはもってこいのエンジュシティなのに。鈴の塔とか、舞子さんとか、本当は観光したいのに今は観光なんて気分にすらなれないよ。
「……ん?」
人通りの多い道の少し先。脇道にそれる裏道から数人の人が現れたのが見えた。何だか少し口元が緩んでいて、不気味に思ったのをそのまま見なかった事にすれば良かったと後になって後悔した。
「う、そ……」
気になったからその人達がいなくなってから裏道に足を運んだ。キョロキョロと辺りを見渡して進めば行き止まりに差し掛かったその場所で、無惨にも傷つき、横たわるコラッタがいて。慌てて近寄り、呼吸の確認をするが時既に遅く。それを受け入れたくなくて傷薬をかけてみたり、撫でてみたりするもピクリとも動かないコラッタに涙が溢れた。
「……」
どれ程の時間が流れたのだろう。ポタリポタリと溢れていた雨の滴は勢いを増していて、気がつけば回りが見えないくらいの激しさになっていた。
「…動かなきゃ」
そっとコラッタを手のひらに乗せてこれ以上濡れない様に優しく抱き締める。そこから動こうと足に力をいれても力が入らず、その場から動けないのに下唇を深く噛んだ。
「…ここにいたのか」
突然頭上に影がかかるのと同時に降り続ける雨も遮られて。そして発せられた言葉には安堵の様な優しさが含まれていて。
「…な、んで……君が、私を見つけるかなぁ……」
シルバーくん。振り絞った言葉は震えていて。声の主の顔を見れば一瞬目を丸くし、同じ視線になる様にしゃがんだ。
「……帰ろう」
その一言に我慢していた涙腺は崩壊して。わんわん泣き出した私を戸惑いながらシルバーくんは優しく抱き締めてくれた。
20180917