泡沫パレット
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秋ちゃんに練習試合の観戦のお誘いを受けてから数日後。あっという間に練習試合のある土曜日になった。日時と場所が書かれたメールを見て溜息一つ。何でこう、秋ちゃんもマックスも練習試合を見に来いと言うのか。なんて、理由はわかってる。わかっているけれど、生憎私には近くで観戦する勇気もあの青髪の人に出会す勇気も持ち合わせておらず、グラウンド近くの大木の後ろに隠れて観戦していた。だって近くで見て見つけてしまったら、どういう反応したらいいのか分からないじゃん…!
なんて1人で百面相をしていればホイッスルが鳴った。試合が始まる。とりあえず今は何も考えずに観戦する事に集中しようと思って顔をあげれば、猛スピードでボールが相手ゴールに吸い込まれていった。
「わっ…!」
凄い!先制点をとった我が校サッカー部は其処から相手に一点も渡さず、二点、三点と点をとっていく。かの有名な鬼道くんや豪炎寺くんが相手陣地までボールを蹴りながら上がっていき、意図も簡単にゴールを決めたり、相手にボールを奪われたら奪い返したり、ゴールキーパーの円堂くんがゴール放ったらかしで相手陣地まで駆け上がってゴール決めたりと素人目にもわかる程凄い光景を見せられていて、思わず息を飲む。サッカーの試合は長い筈なのに、気がついたらあっという間に試合が終わっていた。
「……え……ねえ!ちょっと風隠、聞いてる?」
むにーっと頬をつねられて意識を現実に戻す。つねられた頬の痛みとつねっている相手を見ればマックスで。
「いひゃいいひゃい!ひょっとまっひゅす!」
「何いってるかわからないんだけど」
「にゃらひゃなしへひょ!」
目の前で爆笑してるマックスの手を力強く払えば冗談だよ冗談なんて言ってるマックスを無視してつねられた頬を擦る。赤くなってなければいいけれど。
「無視はひどくない?」
「マックスが悪い」
「ごめんって。…で、どうだった?」
降参とでも言うかの様に両手を挙げて聞くマックスに全く…と小さく呟いて答える。
「凄かった。基本何でもできるマックスがサッカーに熱中する理由がわかった気がしたよ」
「それはよかった。…キャプテン、円堂は面白いんだよ。だからサッカーやめられないなって」
「確かにっ。吃驚したよ。いきなりゴール放ったらかして相手陣地まで走り出すんだもん」
毎回そうなの?と聞けば笑いながら偶にね。なんて言うマックスに楽しそうだなって少しだけ羨ましく思ったり。そこからまた二人で駄弁っていたら今度は秋ちゃんが来た。
「どうだった?初めて試合見て」
「雷門サッカー部侮れないと思いました」
「なんだよそれ」
あはははと三人で笑う。こんなに凄い試合ならもっと早くに見に来ればよかった。と伝えれば今からでも間に合うよ。なんて笑って秋ちゃんが答えてくれて、それにそうだね。と私も笑った。
「…それで?例の男の子はここにいた?」
その言葉にピタリと笑うのをやめる。何を言い出すんだ秋ちゃん。なんて思いながら秋ちゃんを見れば、逆に見つめ返されてうっと半歩後退る。マックスもその質問僕もしたかったんだよねなんて呟くしで、逃げ道を塞がれてしまった。
「…う、」
「あの、」
うん、いたよ。意を決してそう続けようとした言葉は、後ろから聞こえた秋ちゃんでもマックスでもない他者の声に遮られた。
不透明サイダー
(初めまして)
(発せられた言葉に、)
(時間よ止まれと願う)
(臆病な私を許して下さい)
20140810 → 20180707 加筆、修正