泡沫パレット
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その絵を見つけたのは本当にたまたまだった。
お偉いさんが来ているからという理由で通れなくなった職員室前の廊下。そこを通れば科学室には一直線なのに今日と言う日は遠回りをしなくていけなくて。一つ上の階に上がって下がるか下の階に下がって上がるかの2択に何となく、本当に何となく、上の階に上がって降りて科学室へ向かおうと階段を上った。その時だった。
上がった先にある美術室の少し手前。そこにあるそれに思わず立ち止まった。
「……これ、」
その絵は河川敷が夕陽に染まっている絵で。とても優しい、淡いタッチで描かれたその絵は見ていてほうっと肩の力が抜ける様で。素直に「綺麗だ」と云う感想を述べようと口を開いた時、見つけてしまったんだ。
申し訳程度に描かれた夕陽に映える空色の髪を靡かせた人物が描かれているのを。
「…何で、」
どうして。ぐるぐると言葉が頭を埋め尽くす。
申し訳程度に描かれた『俺』は、淡く儚く、それでいて細かく描かれていて、それを眺めているとどうしようもなく泣きたくなった。
「……そっか」
目を閉じて深く息を吐く。ゆっくりと目を開けてもう一度絵を見る。
「…ありがとうな。…俺、頑張るよ」
そう呟いて絵に向かって微笑む。放課後、きっと毎日の努力も無意味に、円堂達に流石とか何とか言われてしまうのだろう。それも仕様がないと諦めていたけど、この絵がある。描いてくれた人が俺の頑張りを知ってくれてる。それだけで、大丈夫。
描かれたイノセンシア
(この絵を描いた人へ)
(ありがとう)
(もう少し頑張るよ)
(応援していてくれ)
20140222 → 20180624 加筆、修正