泡沫パレット
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振り向いた先、見つけたのはあの日、夕陽に映えた青髪だった。とてもきれいな青髪の彼。初めて会った。初めて声を聞いた。それなのに、どうして一目見ただけであの日の彼だと理解できたのだろう。
未だに固まっている私に、彼は照れながら静かに口を開いた。
「初めまして。風丸一郎太です」
お名前、聞いてもいいですか?そう言って一歩前に踏み出した為、近くなる距離。その距離さえももどかしくて、でもこれ以上は怖くて何も言えなくて。言わなくちゃ。喋らなきゃ。そう思っても口は動いてくれない。どうしよう、どうしよう。そう考えていたら突然、トンッと優しく背中を押された。
「…えっ?」
思わず一歩、前に出る。そうすれば彼との距離はあと半歩。後ろを振り返って背中を押した本人を見てもいいけれど、あの手は誰の手だかわかるから振り返らない。だって腐れ縁ですものね。わかってる。怖じ気づいた私に君は勇気をくれたんだよね。ありがとう。大丈夫だよ、ちゃんと頑張るよ。
「その、風隠詩音です。初めまして…」
俯いていた顔をあげる。そして自分の名前を言えば、青髪の彼、風丸くんはふわりと、とても優しく笑って手を差しのだした。
「やっと会えたな。ずっと会いたかったんだ。近くにいてくれてありがとう。…会えて良かった」
「…探して、たの?」
「ああ、あの絵を見てからな。ずっと。なあ、まずはさ、」
お友達から、お願いします。風丸くんから降り続く言葉に涙が溢れ、泣きながら頷いて風丸くんの手にそっと添える。そうすれば優しくぎゅっと握られた手は温かくて。泣くなよ。だって。そんな掛け合いをしながらも、握っていない方の手で優しく涙を拭ってくれる風丸くんにされるがまま。その後ろでマックスと秋ちゃんが優しく笑っていたのは、また別のお話で。
泡沫パレット
(あの日河川敷で見た時から、)
(あの日飾られた絵を見た時から、)
(一生懸命頑張る貴方に恋してた)
(顔も名前もわからない君に恋してた)
20140812 → 20180712 加筆、修正
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やっと二人が出会った所で完結です。
ですが二人の物語は続きます。ほんの少しだけその後のお話等も書かせていただきますので、まだまだお付き合いお願いします。