泡沫パレット
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その人の事を見つけたのは偶然だった。今度送るコンクールの絵をああでもないこうでもないと描いては消し、描いては消し、という事を何度も繰り返している内に最終下校時間を少し過ぎてしまい、夏未さんにお小言を言われた帰りで。河川敷から聞こえたボールを蹴る音に視線を向ければ、空色の髪を靡かせて、強い眼差しで一生懸命ボールを追っていた。その光景を見て、胸が締め付けられるように苦しくなった。ぎゅっと胸元を掴む。眉間に寄る皺と胸の痛さに思わず叫びそうで。
「…まだだ。このままじゃダメだ」
「っ」
足を止め、袖口で汗を拭ったその人は短くそう呟いて苦しそうに目を伏せたのに息を吸うことを止めてしまいそうになる。慌てて深く息を吐いてゆっくり吸った。そうやって何度か吐いて吸ってを繰り返している間にその人は気持ちを切り替えたのか、もう一度ボールを蹴り始めた。
「…損な人」
グラウンドを駆ける姿を見て思った言葉が口から溢れた。きっとこの人は、人知れず沢山の努力をしてきた人で、どんどん自分を追い詰めちゃう人なんだろう、と。それでいて心は繊細な人なんだろうと何となく思い、それはとても悲しく感じ、泣きそうになる。
「勝手な想像なのに、」
きっと明日にはこの人は、流石とかなんでもできるとか言われてしまうのかもしれない。そう思えば思うほど胸の痛みは更に悪化し、視界が歪む。
「私が泣く、のは、違うのかも、だけど…!」
今見たこの景色が、あの人の努力が、頑張りが、流されてしまわないように。
鞄をぎゅっと握って徐に走り出す。家について自分の部屋に駆け込み、キャンバスに向きあって深呼吸をひとつ。
「……よし」
脳裏に浮かぶあの光景を思い出して筆を執った。
夕焼けブルースカイ
(完成させた一枚の絵は)
(炭酸のように淡く儚くて)
(何故だか胸が痛くなった)
20140222 → 20180612 加筆、修正
「…まだだ。このままじゃダメだ」
「っ」
足を止め、袖口で汗を拭ったその人は短くそう呟いて苦しそうに目を伏せたのに息を吸うことを止めてしまいそうになる。慌てて深く息を吐いてゆっくり吸った。そうやって何度か吐いて吸ってを繰り返している間にその人は気持ちを切り替えたのか、もう一度ボールを蹴り始めた。
「…損な人」
グラウンドを駆ける姿を見て思った言葉が口から溢れた。きっとこの人は、人知れず沢山の努力をしてきた人で、どんどん自分を追い詰めちゃう人なんだろう、と。それでいて心は繊細な人なんだろうと何となく思い、それはとても悲しく感じ、泣きそうになる。
「勝手な想像なのに、」
きっと明日にはこの人は、流石とかなんでもできるとか言われてしまうのかもしれない。そう思えば思うほど胸の痛みは更に悪化し、視界が歪む。
「私が泣く、のは、違うのかも、だけど…!」
今見たこの景色が、あの人の努力が、頑張りが、流されてしまわないように。
鞄をぎゅっと握って徐に走り出す。家について自分の部屋に駆け込み、キャンバスに向きあって深呼吸をひとつ。
「……よし」
脳裏に浮かぶあの光景を思い出して筆を執った。
夕焼けブルースカイ
(完成させた一枚の絵は)
(炭酸のように淡く儚くて)
(何故だか胸が痛くなった)
20140222 → 20180612 加筆、修正
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