おまけ

彼の退場と同時に、室内には静寂が訪れてしまう。街のイベントを行う演説の時に見かけただけの相手…カナメは少し敵意を見せていた相手ではあったが、この国の賢者といきなり二人きりにされてしまうというのは……予想以上にプレッシャーを感じる。

「あの、えっと……」
とりあえず何か話そうと思い口を開いたのだが、フリージルの人差し指によって止められてしまった。そして彼はゆっくりとした口調で語り始めた

『エク君…だったわね。単刀直入に聞きたいのだけれど…「ちょっと待った!俺も先に聞いときたいんだ…大事な話だし」
『??;』
まさか彼の方から話を遮ってまで申し出てくるとは思わず…フリージルが身構えていると、エクが放ったのは意外な問いかけ

「フリージルって…なんて呼べばいいんだ?声は兄ちゃんっぽいけど見た目は姉ちゃんっぽいし…」
『………えっ』
真剣な表情でそんなくだらないことを言ってくるとは思っておらず…彼は拍子抜けしてしまい、苦笑いを浮かべていたがやがて彼はこう答えた

『オネェちゃんよ』

「!!!」
その言葉を聞いた途端。エクは目を輝かせ、尊敬の眼差しで彼を見つめる。 どうやら彼の目には、低い声で答えた時の姿がカッコよく見えたらしい
「ジルネェちゃんかっけぇぇえ!!ネェちゃんって賢者なんだよな!魔法も使えてこんな城に仕えてるんだろ!?すっげぇや」
まさかこんなにも食いついてくれるとは思わず…流石のフリージルも困惑していたが、それでもこんなにも自分を認めてくれるというのはなんだか悪い気はしない
『やぁね、そんなにすごい話じゃないわ?アタシが出来るのは精々この辺に防音魔法を使ったり、姿を変える事ぐらいよ?』
「それでもすげぇよ!俺なんか近くに口うるさくて怠惰で一言二言余計に言ってくるばあちゃんしか居ないんだぜー?あ、カナメって名前でさ、俺のご先祖とか言ってるんだけどジルネェちゃんみたいな品がなくてさー…」

 こちらが聞いていないにも関わらず、彼はこちらが聞きたかった情報を次々と暴露してくれるのだが…本当は騙すつもりで居ただけになんだが申し訳なくなってきた。

『い、いろいろ貴方も大変なのね…。少し用事を思い出したから一度席を外すわね』


そう言って彼は一旦席を外し、塔のはなれへと向かった
『あら、おかえりなさいフリージル。何か新しい情報でも得られたかしら?』
『それがね…マスター。彼は思っているよりもそんなに利用できる彼じゃなさそうよ!思っていたよりもこう…手駒にはしにくそうだし、マスターが思っているよりは利用価値的には難しそうよぉ?!ね、もう少し気が熟すまで待ちましょう?』
『はぁ?;貴方…本当に偵察に行ったの?それでその反応なら…カナメの子孫って相当なアレなのね… それならもう少し機会を待つ方がいいわね…』

(良かった…。マスターには悪いケド、彼は巻き込みたくないからちょっと話盛っちゃった)

『はぁ…今回こそはと思ってたのに残念ね…いつになったら機会は来るのかしら…』


ーおしまいー
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