おまけ

カナメが推測したとおり、今の彼女の様子を見ていても彼女は家族からの愛情で不自由な思いをしている…。

 そして恐らく無意識のうちにそれが当たり前なのだと思い始めているのかもしれないが、それと同時に自分を一人前として見て欲しいと願っていても…家族は、兄達は自分をいつまでも彼女を幼い頃の「妹」の姿でしか見てくれない、許してくれない事に苦悩しているのだと…。

一通り話を聞いていたエクは、しばらくして彼女に呼びかけた

「サン姉ちゃん!俺思ったんだけどさ、サン姉ちゃんイベント行きたいんだろ?じゃあさ、俺と一緒にこっそり行こう!んで、一緒に怒られようぜ!!」
「エク…っ!」
まさか彼が肯定してくれるとは思ってもいなかったので、サンは驚いた様子で目を見開いていたが、やがて嬉しそうに笑顔を綻ばせた
「うん…うんっ!!一緒に行こう!!」
(コイツ…意外と行動力だけはあるのじゃな…)
まさか彼がこんなふうに行動力を示すとは思ってもいなかったため、カナメは感心した様子で二人の様子を見つめていた

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【17ページサンの御霊流し辺り】

夕日が輝くいつも港町が広がる空間に来ても、エクは変わらず泣いていたが、蝶の姿を見つけると袖で涙を強く拭ってから優しく呼びかける。
 涙を堪えながら、自分の姿を思い出すように諭してやると蝶は彼の呼びかけに応えるように目の前まで移動すると、人の姿へと変化した。

「!!サン姉ちゃん…っ!」

夕日が輝くいつも港町が広がる空間に来ても、マチルダは相変わらず呆然と立ち尽くしたまま、動く素振りすら見せないので、業を煮やしたカナメが怒鳴りつける。
『貴様はいつまでそうやって使命を放棄するつもりじゃ!!さっさと準備せい!!』
 カナメの怒声に、マチルダは柄にもなく反論をしようと口を開きかけたのだが、今はこんな所で口論している場合では無いとぐっと言葉を飲み込んだ。

それから少しの沈黙が続いた後。周囲を見回して蝶を探していると、迷子の子供のように頼りなく彷徨う一匹の青い蝶を見つけたのでマチルダは優しく呼びかける。
 涙を堪えながら、自分の姿を思い出すように諭してやると蝶は彼の呼びかけに応えるように目の前まで移動すると、人の姿へと変化した。

「!!サン姉ちゃん…っ!」

彼女の姿が見えた途端。エクは堪らず彼女を抱きしめようとしたのだが…霊体となった彼女に触れられるわけもなく、その腕は空を切り、虚しくも宙を掴んだだけだった。

「………。ん、あれ?私は…。エク…と…え?どちら様?」

目覚めたばかりでまだ状況が掴めていないのだが、見知らぬ港町。そして初めて見る女性の姿にサンは混乱を深めていたが…エクは精一杯の笑顔を向ける
「サン姉ちゃん…。え、えっへへ。俺ってこのばあちゃんと案内人やっててさ、だから…俺、サン姉ちゃんが生まれ変わってもまた会えるように記憶も引き継ぐよ。忘れてても俺が覚えてるからさ!」
「エク…。そっか私……ごめんね。約束破っちゃって…。自分から言ったのに…」
自分の状態を思い出し、彼女は後悔した様子で涙を流していたが、エクは彼女の手を握り、記憶を引き継ぎながら彼女の口角を上げる仕草を見せる
「サン姉ちゃん、せっかくの旅立ちなんだから泣くなって。 俺、サン姉ちゃんの笑ってる顔好きだしさ」
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