エピローグ

少しうるんだ目で彼女を見つめていると、少し驚いた様子で声をかけられた。

「おはようエク。珍しいね 先に起きてるなんて」
「……あ!え、そうだろー!ついさっき目が覚めてさ!へっへーん♪俺って出来る子だからたまには一人で起きれたんだぜ!」

 彼自身の名前は【エク】なのだが…一瞬名前を呼ばれても自分と認識できず、少し返事が遅れてしまったが…幸い特に気にしていない様子だったので安堵していると、サンの後ろから黒いウサギのの耳を生やした金髪の女性、「シェリル」が元気いっぱいに顔を出し呼びかけてきた

「おはようエック~!今日は私とサンで起こしに来たんだよ~!!」
「シェリ…姉ちゃん……っ」

サンの姿の時は何とか堪えたつもりだったが…もう限界だった。自分でも分からないが、二人を見た途端に何故か様々な感情が勝手に込み上げてきてしまい、やがてそれは涙となって頬を濡らす。

「え?えっ?!!ちょ、ちょっとどうしたの?どこか具合悪い?!」
「えぇぇっ?!エックーどうしたの!?あっ…もしかして昨日、シーラかレーンに怒られちゃったとか…?」
 今までは遊びの流れで泣きマネをすることはあっても、彼が真剣な様子で涙を流すことは一度もなかった為。二人は何事か と口々に心配の言葉をかけてくれるのだが…それすらも何故か愛おしく感じられて余計に目頭が熱くなった。

「ち…違…うんだ…っなんか、急に…っ。サン姉ちゃんとシェリ姉ちゃんの顔見てたら…、すげぇ懐かしくって…。なんかずっと昔に別れたから…もう一度会いたかったとか、そんな気がしてさ…っ」
目元を擦りしゃくり上げながら答えると、二人は困ったように顔を見合わせていた。

「昨日も会ったばかりじゃない…」とサンには呆れられてしまったが、シェリルはくすくすと笑いだす
「あっはは!おかしなエックー。おやすみ中に夢でもみてたんじゃないの?ね、どんな夢?」
「それがさ…不思議なんだよ。場所も景色も全く違うし、知らない場所だけど…俺、普通に生活しててさ…いや、俺って言うより別の人だけどなんか他人には思えないし……
あ、でもなんか…すげぇ昔の出来事っぽかった!」

 どこから説明しようかと頭を悩ましながら話してみたものの…起きてしばらくの間はあんなにも鮮明に覚えていたはずなのに…今は何故か断片的にしか思い出せなかった。
しばらくはうーん…と考えてはみたのだが、これ以上悩むのは性に合わないや。と気持ちを素早く切り替えたエクは、スッと立ち上がるとその場で手早く普段着に着替えた。

「まぁ細かいこと考えてても仕方ねぇや!
さーってと!今日は城に遊びに行って、シーにぃとレーにぃに会いに行こうと。二人とも今日は休みだもんな!」
「うん、わたっしたちもたまには休んだら?って休暇もらったからね。…でもあの二人のことだから、多分今頃は水晶さんにでも鍛錬付き合ってもらってると思うけど」
サンの言葉を聞いて居ても立ってもいられず、エクはドタドタと玄関まで走っていくと二人の方へ元気よく呼びかける

「サン姉ちゃーん!シェリ姉ちゃーん!城に行くまで一緒に競争しよーぜー!!はい、よーいドン!」

二人の返事も待たずに一方的に誘って一方的に駆け出したが
「ひゃう♪私 負けないよ~!」
「あ!ちょっと待って二人ともーっ!」
少し出遅れて二人もエクの後を追って玄関へと向かい、先に走っていったエクの後を追ってシェリルが喜んで駆け出して行ってしまったので、サンは施錠を確認してから一足遅れて彼らの後を追った。
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