第四章
自分が捕縛されたせいで……二人を死なせてしまった。そう思うと胸の奥から悔しさと後悔が押し寄せてくる。
自分の力不足で仲間が再び殺されてしまった…長として助けてやることも庇うこともできず、守ってやれなかった。
その現実と無力さに唇を噛み締めながら拳を強く握りしめたところで、投げかけられる言葉は妹からの嘲笑の言葉だけだった
『あは…あっははは!!さすがはセド、まとめて始末するなんて凄い働きでしょう?!』
『く……っぅぅ…』
森の力が満ちていれば無傷ではないとしても退けることぐらいは出来たはずなのに…否。自分があの時、彼女の持つ狂気に気づいて“追放”という慈悲ではなく処刑という手段を選んでいればこのような犠牲は防げたかもしれないのに…!!
そう思うと悔しくて涙がとまらなった。長として仲間を守らなければならないのに、自分だけが生き残っていいはずがない。
『ぅ…っぁぁああっ!!!』
怒りに任せ水晶は残っている魔力を全力で暴走させると、衝撃によりリースが思わず拘束していた手を緩めた。僅かに生まれた隙を逃さず拘束から逃れると、地面に落ちていた矢を拾い魅禄へと弓を構えて狙いを定める。
しかし魅禄もそれは予想済みだったらしく、彼女が攻撃してくる前に短剣を投げ飛ばして弓を破壊すると、怯んだ所を狙って足払いを仕掛けてきた それに対応出来ず転倒してしまう。
すぐに起き上がろうとしたが、背中を踏みつけられ動けない状態だ。
そして彼女は足に力を込め容赦なく踏みつけてくる。
そのあまりの力強さに水晶の背骨が軋みミシミシと嫌な音を立てる 苦悶の表情を浮かべる彼女に魅禄は勝ち誇ったような笑みを浮かべた これでもう抵抗する手段は無いだろうと……
『ダメよぉ?お姉様。まだ大人しくしててくれなきゃ…お姉様にはこの森や仲間が無様に散ってく姿を見てほしいもの。あ、でもてん折角だから少し遊ぼうかしら?』
二人を仕留めたことで上機嫌になったセドは、その近くで腰を抜かし恐怖の表情で固まっているマチルダと目が合った。
彼は刀の切っ先をマチルダの喉元に向けると返り血で汚れた顔のまま口角を歪め笑みを浮かべる
「隊長サマはお前の事は別に斬らなくて良いとか言ってたけどよぉ…俺はそいつと違ってそういう趣味はねぇから……ついでだから斬らせてもらうわ」
「ひっ!?」
刀を突きつけられる恐怖でマチルダは引きつった悲鳴を上げてしまうが、それに気分をよくしたセドはますます笑みを深めた。そしてゆっくりとした動きで刀を振り上げたところで、焼けて支えを失った木が二人の方へ倒れ掛かってくる。
「うおっ!?」
直ぐに避けたおかげでセドに怪我はなく、マチルダも寸前の所でカナメが引っ張ったお陰で事なきを得た。 折角三人目を…と思っていたのに水を差され興が冷めたのか、彼は面白くなさそうな表情を浮かべ、倒れた木を睨みつけていた。
『童、今のうちに貴様はそこの隙間に隠れておれ。 どうやら奴らはワシの姿は見えておらんみたいじゃからな…せめてワシに出来る事をしてくる』
「…え?カナメ様…?」
マチルダの腕を掴みカナメは強めに引っ張って彼を木陰に隠すと、彼女は手早く辰冥と巳虚の側まで駆け寄りその身体に触れ、青白い蝶を呼び出す
(奴らは遺体すらも回収するとか言っておった…ならばせめて、後で二人の魂だけでも送ってやらねば)
少し離れたところでイザヨイやセドが会話している声が聞こえる中、カナメは手早く作業を終わらせるとマチルダのもとへ戻った。
一旦は避難しているといえ早く逃げなければならないと頭ではわかっているのに…自分の故郷が音を立てて破壊され、仲間も無惨に殺されていく。それらの光景に激しい怒りと悲しみからマチルダの呼びかけさえも無視し、その場に立ち尽くしたまま動こうとしなかった
肉体を放棄し、魂だけの存在となった自分に出来ることがこんなにも少ない…その事実が何よりも辛かった…。
『童……。指輪を捨てて貴様だけでも投降してこい。自分は四季族とは関係ない…そう証明できれば見逃されるじゃろ。指輪さえ捨てればもう貴様は自由に生きれるではないか』
「!カナメ…様?」
今までずっと彼女の都合で散々振り回してきたはずなのに…。急に突き放すような言い方をされ、マチルダは言葉を詰まらせる。 いきなり何を言っているんだ?と冗談にしては流石に笑えない
ましてや指輪を捨てるということはカナメを捨てることと同じことじゃないか…。しばらく沈黙の後、彼は口を開く
「……嫌です。」
『な!?何を馬鹿なことを言っておる!!こんな所で冗談を言っている場合ではないぞ!?童だけでも助かる方法をワシは考えてじゃな…』
確かにカナメが言っていることは正しいのだろうが、もし仮に指輪を放棄して仮に自分だけが助かったとしても…きっと一生後悔する気がした。
いつも肝心なところで逃げて…後になって後悔してばかりで…。
初対面だったのに自分を快く受け入れてくれた人たちが自分のせいで死んでしまったのに、自分はまた逃げる選択しかないのが嫌だった。
自分の力不足で仲間が再び殺されてしまった…長として助けてやることも庇うこともできず、守ってやれなかった。
その現実と無力さに唇を噛み締めながら拳を強く握りしめたところで、投げかけられる言葉は妹からの嘲笑の言葉だけだった
『あは…あっははは!!さすがはセド、まとめて始末するなんて凄い働きでしょう?!』
『く……っぅぅ…』
森の力が満ちていれば無傷ではないとしても退けることぐらいは出来たはずなのに…否。自分があの時、彼女の持つ狂気に気づいて“追放”という慈悲ではなく処刑という手段を選んでいればこのような犠牲は防げたかもしれないのに…!!
そう思うと悔しくて涙がとまらなった。長として仲間を守らなければならないのに、自分だけが生き残っていいはずがない。
『ぅ…っぁぁああっ!!!』
怒りに任せ水晶は残っている魔力を全力で暴走させると、衝撃によりリースが思わず拘束していた手を緩めた。僅かに生まれた隙を逃さず拘束から逃れると、地面に落ちていた矢を拾い魅禄へと弓を構えて狙いを定める。
しかし魅禄もそれは予想済みだったらしく、彼女が攻撃してくる前に短剣を投げ飛ばして弓を破壊すると、怯んだ所を狙って足払いを仕掛けてきた それに対応出来ず転倒してしまう。
すぐに起き上がろうとしたが、背中を踏みつけられ動けない状態だ。
そして彼女は足に力を込め容赦なく踏みつけてくる。
そのあまりの力強さに水晶の背骨が軋みミシミシと嫌な音を立てる 苦悶の表情を浮かべる彼女に魅禄は勝ち誇ったような笑みを浮かべた これでもう抵抗する手段は無いだろうと……
『ダメよぉ?お姉様。まだ大人しくしててくれなきゃ…お姉様にはこの森や仲間が無様に散ってく姿を見てほしいもの。あ、でもてん折角だから少し遊ぼうかしら?』
二人を仕留めたことで上機嫌になったセドは、その近くで腰を抜かし恐怖の表情で固まっているマチルダと目が合った。
彼は刀の切っ先をマチルダの喉元に向けると返り血で汚れた顔のまま口角を歪め笑みを浮かべる
「隊長サマはお前の事は別に斬らなくて良いとか言ってたけどよぉ…俺はそいつと違ってそういう趣味はねぇから……ついでだから斬らせてもらうわ」
「ひっ!?」
刀を突きつけられる恐怖でマチルダは引きつった悲鳴を上げてしまうが、それに気分をよくしたセドはますます笑みを深めた。そしてゆっくりとした動きで刀を振り上げたところで、焼けて支えを失った木が二人の方へ倒れ掛かってくる。
「うおっ!?」
直ぐに避けたおかげでセドに怪我はなく、マチルダも寸前の所でカナメが引っ張ったお陰で事なきを得た。 折角三人目を…と思っていたのに水を差され興が冷めたのか、彼は面白くなさそうな表情を浮かべ、倒れた木を睨みつけていた。
『童、今のうちに貴様はそこの隙間に隠れておれ。 どうやら奴らはワシの姿は見えておらんみたいじゃからな…せめてワシに出来る事をしてくる』
「…え?カナメ様…?」
マチルダの腕を掴みカナメは強めに引っ張って彼を木陰に隠すと、彼女は手早く辰冥と巳虚の側まで駆け寄りその身体に触れ、青白い蝶を呼び出す
(奴らは遺体すらも回収するとか言っておった…ならばせめて、後で二人の魂だけでも送ってやらねば)
少し離れたところでイザヨイやセドが会話している声が聞こえる中、カナメは手早く作業を終わらせるとマチルダのもとへ戻った。
一旦は避難しているといえ早く逃げなければならないと頭ではわかっているのに…自分の故郷が音を立てて破壊され、仲間も無惨に殺されていく。それらの光景に激しい怒りと悲しみからマチルダの呼びかけさえも無視し、その場に立ち尽くしたまま動こうとしなかった
肉体を放棄し、魂だけの存在となった自分に出来ることがこんなにも少ない…その事実が何よりも辛かった…。
『童……。指輪を捨てて貴様だけでも投降してこい。自分は四季族とは関係ない…そう証明できれば見逃されるじゃろ。指輪さえ捨てればもう貴様は自由に生きれるではないか』
「!カナメ…様?」
今までずっと彼女の都合で散々振り回してきたはずなのに…。急に突き放すような言い方をされ、マチルダは言葉を詰まらせる。 いきなり何を言っているんだ?と冗談にしては流石に笑えない
ましてや指輪を捨てるということはカナメを捨てることと同じことじゃないか…。しばらく沈黙の後、彼は口を開く
「……嫌です。」
『な!?何を馬鹿なことを言っておる!!こんな所で冗談を言っている場合ではないぞ!?童だけでも助かる方法をワシは考えてじゃな…』
確かにカナメが言っていることは正しいのだろうが、もし仮に指輪を放棄して仮に自分だけが助かったとしても…きっと一生後悔する気がした。
いつも肝心なところで逃げて…後になって後悔してばかりで…。
初対面だったのに自分を快く受け入れてくれた人たちが自分のせいで死んでしまったのに、自分はまた逃げる選択しかないのが嫌だった。
