第一章
王都にある教会も昔は四季族を崇め称える場所として建てられた場所ではあったのだが、例に漏れずこちらの施設も現在の国王陛下の命令によって四季族の信仰の一切を禁じられてしまい、新たな信仰対象として太陽と月を象徴する二対の女神が新しく祀られていた。
改革を強引に押し進められていた際。様々な国の文化を一気に取り入れていた時に東の島国より伝来した女神だと伝えられている
それに併せて内装も一掃されたらしいのだが…
その当時のマチルダは見習の子供だったので以前の姿は覚えていない。最初のころは民衆にも受け入れられず閑散としていたらしいが、時間の経過で今は信者も増えてきたらしく各所から祈りの声が聞こえてきた。
マチルダも空いている席に腰掛けると、両手を組んで目を瞑り黙とうを開始する。
(俺にできるのは御霊流しした魂が安らかに眠れるように祈るだけだ…)
自分がやっていることは所詮は自己満足でしか無いことぐらい解かっているし、安らかに眠ってほしいと祈る資格すらないのかもしれないが…こうやって祈ることで、自分の中にある罪悪感を軽くしたかった。祈る対象はこの際誰でもいい…誰でもいいから聞いて欲しかった
『あら?マチルダ君じゃない~また来たの?ほんっと相変わらず熱心な信仰心ね~』
しばらく黙禱していると、背後から茶化すような聞きなれた声で話しかけられたので振り返ると、黄褐色のセミロングの髪に橙の眼をしたシスターがくすくすと笑っていた。
彼女は「レルク」。まつげが長く大きく実った胸も含め顔も整って美人ではあるのだが…如何せん性格に難があるため。一部の男性信者からの人気は高い代わりに同性の信者や同僚からは嫉妬の対象になっているらしいのだが、本人は持ち前のメンタルもあってそれらに対し一切の興味が無い。というべきか寧ろ他人事として昇華しているのだった
「…今日も御霊流しをしていましたので…。いつものように、魂が安らかに眠れるようにと祈っていました…」
『ふぅん…真面目よねぇ。その愚直さがアンタのイイところなんだろうけど』
「……一族の決まりなので…」
『はいはいそーゆートコ!!アンタって素直じゃないわよね』
「………」
そう思うならなぜ毎回自分が祈っている時に限って絡んでくるのだろうか。と思ったが、下手に指摘したら余計に絡まれると悟ったので黙っていることにした 彼女の天真爛漫でやや強引な口調に対し苦手意識があるので早く興味が薄れて去って欲しいのが本音だった。
どうしたものか…と困っていると『レルク あまり茶化しては可哀想よ』と落ち着いた口調で彼女を諫めてくれたのは彼女と同じシスターの「セフィリア」
腰ぐらいまである橙色のストレートロングの髪。切れ長く赤い眼は、彼女の整った容姿を一層際立たせており、ミステリアスな雰囲気を出している彼女にも勿論男性信者からの人気があるのでここ最近は特に二人を目当てに教会へ足を運ぶ者が増えているように思える。
だがレルク同様にセフィリアも想いに応えるつもりはないらしく、玉砕した男たちは数知れないとか…
二人は数年前より流れるようにこの王都へ移り住んだのだが、身寄りもなく困っているときに、この教会を運営しているマザーに出会い、住み込みでシスターを始めた。と以前教えてくれたことがあった。
別にこちらから聞いた訳でもないのだが、特にレルクが何かと理由を付けては話しかけて来て、その時に何となくで教えてくれたのだが…
こうして絡まれていると、彼女たちを目当てに来ている男性信者からの視線が痛いので出来る事ならほっといてほしい…。とマチルダは少しうんざりしていた
『もぅセフィったら妬いてるの?大丈夫。アタシはセフィ一筋なんだから~♡』
『愚問ね。遊びと本命の区別ぐらい判るわ。何年貴女を見ていると思っているの?』
『キャー!もぅ!セフィったら~!堂々とノロケちゃうなんて素敵!愛してる!抱いて♡!』
声高らかにきゃあきゃあと喜びを露わにして熱烈なラブコールを送るレルクとは対照的に、セフィリアは至極落ち着いた表情のまま彼女の頬を撫でたりして軽く相手をしつつ『そろそろお祈りの時間よ。落ち着きなさいな』と諭したのだが…どうやら納得できないらしく、むぅ…と頬を膨らませむくれてしまった。
こうやって拗ねてしまっては中々に駄々をこねて動いてくれなくなるので、セフィリアはやれやれとため息を吐いた後。 彼女の耳元にそっと唇を寄せ『夜までガマンしなさいな。ちゃんと可愛がってあげるから…』と囁きそして頬に軽くキスをしてご機嫌を取るのだが、その光景を見ていたマチルダは誰にも聞こえないほど小さい声で「あぁ…うっとおしい…」と本音を吐露した。
改革を強引に押し進められていた際。様々な国の文化を一気に取り入れていた時に東の島国より伝来した女神だと伝えられている
それに併せて内装も一掃されたらしいのだが…
その当時のマチルダは見習の子供だったので以前の姿は覚えていない。最初のころは民衆にも受け入れられず閑散としていたらしいが、時間の経過で今は信者も増えてきたらしく各所から祈りの声が聞こえてきた。
マチルダも空いている席に腰掛けると、両手を組んで目を瞑り黙とうを開始する。
(俺にできるのは御霊流しした魂が安らかに眠れるように祈るだけだ…)
自分がやっていることは所詮は自己満足でしか無いことぐらい解かっているし、安らかに眠ってほしいと祈る資格すらないのかもしれないが…こうやって祈ることで、自分の中にある罪悪感を軽くしたかった。祈る対象はこの際誰でもいい…誰でもいいから聞いて欲しかった
『あら?マチルダ君じゃない~また来たの?ほんっと相変わらず熱心な信仰心ね~』
しばらく黙禱していると、背後から茶化すような聞きなれた声で話しかけられたので振り返ると、黄褐色のセミロングの髪に橙の眼をしたシスターがくすくすと笑っていた。
彼女は「レルク」。まつげが長く大きく実った胸も含め顔も整って美人ではあるのだが…如何せん性格に難があるため。一部の男性信者からの人気は高い代わりに同性の信者や同僚からは嫉妬の対象になっているらしいのだが、本人は持ち前のメンタルもあってそれらに対し一切の興味が無い。というべきか寧ろ他人事として昇華しているのだった
「…今日も御霊流しをしていましたので…。いつものように、魂が安らかに眠れるようにと祈っていました…」
『ふぅん…真面目よねぇ。その愚直さがアンタのイイところなんだろうけど』
「……一族の決まりなので…」
『はいはいそーゆートコ!!アンタって素直じゃないわよね』
「………」
そう思うならなぜ毎回自分が祈っている時に限って絡んでくるのだろうか。と思ったが、下手に指摘したら余計に絡まれると悟ったので黙っていることにした 彼女の天真爛漫でやや強引な口調に対し苦手意識があるので早く興味が薄れて去って欲しいのが本音だった。
どうしたものか…と困っていると『レルク あまり茶化しては可哀想よ』と落ち着いた口調で彼女を諫めてくれたのは彼女と同じシスターの「セフィリア」
腰ぐらいまである橙色のストレートロングの髪。切れ長く赤い眼は、彼女の整った容姿を一層際立たせており、ミステリアスな雰囲気を出している彼女にも勿論男性信者からの人気があるのでここ最近は特に二人を目当てに教会へ足を運ぶ者が増えているように思える。
だがレルク同様にセフィリアも想いに応えるつもりはないらしく、玉砕した男たちは数知れないとか…
二人は数年前より流れるようにこの王都へ移り住んだのだが、身寄りもなく困っているときに、この教会を運営しているマザーに出会い、住み込みでシスターを始めた。と以前教えてくれたことがあった。
別にこちらから聞いた訳でもないのだが、特にレルクが何かと理由を付けては話しかけて来て、その時に何となくで教えてくれたのだが…
こうして絡まれていると、彼女たちを目当てに来ている男性信者からの視線が痛いので出来る事ならほっといてほしい…。とマチルダは少しうんざりしていた
『もぅセフィったら妬いてるの?大丈夫。アタシはセフィ一筋なんだから~♡』
『愚問ね。遊びと本命の区別ぐらい判るわ。何年貴女を見ていると思っているの?』
『キャー!もぅ!セフィったら~!堂々とノロケちゃうなんて素敵!愛してる!抱いて♡!』
声高らかにきゃあきゃあと喜びを露わにして熱烈なラブコールを送るレルクとは対照的に、セフィリアは至極落ち着いた表情のまま彼女の頬を撫でたりして軽く相手をしつつ『そろそろお祈りの時間よ。落ち着きなさいな』と諭したのだが…どうやら納得できないらしく、むぅ…と頬を膨らませむくれてしまった。
こうやって拗ねてしまっては中々に駄々をこねて動いてくれなくなるので、セフィリアはやれやれとため息を吐いた後。 彼女の耳元にそっと唇を寄せ『夜までガマンしなさいな。ちゃんと可愛がってあげるから…』と囁きそして頬に軽くキスをしてご機嫌を取るのだが、その光景を見ていたマチルダは誰にも聞こえないほど小さい声で「あぁ…うっとおしい…」と本音を吐露した。
