第四章
彼女の姿を視認したと途端。水晶の表情に焦りと困惑、そして動揺の色が見えたがその身に纏う空気はすぐさま殺気を帯びたモノへと変化した。
『なぜ……っ何故じゃ…っ!何故お主がここにいるのだっ!!』
『うっふふふ~お久しぶり。最愛のお姉様と…その他大勢さん♡』
『質問に答えろっ!!貴様…一体どうやってここまで来たというのだ!?』
怒号を放つ水晶に対し、魅禄は眼中に無いといった様子で涼しい表情で服の裾をつまんで皆に向けて優雅にお辞儀をしてみせる。
森から追放したはずの彼女が生きていた事自体驚きであったが、それよりも四季の森の門には強固な封印が施されていた筈だ。勿論中に入った後も直ぐに閉じられるようになっている。……マチルダやカナメが来た後も彼らに不審な動きは無かった…
だが森の異変についてはどう説明する?まるで四季の森全体が深い眠りについているかのように静かなのだ。故に自衛することも出来ず、彼女を通してしまったと言えば辻褄は合う。だがそれでも…納得が出来ない点がいくつもある
『ふふふっねぇ知りたい?知りたいでしょ?何故私が森に入ってこられたのか』
必死に考えを巡らせている水晶の思考を読んだかのように、魅禄はわざとらしく問いかける。彼女は怒りを堪えながら無言のまま小さく顎を引くと彼女は得意げに笑いながら辰冥の方を指さした
『ねぇ、世話好きおじいさん。背後に隠してる人の子を出して下さる?私…彼に伝えなきゃいけない話があるの。 それも…とーっても大事なハ・ナ・シ♡』
魅禄の言葉に辰冥は半歩引きながらも服の袖で一層二人を庇う姿勢を見せたが、その隙間からマチルダがおそるおそる顔を出すと彼女は嬉しそうにキャッと歓喜の声を上げながら改めてマチルダの方を指さした。
『私が来られたのは…そこにいる彼のお・か・げ♡彼ってばすっごく素直で信じやすくて…とーっても愚かなのよ?………。ふふふ…あっはははは!!!なぁにその顔!さいっこうにマヌケなんですけどぉ!!あは…っもう本当に傑作!それだけ私の日頃の行いが良いという事ね♪ 四季族もお姉様が長になってから落ちぶれちゃったわねぇ』
ケラケラと声をあげて笑う魅禄の言葉を遮るように水晶が『貴様!戯言を言うでないっ!!』と怒鳴り声を上げるも、彼女はそんな事で怯むことも無く楽しげに目を細めながら水晶に視線を向けた。
『ふふふっ。お姉様ったら本当に世間知らずねぇ……で・も。私が言ってることは本当なのよぉ? ねぇ、マチルダくん。コイツに見覚えあるでしょう?』
そう言いながら魅禄は肩に乗っていたオウムを指差すのだが、彼自身そんな鳥に見覚えもなかったので首を横に振って 知らない。と否定したのだが…『じゃあこれでも?』と告げて彼女がオウムに向けて息を吹き掛けると、その姿はたちまちフリージルの姿へと変わった。
『呼ばれて使われ大変身〜♡王都の賢者様。フリージル参上』
『っ!!?そ、その人は…っ!!』
彼の姿を見た途端。マチルダは動揺して思わず声を出してしまった。動悸が激しく呼吸もそれに応じて荒くなる…一体何がどうなっているんだ?と彼は頭の中で状況を整理しようとしたが混乱して上手く考えることが出来ずにいた。
一方で突然現れたフリージルに、水晶と撫子は警戒を強めて攻撃態勢に入りながら睨みつけると、魅禄はマチルダの方を見ながらにこやかに笑いかけた。
『それじゃあ改めて。理解の追いついてないマチルダくんの為に自己紹介でもしましょうか、うふふっ、騙してごめんなさいね?フリージルからは色々言われたと思うけど、貴方に教えてあげたお話はぜーんぶこのおしゃべりオウムが賢者のフリをして騙っただけなの。
本当は私が魅禄。そこにいる水晶の実妹…』
彼女の言葉を聞いてマチルダは愕然とした。先程までは何とか堪えていたが……その目元が熱くなり視界が滲む……。
自分は只フリージルの言葉を信じただけで…彼は自分を四季族と言っていたから、それを信じて託された合図を送っただけなのに…なのに。それさえも全て嘘だったと言うのか……?!
自分が騙されたせいで…取り返しのつかない大きな過ちをしてしまった……っ!!
マチルダの顔は一瞬にして絶望に染まると身体は小刻みに震え、瞳からはボロボロと涙が零れ落ちる。その反応を見てカナメは声を張り上げる
『童っ!!奴の言葉は本当なのか!?何か知っておるなら答えろっ!』
カナメの怒号にビクッと身体を震わせたが、マチルダは何も言わずにただ黙って俯くだけだった。そんな彼にカナメは舌打ちすると、水晶も苦々しい表情で視線だけをマチルダに向ける
『……っ。私はそなたを疑いたくはない…。魅禄の言っている事が嘘だと言って欲しい…』
水晶とカナメに問い詰められ、マチルダは必死に言葉を絞り出そうとするも……唇は戦慄き、嗚咽が漏れるばかりであった。
彼らに嘘は吐きたくない。それは本心ではあるのだが…それでも自分の口から真実を喋るのは……どうしても出来なかった……
何故なら……真実を口にする事は、自分自身が今まで信じていたものが根底から崩れてしまうのと同じ事であるから……それが分かってしまうから……
『なぜ……っ何故じゃ…っ!何故お主がここにいるのだっ!!』
『うっふふふ~お久しぶり。最愛のお姉様と…その他大勢さん♡』
『質問に答えろっ!!貴様…一体どうやってここまで来たというのだ!?』
怒号を放つ水晶に対し、魅禄は眼中に無いといった様子で涼しい表情で服の裾をつまんで皆に向けて優雅にお辞儀をしてみせる。
森から追放したはずの彼女が生きていた事自体驚きであったが、それよりも四季の森の門には強固な封印が施されていた筈だ。勿論中に入った後も直ぐに閉じられるようになっている。……マチルダやカナメが来た後も彼らに不審な動きは無かった…
だが森の異変についてはどう説明する?まるで四季の森全体が深い眠りについているかのように静かなのだ。故に自衛することも出来ず、彼女を通してしまったと言えば辻褄は合う。だがそれでも…納得が出来ない点がいくつもある
『ふふふっねぇ知りたい?知りたいでしょ?何故私が森に入ってこられたのか』
必死に考えを巡らせている水晶の思考を読んだかのように、魅禄はわざとらしく問いかける。彼女は怒りを堪えながら無言のまま小さく顎を引くと彼女は得意げに笑いながら辰冥の方を指さした
『ねぇ、世話好きおじいさん。背後に隠してる人の子を出して下さる?私…彼に伝えなきゃいけない話があるの。 それも…とーっても大事なハ・ナ・シ♡』
魅禄の言葉に辰冥は半歩引きながらも服の袖で一層二人を庇う姿勢を見せたが、その隙間からマチルダがおそるおそる顔を出すと彼女は嬉しそうにキャッと歓喜の声を上げながら改めてマチルダの方を指さした。
『私が来られたのは…そこにいる彼のお・か・げ♡彼ってばすっごく素直で信じやすくて…とーっても愚かなのよ?………。ふふふ…あっはははは!!!なぁにその顔!さいっこうにマヌケなんですけどぉ!!あは…っもう本当に傑作!それだけ私の日頃の行いが良いという事ね♪ 四季族もお姉様が長になってから落ちぶれちゃったわねぇ』
ケラケラと声をあげて笑う魅禄の言葉を遮るように水晶が『貴様!戯言を言うでないっ!!』と怒鳴り声を上げるも、彼女はそんな事で怯むことも無く楽しげに目を細めながら水晶に視線を向けた。
『ふふふっ。お姉様ったら本当に世間知らずねぇ……で・も。私が言ってることは本当なのよぉ? ねぇ、マチルダくん。コイツに見覚えあるでしょう?』
そう言いながら魅禄は肩に乗っていたオウムを指差すのだが、彼自身そんな鳥に見覚えもなかったので首を横に振って 知らない。と否定したのだが…『じゃあこれでも?』と告げて彼女がオウムに向けて息を吹き掛けると、その姿はたちまちフリージルの姿へと変わった。
『呼ばれて使われ大変身〜♡王都の賢者様。フリージル参上』
『っ!!?そ、その人は…っ!!』
彼の姿を見た途端。マチルダは動揺して思わず声を出してしまった。動悸が激しく呼吸もそれに応じて荒くなる…一体何がどうなっているんだ?と彼は頭の中で状況を整理しようとしたが混乱して上手く考えることが出来ずにいた。
一方で突然現れたフリージルに、水晶と撫子は警戒を強めて攻撃態勢に入りながら睨みつけると、魅禄はマチルダの方を見ながらにこやかに笑いかけた。
『それじゃあ改めて。理解の追いついてないマチルダくんの為に自己紹介でもしましょうか、うふふっ、騙してごめんなさいね?フリージルからは色々言われたと思うけど、貴方に教えてあげたお話はぜーんぶこのおしゃべりオウムが賢者のフリをして騙っただけなの。
本当は私が魅禄。そこにいる水晶の実妹…』
彼女の言葉を聞いてマチルダは愕然とした。先程までは何とか堪えていたが……その目元が熱くなり視界が滲む……。
自分は只フリージルの言葉を信じただけで…彼は自分を四季族と言っていたから、それを信じて託された合図を送っただけなのに…なのに。それさえも全て嘘だったと言うのか……?!
自分が騙されたせいで…取り返しのつかない大きな過ちをしてしまった……っ!!
マチルダの顔は一瞬にして絶望に染まると身体は小刻みに震え、瞳からはボロボロと涙が零れ落ちる。その反応を見てカナメは声を張り上げる
『童っ!!奴の言葉は本当なのか!?何か知っておるなら答えろっ!』
カナメの怒号にビクッと身体を震わせたが、マチルダは何も言わずにただ黙って俯くだけだった。そんな彼にカナメは舌打ちすると、水晶も苦々しい表情で視線だけをマチルダに向ける
『……っ。私はそなたを疑いたくはない…。魅禄の言っている事が嘘だと言って欲しい…』
水晶とカナメに問い詰められ、マチルダは必死に言葉を絞り出そうとするも……唇は戦慄き、嗚咽が漏れるばかりであった。
彼らに嘘は吐きたくない。それは本心ではあるのだが…それでも自分の口から真実を喋るのは……どうしても出来なかった……
何故なら……真実を口にする事は、自分自身が今まで信じていたものが根底から崩れてしまうのと同じ事であるから……それが分かってしまうから……
