第四章
一方マチルダたちの方はというと、四季族のみんなと交流を始めてから数時間程経過していた。
その間マチルダは男性陣からのリクエストもあって王都や自分の生業など、外の世界に関してのことを話していた。
そんなにも楽しいものではないと思うのだが…刹羅や辰冥も静かに聞いてくれているし、何なら巳虚に至ってはマチルダの隣に大人しく座ったまま離れようとせず、終始ニコニコとしながら聞いてくれていた。
(こんな俺にも純粋になついてくれるのは嬉しいなぁ…慣れてないから扱いに悩むし照れるけど)
こんな時シーラやレーンといった兄貴分の二人だったらもっと上手に小さな子供の相手も出来るんだろうなぁ…と考えていたが、適度に二人も会話に参加してくれるおかげで和やかに過ごせていた
『まちるだくんの外のセカイのおはなし、おもしろいね』
巳虚が足をパタパタさせたながらそう言ってくれたので、こちらもつられて表情が緩み笑顔…になったと思う。元々感情表現が乏しいのは自覚しているので、上手く表情が作れたのか不安があったが、巳虚の方は気にせず喜んでくれているようだったので安心した。
カナメの方も懐かしさから女性陣との会話に花が咲いてしまい、ここに来ることになった本来の目的を忘れ完全に脱線してしまっていたが…ある程度マチルダが慣れてきた頃合いを見て、最年長である撫子が『ところでカナメ…』と疑問を口にしたことにより、ようやく本題に入ることとなった。
『自由奔放で外の世界が見たいと飛び出して以降。一度も帰って来ず便りも何も送ってこなかった貴女が、わざわざ子孫自慢の交流会を開くためだけに帰ってくるとは考えにくいのだけど…貴方の目的は?』
優しい笑みとは裏腹に、撫子の発言には有無を言わせぬ威圧感を放っておりマチルダの全身にぞわっとした悪寒が走る。感じたことのない恐怖から委縮してしまい、挙動不審になってしまっていた彼を見かねて辰冥が彼を庇うようにそっと前へ出てくれた。
『撫子殿、いくらお転婆なカナメの子孫相手といえ、彼はまだ幼子。少し配慮をすべきでは?』
(お…幼子!?俺一応成人してるのに……)
『あら?これでも優しくしているつもりよ?辰冥こそ、幼子と知れば誰に対してもすぐ甘やかそうとするのだから…』
二人にしれっと【幼子】と言われてしまい、その言葉が何気に衝撃だったこともありしばらく思考が停止していたが、確かに冷静になって考えてみれば、自分の外見はともかく彼らの視点から見るとこちらの年齢というのは殆どが“幼い”という認識なのだろうが…それにしてもなんというか複雑かつ悲しい気分になるのは何故だろうか…
静かに俯きながら密かに傷ついていると、状況があまり理解していない巳虚に頭を撫でられ慰められた。 余計に複雑な気分になったのだが、こんな時こそカナメが間に入ってくれたら早いのだが…『まだワシの出番じゃないぞ』と言わんばかりに撫子の言葉をスルーして紅茶を飲んでいた。
一応ヘルプの視線を送ってみたのだが…完全にこっちには気づいていない様子だったので、どう考えても彼女からのフォローは期待できそうにない…。彼女の威圧で既に戦意喪失はしているのだが、それでもここは自分の言葉で説明する方が良いと思い何とか声を絞り出す
「…お、俺は…以前にカナメ様が引き継いできた記憶の倉庫に招かれた時の話になるのですが、祖父やその前の代の方が受け継いできた記憶の中に、四季族の皆様との営みをたくさん読ませていただきました。
その中で昔、水鏡を使って占いをされていた内容を読んで……最初は、当時の人々が何故こぞって自分の死期…未来を占って答えを求めるのかが不思議でした。占いで出てしまった結末を変えることは出来ないのに…
ですがここ最近で俺にとって大事な人が亡くなって……そして自分が彼女に対してたくさん伝えたい思いがあったのに…「まだ大丈夫」って勝手に思って結局何も行動ができなかったことをひどく後悔して…。
その時の状況と重ねた時に、当時の人々が死期を占う理由を理解しました。 きっと後悔したくなかったんだ…と
そのことをカナメ様に伝えた時に、先代の…祖父が自分のために別の道を選べる選択肢を与えてようとしてくれていた事を知り、その思いも無駄にしたくないので俺の未来を占ってほしくてカナメ様に連れられてここに来させていただきました…」
最後の方は拳を握りしめたまま必死に言葉を絞り出した。
その間マチルダは男性陣からのリクエストもあって王都や自分の生業など、外の世界に関してのことを話していた。
そんなにも楽しいものではないと思うのだが…刹羅や辰冥も静かに聞いてくれているし、何なら巳虚に至ってはマチルダの隣に大人しく座ったまま離れようとせず、終始ニコニコとしながら聞いてくれていた。
(こんな俺にも純粋になついてくれるのは嬉しいなぁ…慣れてないから扱いに悩むし照れるけど)
こんな時シーラやレーンといった兄貴分の二人だったらもっと上手に小さな子供の相手も出来るんだろうなぁ…と考えていたが、適度に二人も会話に参加してくれるおかげで和やかに過ごせていた
『まちるだくんの外のセカイのおはなし、おもしろいね』
巳虚が足をパタパタさせたながらそう言ってくれたので、こちらもつられて表情が緩み笑顔…になったと思う。元々感情表現が乏しいのは自覚しているので、上手く表情が作れたのか不安があったが、巳虚の方は気にせず喜んでくれているようだったので安心した。
カナメの方も懐かしさから女性陣との会話に花が咲いてしまい、ここに来ることになった本来の目的を忘れ完全に脱線してしまっていたが…ある程度マチルダが慣れてきた頃合いを見て、最年長である撫子が『ところでカナメ…』と疑問を口にしたことにより、ようやく本題に入ることとなった。
『自由奔放で外の世界が見たいと飛び出して以降。一度も帰って来ず便りも何も送ってこなかった貴女が、わざわざ子孫自慢の交流会を開くためだけに帰ってくるとは考えにくいのだけど…貴方の目的は?』
優しい笑みとは裏腹に、撫子の発言には有無を言わせぬ威圧感を放っておりマチルダの全身にぞわっとした悪寒が走る。感じたことのない恐怖から委縮してしまい、挙動不審になってしまっていた彼を見かねて辰冥が彼を庇うようにそっと前へ出てくれた。
『撫子殿、いくらお転婆なカナメの子孫相手といえ、彼はまだ幼子。少し配慮をすべきでは?』
(お…幼子!?俺一応成人してるのに……)
『あら?これでも優しくしているつもりよ?辰冥こそ、幼子と知れば誰に対してもすぐ甘やかそうとするのだから…』
二人にしれっと【幼子】と言われてしまい、その言葉が何気に衝撃だったこともありしばらく思考が停止していたが、確かに冷静になって考えてみれば、自分の外見はともかく彼らの視点から見るとこちらの年齢というのは殆どが“幼い”という認識なのだろうが…それにしてもなんというか複雑かつ悲しい気分になるのは何故だろうか…
静かに俯きながら密かに傷ついていると、状況があまり理解していない巳虚に頭を撫でられ慰められた。 余計に複雑な気分になったのだが、こんな時こそカナメが間に入ってくれたら早いのだが…『まだワシの出番じゃないぞ』と言わんばかりに撫子の言葉をスルーして紅茶を飲んでいた。
一応ヘルプの視線を送ってみたのだが…完全にこっちには気づいていない様子だったので、どう考えても彼女からのフォローは期待できそうにない…。彼女の威圧で既に戦意喪失はしているのだが、それでもここは自分の言葉で説明する方が良いと思い何とか声を絞り出す
「…お、俺は…以前にカナメ様が引き継いできた記憶の倉庫に招かれた時の話になるのですが、祖父やその前の代の方が受け継いできた記憶の中に、四季族の皆様との営みをたくさん読ませていただきました。
その中で昔、水鏡を使って占いをされていた内容を読んで……最初は、当時の人々が何故こぞって自分の死期…未来を占って答えを求めるのかが不思議でした。占いで出てしまった結末を変えることは出来ないのに…
ですがここ最近で俺にとって大事な人が亡くなって……そして自分が彼女に対してたくさん伝えたい思いがあったのに…「まだ大丈夫」って勝手に思って結局何も行動ができなかったことをひどく後悔して…。
その時の状況と重ねた時に、当時の人々が死期を占う理由を理解しました。 きっと後悔したくなかったんだ…と
そのことをカナメ様に伝えた時に、先代の…祖父が自分のために別の道を選べる選択肢を与えてようとしてくれていた事を知り、その思いも無駄にしたくないので俺の未来を占ってほしくてカナメ様に連れられてここに来させていただきました…」
最後の方は拳を握りしめたまま必死に言葉を絞り出した。
