第四章
同刻。マチルダが四季の森へ入る前に飛ばした紙…基、鳥は草原を抜けて王都の上空を飛んでいた。
目的地はもちろん、城のはなれにある塔の最上階
『…はぁぁぁ…退屈ね。貴方が準備したとか言う合図……本当に大丈夫なの?』
魅禄は窓辺に佇みながら、近くの椅子に腰かけているフリージルへと物憂気に問いかけた。 マチルダへ嘘の情報を伝えて信じさせ、きっかけを作ったまではよかったが…その報告をして以降。彼女はずっと合図を待ち続けていた
『あぁマスター…そんなにため息を吐いてばかりじゃダメよぉ?誰よりも美しくて可憐な美貌が台無しになっちゃう』
そんなプレッシャーの中、フリージルは日々思いつく限りの誉め言葉を連ねては彼女の機嫌をとってなんとか時間を稼いでいた。 四季族が暮らす森の奥にたどり着くためには、門に施された封印を内側から一時的に解いてもらう必要がある。だがそれにはマチルダの協力が必要不可欠
あの時彼には自分なりに嘘と真実を交えながら言葉を重ねてお願いをしていたのだが…それがいつ実行されるのか、そもそも口約束だけだったので忘れていたり、途中で気づかれて中止になる可能性だってある。
『貴方のおべっかも聞き飽きてきちゃった…』
口調こそ普段と変わりないのだが、魅禄がこちらを見つめてくる表情は冷酷に染まっていた。
『ねぇ…もし万が一だけど、貴方の言う坊やが合図を忘れていたり途中で気づかれて失敗したと分かった時は…そうねぇ。お前の羽を一枚一枚丁寧にむしってから窓辺に吊るすのはどうかしら?涼しくて快適でしょう?』
にこやかな笑顔でいきなり残虐なことを言われてしまい、フリージルは思わずガタッと音を立てながら慌てて立ち上がる。笑顔で言っているとはいえ…彼女の放つ言葉が冗談ではないことぐらい長年使い魔をして身に染みて知っているので、動揺を隠しながらフォローを入れる
『やぁんマスターったら冗談が厳しいわぁ♡えっと…えぇそう!最近はイベントがあったりして王都が忙しかったからきっと彼もまだ行動してないんだと思うわ!ね?そんなに焦ってもイイこと無いっていうじゃない!!』
必死に思いつく限りの言葉を並べたおかげで、彼女も少しは気分を変えてくれたようだ。…だが例え長年共にいる使い魔であっても、彼女の気分次第で簡単に首を飛ばされる可能性もゼロではないのだが…
『……ぷっ。あっははは!おバカさんねぇ、そんなに怯えなくてもいいじゃない。私が大事な使い魔に酷いことするように見えるの?』
どうやら命乞いにも似た今回のおべっかを気に入ってくれたらしく、魅禄は無邪気な子供のようにキャッキャと明るい声で笑いだす
(…思ってるからこっちは毎回必死に言ってるのだけど…)と本当は少し言い返したかったが、ちょっとした一言だけでも、先ほど彼女が言っていたように羽がむしられ窓辺に吊るされる未来が見えるので同調するように笑顔を浮かべてやり過ごしていたが、不意に魅禄は『でも…』と呟く
『私って醜いモノと使えないモノを傍に置いておく趣味はないの。精々私のために、常に美しく飾って私をたたえる言葉をもっと考えておくことね』
その言葉を告げた時の彼女の表情は、先ほどまでの生娘のような無邪気で明るい様子から打って変わって凍り付くような殺気が込めらていた。
その雰囲気の変わりようから、彼女が本気で言っていることは誰の目から見ても明らかだったが、その時。コンッと固い何かが窓を叩く音によって空気が変わった
『あら?何かしら…』
音に気付いた彼女が窓辺の方へと歩み寄ると、白く小さな小鳥が窓をコンコンッとノックしていた。 まさか…と思い窓を開けて招き入れてやると、その小鳥は魅禄の手の方へ飛び乗ると同時に折りたたまれた紙へと姿を戻した。
目的地はもちろん、城のはなれにある塔の最上階
『…はぁぁぁ…退屈ね。貴方が準備したとか言う合図……本当に大丈夫なの?』
魅禄は窓辺に佇みながら、近くの椅子に腰かけているフリージルへと物憂気に問いかけた。 マチルダへ嘘の情報を伝えて信じさせ、きっかけを作ったまではよかったが…その報告をして以降。彼女はずっと合図を待ち続けていた
『あぁマスター…そんなにため息を吐いてばかりじゃダメよぉ?誰よりも美しくて可憐な美貌が台無しになっちゃう』
そんなプレッシャーの中、フリージルは日々思いつく限りの誉め言葉を連ねては彼女の機嫌をとってなんとか時間を稼いでいた。 四季族が暮らす森の奥にたどり着くためには、門に施された封印を内側から一時的に解いてもらう必要がある。だがそれにはマチルダの協力が必要不可欠
あの時彼には自分なりに嘘と真実を交えながら言葉を重ねてお願いをしていたのだが…それがいつ実行されるのか、そもそも口約束だけだったので忘れていたり、途中で気づかれて中止になる可能性だってある。
『貴方のおべっかも聞き飽きてきちゃった…』
口調こそ普段と変わりないのだが、魅禄がこちらを見つめてくる表情は冷酷に染まっていた。
『ねぇ…もし万が一だけど、貴方の言う坊やが合図を忘れていたり途中で気づかれて失敗したと分かった時は…そうねぇ。お前の羽を一枚一枚丁寧にむしってから窓辺に吊るすのはどうかしら?涼しくて快適でしょう?』
にこやかな笑顔でいきなり残虐なことを言われてしまい、フリージルは思わずガタッと音を立てながら慌てて立ち上がる。笑顔で言っているとはいえ…彼女の放つ言葉が冗談ではないことぐらい長年使い魔をして身に染みて知っているので、動揺を隠しながらフォローを入れる
『やぁんマスターったら冗談が厳しいわぁ♡えっと…えぇそう!最近はイベントがあったりして王都が忙しかったからきっと彼もまだ行動してないんだと思うわ!ね?そんなに焦ってもイイこと無いっていうじゃない!!』
必死に思いつく限りの言葉を並べたおかげで、彼女も少しは気分を変えてくれたようだ。…だが例え長年共にいる使い魔であっても、彼女の気分次第で簡単に首を飛ばされる可能性もゼロではないのだが…
『……ぷっ。あっははは!おバカさんねぇ、そんなに怯えなくてもいいじゃない。私が大事な使い魔に酷いことするように見えるの?』
どうやら命乞いにも似た今回のおべっかを気に入ってくれたらしく、魅禄は無邪気な子供のようにキャッキャと明るい声で笑いだす
(…思ってるからこっちは毎回必死に言ってるのだけど…)と本当は少し言い返したかったが、ちょっとした一言だけでも、先ほど彼女が言っていたように羽がむしられ窓辺に吊るされる未来が見えるので同調するように笑顔を浮かべてやり過ごしていたが、不意に魅禄は『でも…』と呟く
『私って醜いモノと使えないモノを傍に置いておく趣味はないの。精々私のために、常に美しく飾って私をたたえる言葉をもっと考えておくことね』
その言葉を告げた時の彼女の表情は、先ほどまでの生娘のような無邪気で明るい様子から打って変わって凍り付くような殺気が込めらていた。
その雰囲気の変わりようから、彼女が本気で言っていることは誰の目から見ても明らかだったが、その時。コンッと固い何かが窓を叩く音によって空気が変わった
『あら?何かしら…』
音に気付いた彼女が窓辺の方へと歩み寄ると、白く小さな小鳥が窓をコンコンッとノックしていた。 まさか…と思い窓を開けて招き入れてやると、その小鳥は魅禄の手の方へ飛び乗ると同時に折りたたまれた紙へと姿を戻した。
