第四章
最初は喜々として再会を喜んでいたのだが、ふと思い出したように動きを止める
『水晶、これで全員か?』
『む、あぁそうだ。巳虚の先代だった申九 も、既に森へと還ったからこれで全員だが?』
『申九は…あぁうむそうじゃな。いや、貴様確か…双子の妹がおったであろう?赤髪でワガママ小娘だった魅禄。……あやつの姿は見えぬのかと思ってな』
何気ない質問のつもりだったのだが、その名前を聞いた途端。今まで表情を変えなかった水晶の眉がぴくりと動き、一瞬だけ空気が張り詰めたものに変わった。それに呼応するように他の賢者達も僅かに身構えたが、水晶はすぐに元の平常心を装いつつ返事を返した。
『……そなたと同じで、ある日を境に外の世界へ飛び出して行ってしまってな…。今は消息も不明じゃ』
水晶の言葉を聞いたマチルダは少し違和感を感じていた。
確かあの時フリージル(魅禄?)が話してくれた内容では、自分は姉の方が長に選ばれ…そして自分は追放された。と話していたが、水晶の様子から察するに水晶の妹……魅禄に関しての説明は省かれている。
まるで、意図的に妹の存在を消そうとしている……? そう考えると先程の水晶の態度も説明がつく。だが、何故そこまでして…? 彼女の意図が掴めず内心で悩んでいたのだが、カナメもそこまで気にかけるほどでも無かったらしく『ふぅん…』と興味なさそうな声で納得していた。 それ以上は深く聞くこともせず、彼女の興味は次に眼の前に出されているお菓子の方へと向けられる
『まぁ魅禄に関しては別に心配要らぬな。ワガママ小娘じゃったが要領は良いやつじゃったからのぅ。 茶菓子も懐かしいのばかりじゃな』
カナメの興味がお菓子の方へ移った事で水晶は僅かに表情を緩めると、待機している仲間達にも自由にして良いと指示を送る各々が肩の力を抜き自由にくつろぎ始めた。
…とはいえ、カナメは仲間達と積もる話もたくさんあるのだろう。本来の目的も忘れマチルダを放置したままお菓子をつまみながら水晶と撫子たちと女子同士で盛り上がってしまっている。こんな時、積極的に初対面の相手でも臆さず会話が出来るのなら苦労しないが…そんなこと出来るほどの度胸は無い
完全に蚊帳の外になってしまったマチルダは、そっと自分の存在感を消そうとちびちび紅茶を飲みながら息を潜めていたのだが……少し離れたところから、何となくだが視線を向けられている気配を感じた
(?何か熱視線を感じる…)
正直場違い感が否めないし今すぐにでも帰りたいのだが、ここに来るまでの苦労や自分の意思を無視するわけには行かない。と内心で板挟みになっている最中に感じた視線。その正体を探るべくキョロキョロと見渡してみると、物陰からこちらに向けてじっとこちらを見ている巳虚と眼が合った
「…あ、えっと……どうも…?」
どう声をかけて良いかわからず思わず疑問形になりながら、とりあえず手を振って挨拶をしてみたが…
『っ!!?』
ずっと熱視線を送っていたにも関わらず何故か彼の方がびっくりしてしまい、ビクッと身体を跳ねさせると慌てた様子でトタトタと走り、また辰冥の背後へ逃げて行ってしまった……。
何だかこちらが悪いことをしてしまった気がして、表情には出さないが静かに落ち込んでいると、腰元を巳虚にしがみつかれた状態のままの辰冥がマチルダに申し訳なさそうに頭を下げてきた どうやら今のやり取りでマチルダが気に病んでしまったのでは?と心配になったらしい
『すまないカナメの子孫殿。巳虚は好奇心が旺盛だけど誰よりもまだ幼くて怖がりでね…外の世界から来た君のことが気になって仕方が無かったんだろう……。どうか怒らないであげて欲しい』
「あ、いえ俺は全然大丈夫ですよ……」
慌てて笑顔を作り辰冥に返すと彼はホッとした様子で微笑んでくれる。勿論こちらとしても嫌われたわけではなかったのなら…と少し安心できたので、改めて巳虚の方を見てみると相変わらず辰冥の腰元にしがみつきながらこちらの方をチラチラと観察しているのが見える
得体の知れぬ相手に対する警戒よりも、【マチルダ】と言う自分たちとは違う存在への興味が勝っているのだろう
(うーん…子供?の扱いって正直わからないんだけどなぁ…)
こういう時はどう扱ってあげるのがいいのかがわからなかったが、どうしようかと悩んだ末に自分の隣の席を一人分しっかりと座れるぐらいにスペースを空けるようにしてズレてから“自分の隣に来てもいいよ”とソファーを軽くたたきながら合図を送ってみることにした。
すると、先ほどまでずっと緊張で強張っていた彼の口元が嬉しそうに明るく綻んだかと思うと、辰冥の方へと嬉しそうに視線を向ける。その様子に彼も優しく微笑みながら肯定するように頷いて返すと、嬉しそうに辰冥の腰元から離れ マチルダの隣の席へと座ってくれた。
(か…かわいい…)
思わず口に出そうになったが、そこは何とかグッと堪えてから改めて巳虚の方を見る。
マチルダに受け入れて貰ったのが嬉しかったのか、口角も緩み足をパタパタとしている仕草は幼い子供同然だった。 何よりも自分という存在に対して、こんなにも無邪気に。それでいて興味を持って接してくれるというのはいつ以来だっただろうか…。正直な所、この生業のせいで自分含め祖父も周囲からは完全に腫物扱いされていたので、巳虚が隣に来てくれただけでも内心で感動していた。
そんな二人の様子を少し離れた距離から見守っている辰冥へ、刹羅が関心した様子で声をかけた
『ふふふっ。巳虚が君以外の誰かにああやってなつくなんて初めて見たよ。僕たちに対してもあまり心を開いてくれないのに』
『幼子ゆえに興味が様々に移ろいやすいのだろう。そなた達のことを信頼していないわけでは無いが…ただ、老人の私がついつい甘やかしているからだろうな』
『やだなぁ嫉妬じゃないですって ちょっと気になっただけですよ』
『くくっ。では、そのように思っておくとしよう』
辰冥の返事に刹羅は肩をすくめながら笑い、その後も各自で自由な時間を過ごしあった。
『水晶、これで全員か?』
『む、あぁそうだ。巳虚の先代だった
『申九は…あぁうむそうじゃな。いや、貴様確か…双子の妹がおったであろう?赤髪でワガママ小娘だった魅禄。……あやつの姿は見えぬのかと思ってな』
何気ない質問のつもりだったのだが、その名前を聞いた途端。今まで表情を変えなかった水晶の眉がぴくりと動き、一瞬だけ空気が張り詰めたものに変わった。それに呼応するように他の賢者達も僅かに身構えたが、水晶はすぐに元の平常心を装いつつ返事を返した。
『……そなたと同じで、ある日を境に外の世界へ飛び出して行ってしまってな…。今は消息も不明じゃ』
水晶の言葉を聞いたマチルダは少し違和感を感じていた。
確かあの時フリージル(魅禄?)が話してくれた内容では、自分は姉の方が長に選ばれ…そして自分は追放された。と話していたが、水晶の様子から察するに水晶の妹……魅禄に関しての説明は省かれている。
まるで、意図的に妹の存在を消そうとしている……? そう考えると先程の水晶の態度も説明がつく。だが、何故そこまでして…? 彼女の意図が掴めず内心で悩んでいたのだが、カナメもそこまで気にかけるほどでも無かったらしく『ふぅん…』と興味なさそうな声で納得していた。 それ以上は深く聞くこともせず、彼女の興味は次に眼の前に出されているお菓子の方へと向けられる
『まぁ魅禄に関しては別に心配要らぬな。ワガママ小娘じゃったが要領は良いやつじゃったからのぅ。 茶菓子も懐かしいのばかりじゃな』
カナメの興味がお菓子の方へ移った事で水晶は僅かに表情を緩めると、待機している仲間達にも自由にして良いと指示を送る各々が肩の力を抜き自由にくつろぎ始めた。
…とはいえ、カナメは仲間達と積もる話もたくさんあるのだろう。本来の目的も忘れマチルダを放置したままお菓子をつまみながら水晶と撫子たちと女子同士で盛り上がってしまっている。こんな時、積極的に初対面の相手でも臆さず会話が出来るのなら苦労しないが…そんなこと出来るほどの度胸は無い
完全に蚊帳の外になってしまったマチルダは、そっと自分の存在感を消そうとちびちび紅茶を飲みながら息を潜めていたのだが……少し離れたところから、何となくだが視線を向けられている気配を感じた
(?何か熱視線を感じる…)
正直場違い感が否めないし今すぐにでも帰りたいのだが、ここに来るまでの苦労や自分の意思を無視するわけには行かない。と内心で板挟みになっている最中に感じた視線。その正体を探るべくキョロキョロと見渡してみると、物陰からこちらに向けてじっとこちらを見ている巳虚と眼が合った
「…あ、えっと……どうも…?」
どう声をかけて良いかわからず思わず疑問形になりながら、とりあえず手を振って挨拶をしてみたが…
『っ!!?』
ずっと熱視線を送っていたにも関わらず何故か彼の方がびっくりしてしまい、ビクッと身体を跳ねさせると慌てた様子でトタトタと走り、また辰冥の背後へ逃げて行ってしまった……。
何だかこちらが悪いことをしてしまった気がして、表情には出さないが静かに落ち込んでいると、腰元を巳虚にしがみつかれた状態のままの辰冥がマチルダに申し訳なさそうに頭を下げてきた どうやら今のやり取りでマチルダが気に病んでしまったのでは?と心配になったらしい
『すまないカナメの子孫殿。巳虚は好奇心が旺盛だけど誰よりもまだ幼くて怖がりでね…外の世界から来た君のことが気になって仕方が無かったんだろう……。どうか怒らないであげて欲しい』
「あ、いえ俺は全然大丈夫ですよ……」
慌てて笑顔を作り辰冥に返すと彼はホッとした様子で微笑んでくれる。勿論こちらとしても嫌われたわけではなかったのなら…と少し安心できたので、改めて巳虚の方を見てみると相変わらず辰冥の腰元にしがみつきながらこちらの方をチラチラと観察しているのが見える
得体の知れぬ相手に対する警戒よりも、【マチルダ】と言う自分たちとは違う存在への興味が勝っているのだろう
(うーん…子供?の扱いって正直わからないんだけどなぁ…)
こういう時はどう扱ってあげるのがいいのかがわからなかったが、どうしようかと悩んだ末に自分の隣の席を一人分しっかりと座れるぐらいにスペースを空けるようにしてズレてから“自分の隣に来てもいいよ”とソファーを軽くたたきながら合図を送ってみることにした。
すると、先ほどまでずっと緊張で強張っていた彼の口元が嬉しそうに明るく綻んだかと思うと、辰冥の方へと嬉しそうに視線を向ける。その様子に彼も優しく微笑みながら肯定するように頷いて返すと、嬉しそうに辰冥の腰元から離れ マチルダの隣の席へと座ってくれた。
(か…かわいい…)
思わず口に出そうになったが、そこは何とかグッと堪えてから改めて巳虚の方を見る。
マチルダに受け入れて貰ったのが嬉しかったのか、口角も緩み足をパタパタとしている仕草は幼い子供同然だった。 何よりも自分という存在に対して、こんなにも無邪気に。それでいて興味を持って接してくれるというのはいつ以来だっただろうか…。正直な所、この生業のせいで自分含め祖父も周囲からは完全に腫物扱いされていたので、巳虚が隣に来てくれただけでも内心で感動していた。
そんな二人の様子を少し離れた距離から見守っている辰冥へ、刹羅が関心した様子で声をかけた
『ふふふっ。巳虚が君以外の誰かにああやってなつくなんて初めて見たよ。僕たちに対してもあまり心を開いてくれないのに』
『幼子ゆえに興味が様々に移ろいやすいのだろう。そなた達のことを信頼していないわけでは無いが…ただ、老人の私がついつい甘やかしているからだろうな』
『やだなぁ嫉妬じゃないですって ちょっと気になっただけですよ』
『くくっ。では、そのように思っておくとしよう』
辰冥の返事に刹羅は肩をすくめながら笑い、その後も各自で自由な時間を過ごしあった。
