第四章
翌朝になり、目が覚めたマチルダは手早く身支度…と言っても手荷物は無いので、枕元に畳んで置いてあった仕事着に着替えるだけで、支度はあっという間に終わった。
成り行きとは言え宿泊させて貰ったので受付でお礼を言ってから宿泊所を後にして、その足で帰る前にミクリアの店へ足を運んだ。 一応は昨日の出来事であったと言え…結構な醜態を晒した挙げ句。そのまま飛び出してきてしまったので……せめて一言謝罪をしておこうと思い立ち寄ることにしたのだ。
相変わらず寂れた門扉を開け、扉をノックすると微かに向こうから物音が聞こえた気がした。
普段から仕事だけでしか立ち寄らない場所と言え…いつも通りに入って良いのか何だか踏ん切りがつかずにどうしたものかと考えていると少しして扉が開き、ボサッとした乱れた髪に眠そうな目をしたミクリアが顔を出した。
最初はピントが合わないのかマチルダの顔を見ても特に反応せずにぼーっと見つめていたのだが……
次第に視界がクリアになりようやく彼を認識できた途端。目を見開いて驚いた表情になると、慌てて玄関に引っ込んでから身なりを少し直すと改めて出てきた
「いらっしゃい、マチボーイ。……少しは落ち着いたようだね…昨日とは表情が全く違う」
「…ご迷惑お掛けしました……。あ、あの…おばあちゃ…カナメ様は…」
一応昨日のうちに夢?の中でカナメと話をして和解をしたつもりではあるのだが…まだ心の準備が出来てないので、もしここに居るならそそくさ帰ろうとか思っていたが、それを見透かしたように彼はふふふっと笑った。
「姐さんなら朝一で家に帰ったよ。『童が帰ってきたら【ほっとみるく】を作らせるんじゃ!!』って言ってたね~
……本当なら、姐さんが眠るときは君たちも世話するのも仕事なんだけどね…。見る限り怪我も無さそうだし、無事で良かった…ずっと心配していたんだよ?」
ミクリアはそう言いながら安堵したようなため息をつくと、中に入るよう促してくれたので、おずおずと店へと入る。
店の中は相変わらずのファンシーな内装をしており、いつの間にかピンクと白で統一された小物類が壁を彩っており、そこかしこに置かれたぬいぐるみや人形も可愛らしい
…忘れそうになるが一応ここは葬儀屋なんだが…。この趣味に関しては何度か尋ねたことがあるが未だに答えてくれたことは無い。そんなことを考えていると奥からマグカップを手にしたミクリアが帰ってきた
「ミクリアお兄さんも寝起きじゃなかったらもう少しサービス出来るんだけどね。まぁ、一杯どうぞ」
「あ……はい。ありがとうございます……」
渡されたホットミルクからは温かな湯気が立ち上ぼり、口に含むとほんのり甘くて美味しい。思わずホッと息を吐いて、全身の力が抜けたのを感じる。 ここから飛び出して以降ずっと緊張する事ばかりが続いていたので、身体が無意識に休息を求めていたのだろう…
飲み終わる頃には、不思議と穏やかな気持ちになっており、向かい側に座っていたミクリアも優しい眼差しでこちらを見つめていたのに気がついた。
今までは彼の言動のせいで日々雑な扱いをしたこともあったが…記憶の貯蔵庫で祖父と彼が話しているシーンを見た事によって印象が変わったのは事実なのだが…口に出して言うのは何だか恥ずかしかったので、何も言わずに俯いていると、彼は苦笑いしながら彼の肩を優しく叩く
「ま、早いうちに姐さんとは仲直りするんだよ?口うるさくて強引でわがままだけど…結構寂しがり屋さんだからね…?それにこれはマチボーイが選んだ道なんだ。この先も長い付き合いになるんだから、お兄さんならいつでもここに居るからまた何かあればおいで」
「……はい」
なんだか全てを見透かされている気がして居心地が悪くなったが……それならばそれで仕方が無い。
とはいえ…彼がどれだけ自分を思ってくれていたのかについて知れたのは嬉しくもあったので、これからはもうちょっと彼にも優しく接しようと思う……多分無理だとは思うが。
ホットミルクも飲み終わったので、そろそろお暇しようと立ち上がると、ミクリアが見送りついでに一緒に出てくれた。
帰り際にもう一度お礼を言うと、手を振って送り出してくれ……それに答えるように小さく手を振り替えしてから、今度こそマチルダはミクリアの店を後にした。
成り行きとは言え宿泊させて貰ったので受付でお礼を言ってから宿泊所を後にして、その足で帰る前にミクリアの店へ足を運んだ。 一応は昨日の出来事であったと言え…結構な醜態を晒した挙げ句。そのまま飛び出してきてしまったので……せめて一言謝罪をしておこうと思い立ち寄ることにしたのだ。
相変わらず寂れた門扉を開け、扉をノックすると微かに向こうから物音が聞こえた気がした。
普段から仕事だけでしか立ち寄らない場所と言え…いつも通りに入って良いのか何だか踏ん切りがつかずにどうしたものかと考えていると少しして扉が開き、ボサッとした乱れた髪に眠そうな目をしたミクリアが顔を出した。
最初はピントが合わないのかマチルダの顔を見ても特に反応せずにぼーっと見つめていたのだが……
次第に視界がクリアになりようやく彼を認識できた途端。目を見開いて驚いた表情になると、慌てて玄関に引っ込んでから身なりを少し直すと改めて出てきた
「いらっしゃい、マチボーイ。……少しは落ち着いたようだね…昨日とは表情が全く違う」
「…ご迷惑お掛けしました……。あ、あの…おばあちゃ…カナメ様は…」
一応昨日のうちに夢?の中でカナメと話をして和解をしたつもりではあるのだが…まだ心の準備が出来てないので、もしここに居るならそそくさ帰ろうとか思っていたが、それを見透かしたように彼はふふふっと笑った。
「姐さんなら朝一で家に帰ったよ。『童が帰ってきたら【ほっとみるく】を作らせるんじゃ!!』って言ってたね~
……本当なら、姐さんが眠るときは君たちも世話するのも仕事なんだけどね…。見る限り怪我も無さそうだし、無事で良かった…ずっと心配していたんだよ?」
ミクリアはそう言いながら安堵したようなため息をつくと、中に入るよう促してくれたので、おずおずと店へと入る。
店の中は相変わらずのファンシーな内装をしており、いつの間にかピンクと白で統一された小物類が壁を彩っており、そこかしこに置かれたぬいぐるみや人形も可愛らしい
…忘れそうになるが一応ここは葬儀屋なんだが…。この趣味に関しては何度か尋ねたことがあるが未だに答えてくれたことは無い。そんなことを考えていると奥からマグカップを手にしたミクリアが帰ってきた
「ミクリアお兄さんも寝起きじゃなかったらもう少しサービス出来るんだけどね。まぁ、一杯どうぞ」
「あ……はい。ありがとうございます……」
渡されたホットミルクからは温かな湯気が立ち上ぼり、口に含むとほんのり甘くて美味しい。思わずホッと息を吐いて、全身の力が抜けたのを感じる。 ここから飛び出して以降ずっと緊張する事ばかりが続いていたので、身体が無意識に休息を求めていたのだろう…
飲み終わる頃には、不思議と穏やかな気持ちになっており、向かい側に座っていたミクリアも優しい眼差しでこちらを見つめていたのに気がついた。
今までは彼の言動のせいで日々雑な扱いをしたこともあったが…記憶の貯蔵庫で祖父と彼が話しているシーンを見た事によって印象が変わったのは事実なのだが…口に出して言うのは何だか恥ずかしかったので、何も言わずに俯いていると、彼は苦笑いしながら彼の肩を優しく叩く
「ま、早いうちに姐さんとは仲直りするんだよ?口うるさくて強引でわがままだけど…結構寂しがり屋さんだからね…?それにこれはマチボーイが選んだ道なんだ。この先も長い付き合いになるんだから、お兄さんならいつでもここに居るからまた何かあればおいで」
「……はい」
なんだか全てを見透かされている気がして居心地が悪くなったが……それならばそれで仕方が無い。
とはいえ…彼がどれだけ自分を思ってくれていたのかについて知れたのは嬉しくもあったので、これからはもうちょっと彼にも優しく接しようと思う……多分無理だとは思うが。
ホットミルクも飲み終わったので、そろそろお暇しようと立ち上がると、ミクリアが見送りついでに一緒に出てくれた。
帰り際にもう一度お礼を言うと、手を振って送り出してくれ……それに答えるように小さく手を振り替えしてから、今度こそマチルダはミクリアの店を後にした。
