第三章
あぁ自分はここで終わるのか…。そう思いながらこれから来るであろう結末に恐怖から、全てを受け入れ諦めようとしていたが、フリージルの反応は意外なモノだった。
『あぁごめんなさいね。別にアタシ、貴方に危害を加えるために尋ねた訳じゃないの』とそこで一度言葉を区切ると、彼は人差し指を立てながら唇に指先を当て、窓や扉に向けて投げキッスするように息を吹きかけた。
『…さて、これで防音魔法も完璧♡外にアタシ達の会話を聞かれる心配も無いから、そんなに警戒しなくても大丈夫よ?』
フリージルはそう言って微笑んでくれるのだが……そう言われて簡単に安心などできるわけ無い。何を企んでいるか分からない以上、その微笑みですら信用できないのだから……と疑り深い目で見てしまっていると、困ったように笑いながら彼は少し申し訳なさそうな声を上げる 。
『そう簡単には信じて貰えないのは分かってるわ。……そうねぇ…じゃあアタシのヒミツを打ち明けるから聞いてくれるかしら?これは信頼してもらうための提案なのだけど……どうかしら?』
突然の秘密を明かす……という話に戸惑うも、このまま黙っているわけにもいかない。マチルダは小さく「わかりました」と答えると、フリージルは『良かった』と笑みを深めた。だが次に彼が口を開くまで何故か妙な緊張感が生まれていた。
『アタシはね……元々は四季族の一人だったの』
「な…っ。え……っ!!?」
フリージルのいきなりの言葉にマチルダは驚いてしまい、上手く言葉が出てこなかった。この王都において四季族の扱いがどういう存在か知っている上での発言だとすると……あまりにも予想外で衝撃的すぎた。
いくら防音の魔法を施していると言っていても、ここでその言葉を出すというのはリスクが大きすぎる。それにこの人は今なんて言った?元は四季族の一人だった?
だったら何故カナメがあの時知らなかったのだろうか…? いや、彼女が森を出てから世代が交代した場合を考えると顔を知らないのも辻褄は合う。そう思うと彼のこの言葉は、本当のことを言っている可能性が高いが……それでもわざと自分の方へ歩み寄る発言をすることで、自分を油断させようとしている場合も考えられる。
様々な考えが頭の中を駆け巡り、マチルダは思わず険しい表情で彼を睨みつけてしまうが、彼は特に動じる様子はなく相変わらず穏やかな笑顔のまま、こちらを見つめ返してくる。
「元……ということは今は違うということですか?」
『えぇそうよ。…確かに高い知能もあって魔力を持つ四季族でも、寿命は永遠じゃないの。 その反応から察するに、カナメは話していないのね。…アタシ、双子の姉が居たのだけど…その姉と長の座を巡って戦いに敗れて……追放されてしまったのよ』
「…………」
やはりというか、思った通りの事実を聞かされ、マチルダはどう返事をして良いか分からず押し黙ってしまう。するとフリージルは苦笑いを浮かべながらも、淡々とした口調で話を続ける。
『元々アタシ達きょうだいは仲が良くって……どっちが王になるかなんて決めていなかったわ。でも……周りの仲間はアタシより姉の方が相応しいと思ったのでしょうね……。結局、アタシは追放されて…先代の王サマに拾われたのよ
勿論、その時はまだ直轄の賢者として四季族も出入りしていたから…容姿も名前も変えて、新しい人生を送ることにしたの。そしてアタシはフリージルになった……そういうこと』
「えっと……ちょっといいですか?」
『あらなにかしら?』
「まずどうしてそんなにあっさりと話せたんですか?それに、どうして王都にまだいらっしゃるのも…。元は四季族というなら、寧ろ王都にいる方が危険なのでは……」
色々聞きたいことがあったので、マチルダはとりあえず気になったことを順番に質問していった。
フリージルは今までの流れを振り返っても全く焦った様子がなかった。もしかしたら嘘をついている可能性もあったが、それを尋ねる勇気も無かったので、とりあえず話を続けて疑問を解決することにした。
『ん~そうねぇ……。まずはアタシが演説したとき、カナメと一緒に居るのを見かけて、幼い頃に交流もあったから覚えていた。言えば納得してくれるかしら?本当はあの時こちらからアプローチしたかったけど流石に…ね?
次の質問ね。容姿も名前も変えてでもまだ王都に居るのは…追放されたと言っても先代王には感謝してるのと、こっそり監視しているって訳なのよ』
彼はそう言うとウィンクをしながら微笑んでくれた。確かに嘘はついていないように見える。だが……
「監視をしているなら……俺にあんなことを聞かないでくださいよ」
マチルダは小さくため息をつきながら、呆れた表情を彼に向けるとフリージルは少しだけバツが悪そうな態度を見せる。
『あらあら、手厳しいのね。まぁそれも当然かもしれないけれど……。一応確認しておきたかったの
あぁそうそう、その他にこういうのは証拠になるかしら?』
そう言って彼は懐から古いカレッジリングを取り出した。中央にはエメラルドの宝石が嵌め込まれてあり、マチルダが付けている指輪と瓜二つの代物だった。
「!それって…っ」
『えぇ、夏を司る担当が代々受け継いできた指輪なの。本来は4つしかないから、これはそれを模倣したレプリカだけど。一応四季族を追放された身であっても、それだけは棄てられなかった……
でも貴方のはトクベツ、四季族に認められた証。』
「…カナメ様の指輪が…」
『国王が代わって四季族が迫害されていくのを、アタシはずっと間近で見ておきながら何も出来なかった…。彼らは友好関係のあった人間達からの裏切りに深く悲しみ、森に結界を張って姿を隠してしまったわ…
それでもアタシがこの国に留まっているのは、国王がこれ以上暴走しないための監視。身体は国王に売っても、心は四季族の誇りだけは捨ててないの』
「……」
マチルダはフリージルの言葉がどこまでが本当なのかについて未だ疑っていたのだが…先程から彼が発する言葉や声音は、とても嘘をついているようには思えなかった。そもそも、彼は一体どういうつもりでこんな話をしているのだろうか……?
『あぁごめんなさいね。別にアタシ、貴方に危害を加えるために尋ねた訳じゃないの』とそこで一度言葉を区切ると、彼は人差し指を立てながら唇に指先を当て、窓や扉に向けて投げキッスするように息を吹きかけた。
『…さて、これで防音魔法も完璧♡外にアタシ達の会話を聞かれる心配も無いから、そんなに警戒しなくても大丈夫よ?』
フリージルはそう言って微笑んでくれるのだが……そう言われて簡単に安心などできるわけ無い。何を企んでいるか分からない以上、その微笑みですら信用できないのだから……と疑り深い目で見てしまっていると、困ったように笑いながら彼は少し申し訳なさそうな声を上げる 。
『そう簡単には信じて貰えないのは分かってるわ。……そうねぇ…じゃあアタシのヒミツを打ち明けるから聞いてくれるかしら?これは信頼してもらうための提案なのだけど……どうかしら?』
突然の秘密を明かす……という話に戸惑うも、このまま黙っているわけにもいかない。マチルダは小さく「わかりました」と答えると、フリージルは『良かった』と笑みを深めた。だが次に彼が口を開くまで何故か妙な緊張感が生まれていた。
『アタシはね……元々は四季族の一人だったの』
「な…っ。え……っ!!?」
フリージルのいきなりの言葉にマチルダは驚いてしまい、上手く言葉が出てこなかった。この王都において四季族の扱いがどういう存在か知っている上での発言だとすると……あまりにも予想外で衝撃的すぎた。
いくら防音の魔法を施していると言っていても、ここでその言葉を出すというのはリスクが大きすぎる。それにこの人は今なんて言った?元は四季族の一人だった?
だったら何故カナメがあの時知らなかったのだろうか…? いや、彼女が森を出てから世代が交代した場合を考えると顔を知らないのも辻褄は合う。そう思うと彼のこの言葉は、本当のことを言っている可能性が高いが……それでもわざと自分の方へ歩み寄る発言をすることで、自分を油断させようとしている場合も考えられる。
様々な考えが頭の中を駆け巡り、マチルダは思わず険しい表情で彼を睨みつけてしまうが、彼は特に動じる様子はなく相変わらず穏やかな笑顔のまま、こちらを見つめ返してくる。
「元……ということは今は違うということですか?」
『えぇそうよ。…確かに高い知能もあって魔力を持つ四季族でも、寿命は永遠じゃないの。 その反応から察するに、カナメは話していないのね。…アタシ、双子の姉が居たのだけど…その姉と長の座を巡って戦いに敗れて……追放されてしまったのよ』
「…………」
やはりというか、思った通りの事実を聞かされ、マチルダはどう返事をして良いか分からず押し黙ってしまう。するとフリージルは苦笑いを浮かべながらも、淡々とした口調で話を続ける。
『元々アタシ達きょうだいは仲が良くって……どっちが王になるかなんて決めていなかったわ。でも……周りの仲間はアタシより姉の方が相応しいと思ったのでしょうね……。結局、アタシは追放されて…先代の王サマに拾われたのよ
勿論、その時はまだ直轄の賢者として四季族も出入りしていたから…容姿も名前も変えて、新しい人生を送ることにしたの。そしてアタシはフリージルになった……そういうこと』
「えっと……ちょっといいですか?」
『あらなにかしら?』
「まずどうしてそんなにあっさりと話せたんですか?それに、どうして王都にまだいらっしゃるのも…。元は四季族というなら、寧ろ王都にいる方が危険なのでは……」
色々聞きたいことがあったので、マチルダはとりあえず気になったことを順番に質問していった。
フリージルは今までの流れを振り返っても全く焦った様子がなかった。もしかしたら嘘をついている可能性もあったが、それを尋ねる勇気も無かったので、とりあえず話を続けて疑問を解決することにした。
『ん~そうねぇ……。まずはアタシが演説したとき、カナメと一緒に居るのを見かけて、幼い頃に交流もあったから覚えていた。言えば納得してくれるかしら?本当はあの時こちらからアプローチしたかったけど流石に…ね?
次の質問ね。容姿も名前も変えてでもまだ王都に居るのは…追放されたと言っても先代王には感謝してるのと、こっそり監視しているって訳なのよ』
彼はそう言うとウィンクをしながら微笑んでくれた。確かに嘘はついていないように見える。だが……
「監視をしているなら……俺にあんなことを聞かないでくださいよ」
マチルダは小さくため息をつきながら、呆れた表情を彼に向けるとフリージルは少しだけバツが悪そうな態度を見せる。
『あらあら、手厳しいのね。まぁそれも当然かもしれないけれど……。一応確認しておきたかったの
あぁそうそう、その他にこういうのは証拠になるかしら?』
そう言って彼は懐から古いカレッジリングを取り出した。中央にはエメラルドの宝石が嵌め込まれてあり、マチルダが付けている指輪と瓜二つの代物だった。
「!それって…っ」
『えぇ、夏を司る担当が代々受け継いできた指輪なの。本来は4つしかないから、これはそれを模倣したレプリカだけど。一応四季族を追放された身であっても、それだけは棄てられなかった……
でも貴方のはトクベツ、四季族に認められた証。』
「…カナメ様の指輪が…」
『国王が代わって四季族が迫害されていくのを、アタシはずっと間近で見ておきながら何も出来なかった…。彼らは友好関係のあった人間達からの裏切りに深く悲しみ、森に結界を張って姿を隠してしまったわ…
それでもアタシがこの国に留まっているのは、国王がこれ以上暴走しないための監視。身体は国王に売っても、心は四季族の誇りだけは捨ててないの』
「……」
マチルダはフリージルの言葉がどこまでが本当なのかについて未だ疑っていたのだが…先程から彼が発する言葉や声音は、とても嘘をついているようには思えなかった。そもそも、彼は一体どういうつもりでこんな話をしているのだろうか……?
