第三章
…確かに処遇に関して揉めるのは妥当だろう。自分の素性も殆ど明かさ尚且つ風呂に入る直前で倒れた男なんて、警戒されてもおかしくはない。
とはいえいくら何でも本人が居る前でそこまで貶さなくてもいいじゃないか……と、静かに深く傷ついていると、不意に目の前のカーテンが動いたかと思うとリースがひょこっと顔を覗かせた。
「お、目覚めてたんやな。気分どない?どっか痛むとことかあらへん?」
いつもの調子で話しかけてくる彼にマチルダは一瞬戸惑ったが、ここは素直に質問に答えることにした
「え、あ、はい……。特に痛みとかは特には……大丈夫、です……」
とりあえずさっき聞いてしまった会話内容に関しては聞いていなかったフリをしておこうと思い、今さっき目覚めました。と付け加えると、彼は嬉しそうにニカッと口元を緩めてくれた
「そりゃ良かった。脱衣所でいきなり倒れるさかいホンマびっくりしたでー 一応俺が着替え手伝ったんやけど…ってあ、変な意味ちゃうで?!着替えせなあかんと思って仕方なくやってんからな!やましい気持ちなんて一切あらへんからな?!」
「は、はぁ……あの、ありがとうございます……?」
何故か妙に焦りながら弁明してくるリースを見て、何だか悪い事をしてしまったとマチルダは思い、反射的に謝ってしまった。すると、リースは少し安心した表情を浮かべると、ふと何かを思い出したかのような表情に変わった
「あっ、ついでやねんけど俺の隣でさっきから難しい顔しながらずっと腕組んで圧かけて来とるのが近衛兵隊長のイザヨイな」
相変わらずの口調で隊長を雑に紹介してくれるのだが…先程のやりとりからも大体は分かっていたが、こちらの事は良く思ってなさそうなのがヒシヒシと伝わってくる。
とりあえず会釈はしてくれたのだが…わざとなのか敵意を隠そうともしない。表情も、噴水広場の演説で見たときの様な愛想の良い笑顔ではなく、「さっさと出ていけ得体の知れない野良犬が」と言わんばかりに冷たい視線を向けている…
「…え、えっと…マチルダです。その……この度は色々とご迷惑をお掛けして申し訳ありません…」
全く歓迎されていないのは分かっているが、ここは何も知らなかったフリを貫くため、初対面なのでまずは自己紹介を一応した方が良いだろうと思い名乗ったのだが…「困っている一般市民を助けることも、近衛兵の役目ですので」とだけ返事をすると足早に退出してしまった。
その事に若干ショックを受けながら横目でリースのほうを見つめてみると……
「あーあーホンマ愛想無い奴やで。ま、いっつもあんなんやし気にせんでエエで?マッチールダルダが悪いんとちゃうし」
リースがすかさずフォローを入れてくれるのだが…内心ではかなり凹んでしまう
(そう……だよな……。そもそも普通に考えて素性も知らない人間を連れ帰ってきた時点でおかしいもんな……。)
はっきり拒絶されなかっただけでもありがたいのだ……そんなことはわかっているけれど……
(……やっぱり、嫌われてるんだろうな……。)
あの時聞こえてきた舌打ちは明らかに不機嫌を現していたものであって……思わず肩を落としながらも、リースの気遣いの言葉を受け取っておいた
「いえ、気にかけてくださって有難うございます……。」
引きつった笑みではあったが何とか返事を返すと、その後は(リースが一方的に喋ってくるだけの)雑談を交わしていると、ノック音が部屋に響いたあと扉が開かれ国王陛下直轄の賢者であるフリージルが入室してきた。
とはいえいくら何でも本人が居る前でそこまで貶さなくてもいいじゃないか……と、静かに深く傷ついていると、不意に目の前のカーテンが動いたかと思うとリースがひょこっと顔を覗かせた。
「お、目覚めてたんやな。気分どない?どっか痛むとことかあらへん?」
いつもの調子で話しかけてくる彼にマチルダは一瞬戸惑ったが、ここは素直に質問に答えることにした
「え、あ、はい……。特に痛みとかは特には……大丈夫、です……」
とりあえずさっき聞いてしまった会話内容に関しては聞いていなかったフリをしておこうと思い、今さっき目覚めました。と付け加えると、彼は嬉しそうにニカッと口元を緩めてくれた
「そりゃ良かった。脱衣所でいきなり倒れるさかいホンマびっくりしたでー 一応俺が着替え手伝ったんやけど…ってあ、変な意味ちゃうで?!着替えせなあかんと思って仕方なくやってんからな!やましい気持ちなんて一切あらへんからな?!」
「は、はぁ……あの、ありがとうございます……?」
何故か妙に焦りながら弁明してくるリースを見て、何だか悪い事をしてしまったとマチルダは思い、反射的に謝ってしまった。すると、リースは少し安心した表情を浮かべると、ふと何かを思い出したかのような表情に変わった
「あっ、ついでやねんけど俺の隣でさっきから難しい顔しながらずっと腕組んで圧かけて来とるのが近衛兵隊長のイザヨイな」
相変わらずの口調で隊長を雑に紹介してくれるのだが…先程のやりとりからも大体は分かっていたが、こちらの事は良く思ってなさそうなのがヒシヒシと伝わってくる。
とりあえず会釈はしてくれたのだが…わざとなのか敵意を隠そうともしない。表情も、噴水広場の演説で見たときの様な愛想の良い笑顔ではなく、「さっさと出ていけ得体の知れない野良犬が」と言わんばかりに冷たい視線を向けている…
「…え、えっと…マチルダです。その……この度は色々とご迷惑をお掛けして申し訳ありません…」
全く歓迎されていないのは分かっているが、ここは何も知らなかったフリを貫くため、初対面なのでまずは自己紹介を一応した方が良いだろうと思い名乗ったのだが…「困っている一般市民を助けることも、近衛兵の役目ですので」とだけ返事をすると足早に退出してしまった。
その事に若干ショックを受けながら横目でリースのほうを見つめてみると……
「あーあーホンマ愛想無い奴やで。ま、いっつもあんなんやし気にせんでエエで?マッチールダルダが悪いんとちゃうし」
リースがすかさずフォローを入れてくれるのだが…内心ではかなり凹んでしまう
(そう……だよな……。そもそも普通に考えて素性も知らない人間を連れ帰ってきた時点でおかしいもんな……。)
はっきり拒絶されなかっただけでもありがたいのだ……そんなことはわかっているけれど……
(……やっぱり、嫌われてるんだろうな……。)
あの時聞こえてきた舌打ちは明らかに不機嫌を現していたものであって……思わず肩を落としながらも、リースの気遣いの言葉を受け取っておいた
「いえ、気にかけてくださって有難うございます……。」
引きつった笑みではあったが何とか返事を返すと、その後は(リースが一方的に喋ってくるだけの)雑談を交わしていると、ノック音が部屋に響いたあと扉が開かれ国王陛下直轄の賢者であるフリージルが入室してきた。
