第三章
こちらの意思や覚悟など一切関係ないと言いたげな彼女の振る舞いに、アーネストは震える拳を強く握りしめて何とかこみ上げる怒りを堪えようと必死に歯を食い縛った
『……っカナメ様には!我々子孫の気持ちが分からないのですか!!?』
『あぁもう騒がしいのぉ…そんなもの分かる訳なかろうて。ワシは貴様らの始祖であり直系の先祖であるが、記憶は読めても思考までは読めぬ
…して、貴様のせがれのヴァラファール。…奴は確か自殺。であったな 今までは一族の為、と奴にも厳しく接しておった癖に…せがれが亡くなり、再び自分に番が戻ってきたら今度は自分の代で終わらせたい等…本当に虫の良い話じゃのぉ』
『っ!!せがれは…ヴァラファールは常に、我々一族の未来について疑問を抱き、そして人知れず苦悩をしておりました!貴女も記憶を共有しているのでご存じでしょう?!』
彼は感情を抑えきれず、拳を握りしめたまま声を荒げて訴えたのだが、カナメはつまらなそうに欠伸をしながら彼を見下ろすと、淡々と告げてみせる
『あぁそうじゃな。確かに記憶はワシも引き継いだが…それらはあくまでも【貴様らの価値観】であろう?どのように考え、そして動くのかは勝手じゃが…貴様らはワシの血を引き継いでおる。一族の使命というのを持って生まれ育った奴らが、それ以外の感情を抱くこと自体。おこがましいというものよ…』
『ぐ……っ。ですが貴女もご存じでしょう!?現在の王都の状態を…政権が変わったと同時に、今までずっと四季族を崇拝し、共存していた絆を一方的に断ち切り……彼らに関する全てのモノを禁忌とみなし、この世から抹消しようとしていることを!!四季族の流れを汲む我々が生きて行く為には、こうする他に道はございませぬ…っ!!
一族の恥さらしと罵られても結構。ですのでせめて…マチルダには選択の余地を与えて欲しいのです!その覚悟に、ワシは指輪をミクリアに託して参りました。』
そう言ってアーネストが左手を見せると、薬指に填められた筈のカレッジリングが消え失せていた。 それを見たカナメは目を細めると、不愉快だと言わんばかりに舌打ちをする そんな彼女の反応に彼は何も言わず様子をうかがっていたが、やがてカナメはソファーに寝そべっていた体を起こすと忌々しそうに口を開く。
『フンッ下らぬ…貴様らはワシの子孫であると同時に、ワシにとっての駒であるというのに…余計な思考や知恵を身につけおってからに…。あえて貴様の行動に関して言葉にしてやるなら、【愚か者】というのがあっておるな』
『カナメ様…っ!貴女の仰ることはもっともであると重々承知しております。しかしこれは、一族の未来のためでもあるのですぞっ!!』
感情のままに思いを訴えるアーネストの目には涙が浮かんでいた。今まで自分が当主として見聞きしたこと、息子のこと、そして何よりも自分の後を継ぐ孫の事を思い、今まで溜め込み抑えていた分。様々な想いが込み上げて来たのだろう…
だが、カナメは一切表情を変えず、冷めた目で彼を一蹴すると、呆れたように口を開いた
『貴様が勝手に投げた賽の目がどう転ぼうがワシの知ったことでは無い。
貴様にとってはマチルダがこの先、血族の宿命から逃れることを望んでおるようじゃが…運命というのは時として残酷なものじゃが…まぁ、運命に身を任すというのもまた一興。貴様の遊びに付き合ってやるとしようではないか』
『……っ』
『話は終わりじゃ』
カナメがそう言い放った所で映像の再生が終了し、自動的にシャボンが割れてしまった。
『……っカナメ様には!我々子孫の気持ちが分からないのですか!!?』
『あぁもう騒がしいのぉ…そんなもの分かる訳なかろうて。ワシは貴様らの始祖であり直系の先祖であるが、記憶は読めても思考までは読めぬ
…して、貴様のせがれのヴァラファール。…奴は確か自殺。であったな 今までは一族の為、と奴にも厳しく接しておった癖に…せがれが亡くなり、再び自分に番が戻ってきたら今度は自分の代で終わらせたい等…本当に虫の良い話じゃのぉ』
『っ!!せがれは…ヴァラファールは常に、我々一族の未来について疑問を抱き、そして人知れず苦悩をしておりました!貴女も記憶を共有しているのでご存じでしょう?!』
彼は感情を抑えきれず、拳を握りしめたまま声を荒げて訴えたのだが、カナメはつまらなそうに欠伸をしながら彼を見下ろすと、淡々と告げてみせる
『あぁそうじゃな。確かに記憶はワシも引き継いだが…それらはあくまでも【貴様らの価値観】であろう?どのように考え、そして動くのかは勝手じゃが…貴様らはワシの血を引き継いでおる。一族の使命というのを持って生まれ育った奴らが、それ以外の感情を抱くこと自体。おこがましいというものよ…』
『ぐ……っ。ですが貴女もご存じでしょう!?現在の王都の状態を…政権が変わったと同時に、今までずっと四季族を崇拝し、共存していた絆を一方的に断ち切り……彼らに関する全てのモノを禁忌とみなし、この世から抹消しようとしていることを!!四季族の流れを汲む我々が生きて行く為には、こうする他に道はございませぬ…っ!!
一族の恥さらしと罵られても結構。ですのでせめて…マチルダには選択の余地を与えて欲しいのです!その覚悟に、ワシは指輪をミクリアに託して参りました。』
そう言ってアーネストが左手を見せると、薬指に填められた筈のカレッジリングが消え失せていた。 それを見たカナメは目を細めると、不愉快だと言わんばかりに舌打ちをする そんな彼女の反応に彼は何も言わず様子をうかがっていたが、やがてカナメはソファーに寝そべっていた体を起こすと忌々しそうに口を開く。
『フンッ下らぬ…貴様らはワシの子孫であると同時に、ワシにとっての駒であるというのに…余計な思考や知恵を身につけおってからに…。あえて貴様の行動に関して言葉にしてやるなら、【愚か者】というのがあっておるな』
『カナメ様…っ!貴女の仰ることはもっともであると重々承知しております。しかしこれは、一族の未来のためでもあるのですぞっ!!』
感情のままに思いを訴えるアーネストの目には涙が浮かんでいた。今まで自分が当主として見聞きしたこと、息子のこと、そして何よりも自分の後を継ぐ孫の事を思い、今まで溜め込み抑えていた分。様々な想いが込み上げて来たのだろう…
だが、カナメは一切表情を変えず、冷めた目で彼を一蹴すると、呆れたように口を開いた
『貴様が勝手に投げた賽の目がどう転ぼうがワシの知ったことでは無い。
貴様にとってはマチルダがこの先、血族の宿命から逃れることを望んでおるようじゃが…運命というのは時として残酷なものじゃが…まぁ、運命に身を任すというのもまた一興。貴様の遊びに付き合ってやるとしようではないか』
『……っ』
『話は終わりじゃ』
カナメがそう言い放った所で映像の再生が終了し、自動的にシャボンが割れてしまった。
