第三章
これ以上はやめようと頭を振り、手にしていた本を棚に戻してからカナメの元へと戻ろうとしたときだった。ふとミクリアと当主の指輪に関して交わした会話を思い出す
【アーネストは…一族の在り方について葛藤していたんだ。】
【自分の代でこの呪われた一族の連鎖を断ち切るべきか】
(!…。カナメ様のところに戻る前に…少し探してみるか)
思い出したついでに、早速目当ての本を探すべく本棚を調べてみることにしたのだが…膨大な量を貯蔵しているこの空間から、目当ての一冊を探すというのは、砂漠に落ちた一本の針を見つけ出すことにも等しく、マチルダは早くも心が折れそうになる。
(くそ…っやっぱり手がかりが少なすぎる…)
本の背表紙には各々の名前が記載されているのだが…それでも似たような名前だったり、名前が一緒でも内容が異なるものも多く、背表紙だけでは見分けがつかなかった。
とはいえ彼女に頼るのは何だか気が引けるので、もう諦めようと思った時だった。マチルダの前に、先程のように記憶を映像として見せてくれるシャボンが現れたので、最初に見た映像の内容もあり無視しようとしたが…
何故だか今回に限って、そのシャボンへと視線が釘付けになった。
それが目当ての記憶とは限らないのは分かっているのだが…本能というべきだろうか?まるで導かれるようにして彼はそのシャボンへ触れた。
すると再生された映像には、祖父のアーネストが、ミクリアと会話しているシーンから再生された。
――――
『……』
『…貴方とは長すぎる付き合いを続けてきたと思ってますが、流石に部外者の我に、一族の指輪を預からせるなんて……正気で?それとも何かの悪いドッキリですか?』
『残念だがワシは正気だ。それにこれはドッキリとか言う類の話ではない。……故にコレは、ワシの遺言と思ってくれて構わん』
映し出されたのは二人の会話。あの時多くは語ってくれなかったが、ミクリアと祖父の間で交わされた会話をマチルダは知らなかったので、思わず食い入るようにその会話へ意識を集中させた。
深く決意を込めたアーネストの言葉を聞いて、ミクリアは指輪が収められた小箱を受け取りはしたのだが…困った様子で頬を掻いた
『……孫の…孫のマチルダにはどう説明されるつもりで?一応は、一族の次期当主として貴方に習って御霊流しもされているのでしょう?…それならば必然的に、成人すれば受け継がれるべき品ですよ』
『そのぐらい分かっておる!!……だが、な。ワシは一度はせがれに当主の座を譲り引退した存在…。確かにマチルダにはワシのせがれの代わりとして、日々厳しく生業を教え込んでいるが……
せがれは…ヴァラファールは優しすぎた。一族の責務、重圧に…常に葛藤し続けていた奴の事を近くで見ておきながら…ワシは何も気付いてやれなかった…。自ら命を絶ったせがれの魂を送ったときに、初めてワシは後悔したのだ……あの時にワシは……せがれの心の声を聞き取る事ぐらいが出来ていれば…。と マチルダにはせめて、ワシからの贖罪として時が来れば違う道も与えてやりたいのだ』
「!!」
二人の会話を再生し、食い入るように見ていたマチルダは衝撃を受けた。ミクリアが指輪を渡してくれたとき、彼は必要最低限の言葉しか話さなかったし…
ましてや父親に関しても、自分が物心つく前には既に祖父と二人暮らしだったので、顔すら殆ど覚えていないし…ましてや病死したと聞かされていたので、それを疑う気持ちなど一切無かった。
しかしこうして改めて聞くと、ミクリアの口調は終始申し訳なさそうな感じであったし、それに祖父が語っていることは、ミクリアがあえて言わなかったであろう事柄も含まれていた
「……ッ」
そして彼の口から語られる真実を知ってしまったマチルダは、胸の痛みを覚えて思わず顔を歪ませた。……自分が感じている時よりも遥かに……父は苦しんでいたんだ。と だからこそ祖父は、【この呪われた一族の連鎖を断ち切るべきか】という選択肢を持ち出したのだと。今になってようやく理解できた
数々の情報に思考か追いつかず固まっていると、再生する映像の場面が変わり、次はアーネストが少年時代のマチルダを寝かしつけている映像へと変わった。
【アーネストは…一族の在り方について葛藤していたんだ。】
【自分の代でこの呪われた一族の連鎖を断ち切るべきか】
(!…。カナメ様のところに戻る前に…少し探してみるか)
思い出したついでに、早速目当ての本を探すべく本棚を調べてみることにしたのだが…膨大な量を貯蔵しているこの空間から、目当ての一冊を探すというのは、砂漠に落ちた一本の針を見つけ出すことにも等しく、マチルダは早くも心が折れそうになる。
(くそ…っやっぱり手がかりが少なすぎる…)
本の背表紙には各々の名前が記載されているのだが…それでも似たような名前だったり、名前が一緒でも内容が異なるものも多く、背表紙だけでは見分けがつかなかった。
とはいえ彼女に頼るのは何だか気が引けるので、もう諦めようと思った時だった。マチルダの前に、先程のように記憶を映像として見せてくれるシャボンが現れたので、最初に見た映像の内容もあり無視しようとしたが…
何故だか今回に限って、そのシャボンへと視線が釘付けになった。
それが目当ての記憶とは限らないのは分かっているのだが…本能というべきだろうか?まるで導かれるようにして彼はそのシャボンへ触れた。
すると再生された映像には、祖父のアーネストが、ミクリアと会話しているシーンから再生された。
――――
『……』
『…貴方とは長すぎる付き合いを続けてきたと思ってますが、流石に部外者の我に、一族の指輪を預からせるなんて……正気で?それとも何かの悪いドッキリですか?』
『残念だがワシは正気だ。それにこれはドッキリとか言う類の話ではない。……故にコレは、ワシの遺言と思ってくれて構わん』
映し出されたのは二人の会話。あの時多くは語ってくれなかったが、ミクリアと祖父の間で交わされた会話をマチルダは知らなかったので、思わず食い入るようにその会話へ意識を集中させた。
深く決意を込めたアーネストの言葉を聞いて、ミクリアは指輪が収められた小箱を受け取りはしたのだが…困った様子で頬を掻いた
『……孫の…孫のマチルダにはどう説明されるつもりで?一応は、一族の次期当主として貴方に習って御霊流しもされているのでしょう?…それならば必然的に、成人すれば受け継がれるべき品ですよ』
『そのぐらい分かっておる!!……だが、な。ワシは一度はせがれに当主の座を譲り引退した存在…。確かにマチルダにはワシのせがれの代わりとして、日々厳しく生業を教え込んでいるが……
せがれは…ヴァラファールは優しすぎた。一族の責務、重圧に…常に葛藤し続けていた奴の事を近くで見ておきながら…ワシは何も気付いてやれなかった…。自ら命を絶ったせがれの魂を送ったときに、初めてワシは後悔したのだ……あの時にワシは……せがれの心の声を聞き取る事ぐらいが出来ていれば…。と マチルダにはせめて、ワシからの贖罪として時が来れば違う道も与えてやりたいのだ』
「!!」
二人の会話を再生し、食い入るように見ていたマチルダは衝撃を受けた。ミクリアが指輪を渡してくれたとき、彼は必要最低限の言葉しか話さなかったし…
ましてや父親に関しても、自分が物心つく前には既に祖父と二人暮らしだったので、顔すら殆ど覚えていないし…ましてや病死したと聞かされていたので、それを疑う気持ちなど一切無かった。
しかしこうして改めて聞くと、ミクリアの口調は終始申し訳なさそうな感じであったし、それに祖父が語っていることは、ミクリアがあえて言わなかったであろう事柄も含まれていた
「……ッ」
そして彼の口から語られる真実を知ってしまったマチルダは、胸の痛みを覚えて思わず顔を歪ませた。……自分が感じている時よりも遥かに……父は苦しんでいたんだ。と だからこそ祖父は、【この呪われた一族の連鎖を断ち切るべきか】という選択肢を持ち出したのだと。今になってようやく理解できた
数々の情報に思考か追いつかず固まっていると、再生する映像の場面が変わり、次はアーネストが少年時代のマチルダを寝かしつけている映像へと変わった。
