第二章
意識が戻ってきたと同時にマチルダの腕の中には、先程御霊流しをしたサンの遺体が抱きしめられたままだったが…。既に彼女の魂はそこには存在していないので、この肉体は抜け殻となっているのだと思うと、今までは感じなかったのだが……急に物悲しい気持ちが湧き上がってくる。
『…おい。いつまでそうしているつもりじゃ?貴様にはまだ仕事があるじゃろ』
「………」
カナメが背後から急かすように色々言ってくるが、マチルダは返事を返さず最後にもう一度だけ彼女を抱きしめてからそっと床に寝かせてから、ようやく立ち上がり部屋の外で待機していた二人の元へ歩み寄った。 未だに現実を受け入れられないと言った様子で呆然としている姿に、ようやく止まっていた涙がまた流れそうになったが強く唇を噛んで堪え、なんとか口を開く
「……サンちゃんの魂は、僕が責任持って御霊流しをさせていただきました…」
彼の言葉にハッとしいた様子でレーンが慌てて顔を上げる
「!そ、そうか…。すまなかったなマチルダ……嫌な役目をさせてしまって……」
「ありがとうマチルダくん。…レーンに代わって僕からお礼を言うよ。ごめんね、家族の問題なのに結局君まで巻き込んで…でも、サンと友達になってくれてありがとう」
シーラから謝罪と感謝の言葉を口にされても、マチルダにとっては【自分があの時彼女に…】という罪悪感の方が大きく、そして重く鉛のように胸の中に圧し掛かっていたので素直に受け入れる事ができなかったが……。今はそんな事を考えている場合ではないと首を左右に振る
「サンちゃんは…「ちゃんと途中で、ごめんなさいって出来ていれば良かった」と言っていました…。ですから、彼女を許してあげてください……お願いします……っ!!」
彼女が伝えたかった言葉を何とか紡ぎ代わりに深々と頭を下げると、二人は顔を背けしばらく何も言わずに黙っていたが、やがて少し落ち着いたレーンが口を開き、マチルダの頭にポンッと手が乗せられた
「……悪い、さっきからみっともない姿ばかり見せたな…。もう大丈夫だ。サンの事、最後まで見送ってくれてありがとう…」
「……っ。これが僕の仕事、ですから……。後は王都に連絡すれば葬儀屋に運んでくれます。……僕の仕事仲間ですし、必ず…丁重に弔ってくれます」
「…あぁ。母さんの時に、世話になった事があるからな」
「うん…そうだね。サンもずっとこのままじゃ嫌だもんね」
マチルダの肩に手を置いて労うように軽く叩くと、レーンは隣に立っていたシーラの方に向き直り目配せをして合図を送れば、彼も小さく頷き「そろそろ行こう」と声を掛け、扉に向かって歩き出すのでマチルダもそれに続いていく
家まで送るよ。と言われたがそれは丁重にお断りして玄関で別れると、足早にその場を立ち去った。
深夜ということもあり周囲は月明かりと街灯だけが頼りで薄暗く、静寂に包まれていた。だがその帰宅の最中ずっと近くでカナメがあれやこれやと色々言ってきてはいたが、今はその声すらも只の雑音程度にしか思えなくてずっと無視し続けた
頭の中はずっとサンへの罪悪感だけが支配しており、自宅に帰ると仕事着もそのままに自室へ向かうとベッドに倒れ込む 目を閉じて今日あった出来事を思い出しながら、マチルダはサンへの想いを言葉にする
「好きだったんだ……。本当に、心の底から……愛してた……」
枕を抱き寄せ声を殺しながら涙を流し続けた
「……っ!う、うぅ…っ!サン、ちゃん……ごめん……っ、ごめ……ん……っ!!」
ひたすらに懺悔の言葉を零しながら、自分の浅ましさと愚かさを心底呪い後悔した きっと彼女はこんな事を望んでいた訳じゃない……そう分かっているのに……それでも……。
思考はずっと堂々巡りを繰り返し続けていたが、マチルダはやがて泣き疲れていつの間にか眠ってしまった
『…おい。いつまでそうしているつもりじゃ?貴様にはまだ仕事があるじゃろ』
「………」
カナメが背後から急かすように色々言ってくるが、マチルダは返事を返さず最後にもう一度だけ彼女を抱きしめてからそっと床に寝かせてから、ようやく立ち上がり部屋の外で待機していた二人の元へ歩み寄った。 未だに現実を受け入れられないと言った様子で呆然としている姿に、ようやく止まっていた涙がまた流れそうになったが強く唇を噛んで堪え、なんとか口を開く
「……サンちゃんの魂は、僕が責任持って御霊流しをさせていただきました…」
彼の言葉にハッとしいた様子でレーンが慌てて顔を上げる
「!そ、そうか…。すまなかったなマチルダ……嫌な役目をさせてしまって……」
「ありがとうマチルダくん。…レーンに代わって僕からお礼を言うよ。ごめんね、家族の問題なのに結局君まで巻き込んで…でも、サンと友達になってくれてありがとう」
シーラから謝罪と感謝の言葉を口にされても、マチルダにとっては【自分があの時彼女に…】という罪悪感の方が大きく、そして重く鉛のように胸の中に圧し掛かっていたので素直に受け入れる事ができなかったが……。今はそんな事を考えている場合ではないと首を左右に振る
「サンちゃんは…「ちゃんと途中で、ごめんなさいって出来ていれば良かった」と言っていました…。ですから、彼女を許してあげてください……お願いします……っ!!」
彼女が伝えたかった言葉を何とか紡ぎ代わりに深々と頭を下げると、二人は顔を背けしばらく何も言わずに黙っていたが、やがて少し落ち着いたレーンが口を開き、マチルダの頭にポンッと手が乗せられた
「……悪い、さっきからみっともない姿ばかり見せたな…。もう大丈夫だ。サンの事、最後まで見送ってくれてありがとう…」
「……っ。これが僕の仕事、ですから……。後は王都に連絡すれば葬儀屋に運んでくれます。……僕の仕事仲間ですし、必ず…丁重に弔ってくれます」
「…あぁ。母さんの時に、世話になった事があるからな」
「うん…そうだね。サンもずっとこのままじゃ嫌だもんね」
マチルダの肩に手を置いて労うように軽く叩くと、レーンは隣に立っていたシーラの方に向き直り目配せをして合図を送れば、彼も小さく頷き「そろそろ行こう」と声を掛け、扉に向かって歩き出すのでマチルダもそれに続いていく
家まで送るよ。と言われたがそれは丁重にお断りして玄関で別れると、足早にその場を立ち去った。
深夜ということもあり周囲は月明かりと街灯だけが頼りで薄暗く、静寂に包まれていた。だがその帰宅の最中ずっと近くでカナメがあれやこれやと色々言ってきてはいたが、今はその声すらも只の雑音程度にしか思えなくてずっと無視し続けた
頭の中はずっとサンへの罪悪感だけが支配しており、自宅に帰ると仕事着もそのままに自室へ向かうとベッドに倒れ込む 目を閉じて今日あった出来事を思い出しながら、マチルダはサンへの想いを言葉にする
「好きだったんだ……。本当に、心の底から……愛してた……」
枕を抱き寄せ声を殺しながら涙を流し続けた
「……っ!う、うぅ…っ!サン、ちゃん……ごめん……っ、ごめ……ん……っ!!」
ひたすらに懺悔の言葉を零しながら、自分の浅ましさと愚かさを心底呪い後悔した きっと彼女はこんな事を望んでいた訳じゃない……そう分かっているのに……それでも……。
思考はずっと堂々巡りを繰り返し続けていたが、マチルダはやがて泣き疲れていつの間にか眠ってしまった
