第二章
あからさまに肩を落とし「ハァ…」とため息を吐いてくるマチルダにカナメはふてくされてしまう
『なんじゃそのバケモノが出たときのような声と人を邪険にするような反応は!!失礼な奴じゃのぅ!ワシがずっと傍にいたのを忘れておったのか!?』
(…ご、ごめんなさい…)「少しぐらいは気を遣って欲しかったです」
『貴様…本音と建て前が逆になっておるぞ。 まぁよい…それより、目当ての小娘と二人になれたんじゃ 童の方から【あぷろーち】の一つぐらいしてみせい』
始祖様…基、相手には見えていないといえおばあちゃんが目の前に居る状態で、尚且つ好意を寄せている相手へアプローチする姿を見られるなんて只の公開処刑ではないか。と表情を引きつらせて言葉を濁していると、お茶とお菓子を用意したサンが帰ってきた
「おまたせ。…そう言えばさっき変な声がした気がするんだけど…大丈夫だった?」
「えっ?!あ、あぁうん…気のせいだよ。正座してたから少し足がしびれただけで…」
本当は自分の直ぐ隣にいるおばあちゃんのせいです。なんて言っても相手には見えてないのだから信じて貰えるわけも無いので、少し見苦しい言い訳だがサンは特に気にした様子も無く向かい側に座った
「このお菓子レーン兄さんが作ってくれたの はい、どうぞ」
差し出されたのは皿の上に乗った一口サイズのマフィンだ
「わぁ…おいしそうだね 流石レーンさん」
「ふふふっそうでしょ?じゃあ食べよっか」
早速一つ頂くと、ふわっとした食感と共にバターの風味がほどよく口内に広がり二人で笑みを浮かべあう
「…やっぱレーンさんって料理上手だよね すごいなぁ…。俺なんかよりもっと上手だ」
「ふふふっ。レーン兄さんは…母さんが亡くなってからずっと…私達が……。ううん、私が寂しくないようにって気に掛けてくれていて…何だかある意味でお母さんみたいでしょ?
…でもそのせいかな。最近特に二人が過保護になってきてる気がするんだよね…」
口調こそは軽いのだがその表情はいつになく曇っており、仕草からもどことなく余裕が無いのかムリをしているのが感じられたが…すぐにハッとすると、何事も無かったかのように慌てて取り繕うように笑顔を見せた
「サンちゃん…」
「……あ、ううん。何でも無い。ごめんね。ちょっと愚痴っちゃった それよりもほら、続き食べよ?』
サンは誤魔化そうと必死に話題を逸らすが、マチルダとしてはそれが逆に痛々しく見えてしまい、何とかしたいのだが言葉が見つからず只々もどかしい気持ちのまま、お互いにマフィンを食べているといつの間にか勝手に彼女のベッドに腰掛けているカナメが口を開く
『童二人は小娘を思うから過保護で過干渉になる…小娘もそれを理解しておるのだが、歳を重ねて自我が芽生えてくるとそれらが逆に鉛のように重く感じられる…と言ったところかの』
「………」
カナメの言葉は最もな事であり、だからこそマチルダも何も言えず押し黙るしか無い…。こんな時気の利く言葉の一つでも言ってあげられればと思うが……残念ながら彼にはそれが出来るような経験も知恵も無いのでそのまま無音の時間が続いてしまい、気まずさを感じたのだろうサンも思わず苦笑いで頬を掻いていた
「ちゃんと兄さん達からは大事にされてるのは分かってるんだけどね…。でも私だってもう少し自由にしてみたいって思いもあるの。もう子供じゃ無いんだし……。なーんて、今のは兄さん達にはナイショだよ?」
「………っ」
彼女の言葉を聞いてマチルダは思わず息をのんだ。昨日もだがカナメと話していた内容が脳内で反芻し、やがて一つの結論が出た
(サンちゃんは…自由に生きてみたいんだ…)
それは今まで彼女が心の内に秘めていた想いなのか、それともカナメの言う通り家族が心配だからそう願っているだけなのか……。それは分からないが、少なくとも今の発言から彼女が本心から望んでいるのだと理解した。
そしてそれは……きっと彼女自身にも気づかぬうちに積もりに積もっていた感情なのだろう。 それを証明するかの様に彼女は少しだけ涙目になりながらも、それを必死に堪えるように唇を噛んでいた。
『なんじゃそのバケモノが出たときのような声と人を邪険にするような反応は!!失礼な奴じゃのぅ!ワシがずっと傍にいたのを忘れておったのか!?』
(…ご、ごめんなさい…)「少しぐらいは気を遣って欲しかったです」
『貴様…本音と建て前が逆になっておるぞ。 まぁよい…それより、目当ての小娘と二人になれたんじゃ 童の方から【あぷろーち】の一つぐらいしてみせい』
始祖様…基、相手には見えていないといえおばあちゃんが目の前に居る状態で、尚且つ好意を寄せている相手へアプローチする姿を見られるなんて只の公開処刑ではないか。と表情を引きつらせて言葉を濁していると、お茶とお菓子を用意したサンが帰ってきた
「おまたせ。…そう言えばさっき変な声がした気がするんだけど…大丈夫だった?」
「えっ?!あ、あぁうん…気のせいだよ。正座してたから少し足がしびれただけで…」
本当は自分の直ぐ隣にいるおばあちゃんのせいです。なんて言っても相手には見えてないのだから信じて貰えるわけも無いので、少し見苦しい言い訳だがサンは特に気にした様子も無く向かい側に座った
「このお菓子レーン兄さんが作ってくれたの はい、どうぞ」
差し出されたのは皿の上に乗った一口サイズのマフィンだ
「わぁ…おいしそうだね 流石レーンさん」
「ふふふっそうでしょ?じゃあ食べよっか」
早速一つ頂くと、ふわっとした食感と共にバターの風味がほどよく口内に広がり二人で笑みを浮かべあう
「…やっぱレーンさんって料理上手だよね すごいなぁ…。俺なんかよりもっと上手だ」
「ふふふっ。レーン兄さんは…母さんが亡くなってからずっと…私達が……。ううん、私が寂しくないようにって気に掛けてくれていて…何だかある意味でお母さんみたいでしょ?
…でもそのせいかな。最近特に二人が過保護になってきてる気がするんだよね…」
口調こそは軽いのだがその表情はいつになく曇っており、仕草からもどことなく余裕が無いのかムリをしているのが感じられたが…すぐにハッとすると、何事も無かったかのように慌てて取り繕うように笑顔を見せた
「サンちゃん…」
「……あ、ううん。何でも無い。ごめんね。ちょっと愚痴っちゃった それよりもほら、続き食べよ?』
サンは誤魔化そうと必死に話題を逸らすが、マチルダとしてはそれが逆に痛々しく見えてしまい、何とかしたいのだが言葉が見つからず只々もどかしい気持ちのまま、お互いにマフィンを食べているといつの間にか勝手に彼女のベッドに腰掛けているカナメが口を開く
『童二人は小娘を思うから過保護で過干渉になる…小娘もそれを理解しておるのだが、歳を重ねて自我が芽生えてくるとそれらが逆に鉛のように重く感じられる…と言ったところかの』
「………」
カナメの言葉は最もな事であり、だからこそマチルダも何も言えず押し黙るしか無い…。こんな時気の利く言葉の一つでも言ってあげられればと思うが……残念ながら彼にはそれが出来るような経験も知恵も無いのでそのまま無音の時間が続いてしまい、気まずさを感じたのだろうサンも思わず苦笑いで頬を掻いていた
「ちゃんと兄さん達からは大事にされてるのは分かってるんだけどね…。でも私だってもう少し自由にしてみたいって思いもあるの。もう子供じゃ無いんだし……。なーんて、今のは兄さん達にはナイショだよ?」
「………っ」
彼女の言葉を聞いてマチルダは思わず息をのんだ。昨日もだがカナメと話していた内容が脳内で反芻し、やがて一つの結論が出た
(サンちゃんは…自由に生きてみたいんだ…)
それは今まで彼女が心の内に秘めていた想いなのか、それともカナメの言う通り家族が心配だからそう願っているだけなのか……。それは分からないが、少なくとも今の発言から彼女が本心から望んでいるのだと理解した。
そしてそれは……きっと彼女自身にも気づかぬうちに積もりに積もっていた感情なのだろう。 それを証明するかの様に彼女は少しだけ涙目になりながらも、それを必死に堪えるように唇を噛んでいた。
