第二章
翌日。朝一で王都からの依頼の手紙を受け取ったマチルダは、カナメを連れて指定された家へ訪問した。
マチルダたちの生業は基本的に、王都内で起きたばかりの死亡事故以外は全て一度国王陛下の元へ報告が上がってから、正式にこちらに以来として送られてくるシステムになっている。
故に今回の依頼の場合は突発的では無く正式な話だったので、気持ち的に余裕を残しながらいつもの流れで仕事を行い、そして教会で祈ってから仕上げにミクリアの店で最後の挨拶を行った。
今回の依頼は一件だけだったので、昼過ぎには仕事も終えたので帰り道は人気の無い場所を通ったのでカナメと喋りながら歩くことにした
「…今回はこちらにも協力的なお方ばかりで安心しました」
相手にもよるだが…やはり自分たちの生業は【死神】と揶揄する声も多いのだが、今回は久しぶりにこちらに対してちゃんと理解のある相手だったお陰で心なしか足取りも軽かった
『うむ、そうじゃな 今回の記憶の中に、四季族と交流する風景もあったからのぉ…。ワシら四季族が神として存在していた頃を知っておる世代……か』
カナメは懐かしそうに眼を細めた。かつて自分たちが存在していた場所が失われたとしてもちゃんと記憶として残ってくれていたことが余程嬉しかったのだろう…。
「教会にお祈りも済ませましたし、ミクリアさんのところでもご挨拶は済ませましたから後は……あっ」
何も忘れていないかと一個一個思い返しながら歩いていると、いつも何か視線の先にいつもの花屋が見え始めた。 喋って歩いていた事もありもうそんなに歩いたんだという驚きもあったが、今の時間帯は珍しく三人で店に出ている姿を見つけた
朝はサンだけだったので、いつも通りの流れで花束を作って貰っていたが…どうしても三人で居る姿を見ると、昨日カナメに言われた言葉や自分の考えも脳裏に過ぎってしまうのだが…。とは言え無視して通り過ぎるわけには行かないので、努めて冷静に挨拶へ向かった。
「…こんにちは。朝は素敵な花束をありがとうございました」
「あ、マチルダくんこんにちは~もうお仕事は終わりかい?」
「はい、今から帰るところだったんです」
「そっかおつかれさまだね~。……あ、そうだ。もしマチルダくんが空いてるなら休憩ついでに上がって行きなよ~
たまには店番ぐらい僕らがやるから、サンも休憩しておいで」
突然のシーラからのお誘いにマチルダは驚いて固まってしまったのだが、それはサンの方も同じだったらしくきょとんとして首を傾げていた
「えっと…どうしよっかマチ君」
「あ、えっと…その……。お邪魔じゃ無ければ…」
「ううんそれは平気。じゃあ兄さんたち店番お願いね」
「あぁ任せておけ あ、キッチンに休憩用に作っておいたお菓子があるから持って行って良いぞ」
二人が店番を買って出ると言ってくれたので、サンと共に店の奥にある居住スペースを通り抜けそのまま彼女の部屋へ通して貰った。幼少期から何度も来たことはあるのだが、質素ながらも綺麗に片付けてあり尚且つ落ち着いた雰囲気のある空間なのは今も変わっていなかった
お茶の用意してくるので適当にくつろいでいてと言われたので最初は正座して待機していたが…何というか今日に限って心臓がドキドキと鼓動を打っており、何故か落ち着かない…。
流石に悪いとは思うのだがついつい気になって周囲をぐるっと見回して観察していると、彼女のベッドの上に黒いウサギのぬいぐるみが飾ってあることに気がついた。
(あ、この子って…)
近くで見ると少しくたびれてはいるが大切にされているのは伝わってくる
(確か…サンちゃんが幼い頃にお母さんが亡くなって、それでずっと恋しくて泣いちゃってるときに二人から貰ったって言ってたなぁ…。 名前は確かこの店と同じでシェリルだったかな?)
その時の会話を思い出しながら、次はテーブルの上に目をやると写真立てが飾ってあるのに気がついた。 手に取ってみるとそこにはまだ幼い頃の三人と、母であるレニが一緒にいる写真だった。
「これ…皆との家族写真か…幸せそうだな…。ふふふっ。小さいときのサンちゃんも可愛いなぁ…」
『そんなに羨ましいのなら先祖と子孫として、ワシがその【しゃしん】とやらに写ってやっても構わぬぞ?』
「うわぁっ!!?びっくりした…何で居るんですか…」
サンの部屋に通された辺りから完全に浮かれてカナメの存在など忘れ去っていたので、急に声を掛けられたせいで変な声を上げてしまった…折角シーラが提案して二人きりにしてくれたというのに、台無しである。
マチルダたちの生業は基本的に、王都内で起きたばかりの死亡事故以外は全て一度国王陛下の元へ報告が上がってから、正式にこちらに以来として送られてくるシステムになっている。
故に今回の依頼の場合は突発的では無く正式な話だったので、気持ち的に余裕を残しながらいつもの流れで仕事を行い、そして教会で祈ってから仕上げにミクリアの店で最後の挨拶を行った。
今回の依頼は一件だけだったので、昼過ぎには仕事も終えたので帰り道は人気の無い場所を通ったのでカナメと喋りながら歩くことにした
「…今回はこちらにも協力的なお方ばかりで安心しました」
相手にもよるだが…やはり自分たちの生業は【死神】と揶揄する声も多いのだが、今回は久しぶりにこちらに対してちゃんと理解のある相手だったお陰で心なしか足取りも軽かった
『うむ、そうじゃな 今回の記憶の中に、四季族と交流する風景もあったからのぉ…。ワシら四季族が神として存在していた頃を知っておる世代……か』
カナメは懐かしそうに眼を細めた。かつて自分たちが存在していた場所が失われたとしてもちゃんと記憶として残ってくれていたことが余程嬉しかったのだろう…。
「教会にお祈りも済ませましたし、ミクリアさんのところでもご挨拶は済ませましたから後は……あっ」
何も忘れていないかと一個一個思い返しながら歩いていると、いつも何か視線の先にいつもの花屋が見え始めた。 喋って歩いていた事もありもうそんなに歩いたんだという驚きもあったが、今の時間帯は珍しく三人で店に出ている姿を見つけた
朝はサンだけだったので、いつも通りの流れで花束を作って貰っていたが…どうしても三人で居る姿を見ると、昨日カナメに言われた言葉や自分の考えも脳裏に過ぎってしまうのだが…。とは言え無視して通り過ぎるわけには行かないので、努めて冷静に挨拶へ向かった。
「…こんにちは。朝は素敵な花束をありがとうございました」
「あ、マチルダくんこんにちは~もうお仕事は終わりかい?」
「はい、今から帰るところだったんです」
「そっかおつかれさまだね~。……あ、そうだ。もしマチルダくんが空いてるなら休憩ついでに上がって行きなよ~
たまには店番ぐらい僕らがやるから、サンも休憩しておいで」
突然のシーラからのお誘いにマチルダは驚いて固まってしまったのだが、それはサンの方も同じだったらしくきょとんとして首を傾げていた
「えっと…どうしよっかマチ君」
「あ、えっと…その……。お邪魔じゃ無ければ…」
「ううんそれは平気。じゃあ兄さんたち店番お願いね」
「あぁ任せておけ あ、キッチンに休憩用に作っておいたお菓子があるから持って行って良いぞ」
二人が店番を買って出ると言ってくれたので、サンと共に店の奥にある居住スペースを通り抜けそのまま彼女の部屋へ通して貰った。幼少期から何度も来たことはあるのだが、質素ながらも綺麗に片付けてあり尚且つ落ち着いた雰囲気のある空間なのは今も変わっていなかった
お茶の用意してくるので適当にくつろいでいてと言われたので最初は正座して待機していたが…何というか今日に限って心臓がドキドキと鼓動を打っており、何故か落ち着かない…。
流石に悪いとは思うのだがついつい気になって周囲をぐるっと見回して観察していると、彼女のベッドの上に黒いウサギのぬいぐるみが飾ってあることに気がついた。
(あ、この子って…)
近くで見ると少しくたびれてはいるが大切にされているのは伝わってくる
(確か…サンちゃんが幼い頃にお母さんが亡くなって、それでずっと恋しくて泣いちゃってるときに二人から貰ったって言ってたなぁ…。 名前は確かこの店と同じでシェリルだったかな?)
その時の会話を思い出しながら、次はテーブルの上に目をやると写真立てが飾ってあるのに気がついた。 手に取ってみるとそこにはまだ幼い頃の三人と、母であるレニが一緒にいる写真だった。
「これ…皆との家族写真か…幸せそうだな…。ふふふっ。小さいときのサンちゃんも可愛いなぁ…」
『そんなに羨ましいのなら先祖と子孫として、ワシがその【しゃしん】とやらに写ってやっても構わぬぞ?』
「うわぁっ!!?びっくりした…何で居るんですか…」
サンの部屋に通された辺りから完全に浮かれてカナメの存在など忘れ去っていたので、急に声を掛けられたせいで変な声を上げてしまった…折角シーラが提案して二人きりにしてくれたというのに、台無しである。
