第二章

 勇気を出して外した眼帯から顕になったのは家族とマチルダ以外の人に見せた赤色の瞳。
「…だましていてごめんなさい……。私は、病気でも怪我でもなくって…隔世遺伝で生まれつきのオッドアイなんです。…本当は兄さん達から知らない人の前では外しちゃダメと言われてたんですが、貴方はその…同じ色の目をしていたから…っ!」

彼女のオッドアイに最初は驚いた様子だったが、すぐに口角を上げると感激した様子で彼女の手を取ってぎゅっと握る

「すっげぇぇえっ!!綺麗な色してるんだな〜!こうやってみると宝石みたいだ! いや〜俺も一応同じ色だけどさ、サンちゃんの方が綺麗だよ!!」
彼も親近感を感じたのか、アキは純粋に褒め言葉をたくさん言ってくれるのだが…嬉しくなって興奮した様子で早口になっていた。 サンも予想外の反応だったので呆然としていたが、勇気を出して見せたオッドアイが予想に反して褒められたことが何よりも嬉しくて、真っ赤になりながら返答を返す
「…あ、ありがとうございます…。あの、貴方の瞳もキレイな色ですよ…」
こんなにも喜んで貰えると思わず、彼女も嬉しそうに手を握り返して喜んでいたが…眼帯を外した辺りからの一連の光景を近くで見てしまった二人の雰囲気が変わる。

「…シーラ」
「…うん」

先程までは和やかに喋っていた二人だったが、それだけの言葉を交わすと同時に阿吽の呼吸で走り出してしまう。
「!あ、ま…待ってください…っ」
いきなり何が起こったのか分からないままに少し遅れてマチルダも慌てて後を追った

「サン〜ただいま〜買い物で帰りが遅くなっちゃってごめんね〜」
先にシーラが今帰ったよと呼び掛けて注意を引き、二人が気付いて手を離したと同時にレーンが彼女の肩を持って軽く後ろに引きながら、流れるように二人の間へと割り込む
「ほらサン。外び出たら眼帯を外さない。ってお兄ちゃんとの約束だろう?」
「あ…っうぅ…ごめん、なさい…」
表情こそ優しいものの、有無を言わさない声にサンは困った様子でアキの方へと視線を向けるが、今はシーラが応対をしてしまってるせいで姿が見えない…
「サンちゃんのお兄さん方なんですね。こんにちは〜俺、今度王都のイベントで参加する行商人のアキです」

二人の露骨な敵意には気付いていない様で、アキは笑顔で手を差し出してきたのでシーラも握手を返すが…懐っこい笑顔を浮かべながらも冷静に彼を観察していた

「俺の担当する店は弟と一緒に他国を回って、その中で珍しいモノとかアクセサリーとか色々仕入れてますからね〜!ぜひ皆さんで遊びに来てくださいよ!」
「へぇ〜それは楽しみですね。…あ、たいへんだ忘れてたよ〜折角買って来たのがダメになっちゃう サン、この荷物レーンとキッチンに運んでおいてくれるかな?」
「え?う、うん…」
「あ、申し訳ない!ついつい嬉しくって話し込んじゃって…じゃあ俺はこれで失礼しますね。もしイベント中に遊びに来てくださったらサービスしますので、よろしくお願いしまーす!
サンちゃんもまたねー」
そう言ってアキは近くに停めていた馬車に乗り込むと、手を振って挨拶しながら王都へ向けて走り去っていった。

アキが立ち去った後も二人はまだ警戒心を保ったまま小さく呟く
「…何なんだアイツ…」
「ん〜…何だろうね?……でも、嫌な感じだった」
「…そうだな」
「え?えっと…?どういう事ですか?別に怪しい感じとかはなかったと思いますが…」
混乱するマチルダには一切答えずにシーラは「荷物ありがとうね」とだけ言って受け取ると、二人はそのまま険しい表情のまま店へと戻ってしまったので彼も帰路に着くことにした。
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